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リクルートワークス研究所 |
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六本木ヒルズで5月25日に開催された「ワークスシンポジウム2007」。(下)では第2部分科会のうち3つの分科会 「熟達プロセス――優れたサービスを生み出す13の経験」「店長人材のキャリア――現場責任者の経験と能力は、やがて企業のどこで活きるのか」「非正規労働――顧客接点で身につける基礎力」の概要をレポートする。
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分科会「熟達プロセス――優れたサービスを生み出す13の経験」では、ワークス研究所主任研究員・笠井恵美の調査研究報告と、全日本空輸株式会社客室本部の河本宏子氏による事例発表の後、質疑応答があった。 熟達に役立つ経験を、組織が促進するには 笠井の研究は、小学校教諭、看護師、客室乗務員、保険営業職の4職域計32人へのインタビュー調査により、熟達に役立った経験の共通性を調べ、考察を加えたもの。13の経験が4職域に共通するものとして抽出された。企業の人材育成の観点では、個人の熟達を促す組織のあり方が問題となるが、これに関して13の共通経験のうち「新しい知識を得る」「信頼する熟達者との出会い」「顧客への働きかけと反応」の経験を得る機会が「偶発的にではなく、常に起こる文化・風土があることが重要」と笠井は指摘した。 続いて河本氏が、「ANA客室乗務員の熟達プロセス」を発表した。「教育・訓練」「実践(乗務)」という2つの場での人材育成の概要を説明。また、優れた接客に対して乗務員同士で贈り合う「STAR CARD」の活用など、褒めて認め合う「風土」づくりについても紹介した。 「つなぐ」経験を経て「つなぎなおす」熟達段階へ 会場からは、13の共通経験の一つ「方向性をもって『つなぐ』」に関連して、「『つなぐ』とは関係性の学習と思われるが、熟達のレベルが変わると、学ぶ関係の内容が変わるのではないか」との質問があった。笠井は「熟達レベルが上がるにつれ、関係性そのものを変える力ができてくる」と答えた。「つなぐ」ことにとどまらず、自分自身の行動や提供するサービスを変えて、「今までつながっていたのとは異なる方向に『つなぎなおす』ことができるようになる」と説明した。河本氏も自らの体験から「乗務ではいつも違うメンバーでチームを組むが、熟達した客室乗務員は、チームの最大のパフォーマンスを考え、それに貢献するように自分の行動を変えている」と補足した。 店長経験者5つのキャリアパス 分科会「店長人材のキャリア――現場責任者の経験と能力は、やがて企業のどこで活きるのか」では、主任研究員・石原直子の研究発表に続き、『チェーンストアの人材開発』などの著書のある國學院大学経済学部准教授の本田一成氏を交えたディスカッションが行われた。 石原の研究は「増える雇用店長(オーナー店長ではなく、雇用されて働く店長)たちはキャリア展望を持てるのか?」という問題意識を出発点に、雇用店長の職務を分析したうえで、店長経験者の進み得るキャリアパスを明らかにすることを試みたものだ。ライン上位職、上級店長職、本部スタッフ、関連他事業への転出、のれん分けによる独立という5つのキャリアパスの可能性が提示されたが、それぞれの企業が5つの選択肢すべてを用意できているわけではないという。一つのブランドのみチェーン展開する企業は「他事業への転出」の選択肢を用意できないなど、事業環境や戦略、それに伴う人材ニーズによってキャリアパスは規定されており、雇用店長にとって現実的な選択肢は限られることが示された。 本田氏はチェーンストア理論研究の立場から、「店の数を爆発的に増やしていくときに適用されるのがチェーンストア理論であり、そこで求められる理想の店長像は、店舗数が増えない成熟期を迎えた企業に必要な店長像とは当然異なる」と言い、GMS(総合スーパー)についても言及した。GMSにおける店長職の位置づけは比較的確立しているのに対し、今回の研究対象である新興の飲食チェーンや専門小売りチェーンは、成長期から成熟期への過渡期にある企業が多く、企業自身が求める店長像を把握しきれていないことが指摘された。 異業種転出で生きる店長経験者の能力 会場からは「5つのキャリアパスよりも、多忙なうえにキャリア展望が持てず、疲弊して離職する第6のケースが多いのではないか」と、現状認識について厳しい質問があった。