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| Works創刊10