石原は、特に35歳以下では異業種への転職が珍しくないことを認めたうえで、キャリアチェンジ先の職種・業種を例示した。対人関係が苦にならない、店舗の予算など数字が読めるなどの特性から、営業職に転じて活躍する例や、複数の店員を擁して店舗のオペレーションを遂行した経験を、学習塾の教室長、介護施設の施設長などの職に生かす例だ。業界としては人材の流出となるが、「店長経験によって何が身に付くのか、それは次の職でどのように生かせるのか」を考える手掛かりとなる事例といえるだろう。 「顧客接点アルバイト」顧客の本当の役割 分科会「非正規労働――顧客接点で身につける基礎力」は、客員研究員・見舘好隆の報告に、研究対象である日本マクドナルドの日比谷勉氏がコメントを加える形で進められた。 同社では、行動のきっかけとなる「イベント」と、イベントによって発生した行動を持続させる環境や仕組みである「行動持続要因」とが組み合わされることで、クルー(アルバイト店員)の基礎力(社会で働くうえで必要とされる能力)の向上が実現していることが明らかにされた。 具体的な「イベント」「行動持続要因」については、顧客接点アルバイトであるにもかかわらず、顧客との関係はイベントとしては全く重要でなく、行動持続要因としてもほかの要因に比べて重要性が低いという調査結果が示された。最も基礎力を成長させたイベントは「同僚」であり、行動持続要因は「協働の必然と多様な人々との協働」「さわやかな(クルー同士の)コミュニケーションの徹底」などの重要性が高かった。「顧客の視線」という行動持続要因について、さらに考察が加えられた。マクドナルドは2000年以降、メイドフォーユーというシステム(作り置きではなく、注文に応じて商品を作る)を導入し、店内レイアウトをオープンキッチン方式に移行した。日比谷氏は「見られる仕事に変わった」、と表現し、レイアウト変更前と変更後の店内風景の写真を示しながら、顧客の視線が厨房の奥まで届くようになったことの影響の大きさを語った。これを受け、見舘は「顧客の視線が、『同化』や『出るくいは打たれる』につながりがちなピア・プレッシャー(同僚からの圧力、影響)をポジティブに転換している」と指摘。「同様に」「差のないように」という形で圧力が働くと、努力をしてはいけないことになり、基礎力は向上しない。だが同社ではここに顧客の視線が働くことで、圧力の方向が「もっと素早く」「もっと上手に」へと転化し、基礎力を向上させる行動持続要因になると見舘は解説した。 ほどほどの忙しさが促す成長 会場からは「店舗の規模やクルーの職種は、基礎力を向上させる過程に影響しないのか」という質問があった。まず見舘は店舗規模による差異は見受けられなかったと回答。「勤務シフト操作による程よい刺激と伸びしろ」という行動持続要因に見られるように、店舗の規模にかかわらず「ほどほどの忙しさ」にコントロールされているためではないかと説明した。 職種に関しては日比谷氏が、「現状では、製造と販売という職種の境界線がないので、影響はないだろう」と言い、「厨房のクルーが出来上がったハンバーガーをお客さまに手渡すこともある。サッカーに例えれば、ポジションは一応決まっているが、ディフェンダーが前に出て行ってゴールを決めることもある。クルーはそのように理解している」と説明した。関連して見舘が、「居酒屋ではホールと厨房が完全に分かれていたが、マクドナルドは違う」というクルーの声を紹介した。 また、外食産業に携わる聴衆から「顧客が基礎力向上にあまり寄与していないというのは、納得がいかない」と疑問の声が上がった。これに対して日比谷氏は「お客さまに鍛えられることもないとはいえないが、顧客接点よりも仲間との接点は圧倒的に回数が多いため、仲間から鍛えられる要素の方が強く出るのではないか」と答えた。 最後に見舘は、「基礎力向上には、イベントだけでなく行動持続要因が必要だが、教育機関などでは、きっかけだけを与えあとは『ほったらかし』ということが多いように思う。例えば大学であっせんする自由参加のインターンシップは、学生の基礎力向上にどれだけ役に立っているのだろうか」と疑問を呈して分科会を締めくくった。 (文 根村かやの) |
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| (2007年6月4日掲載) |
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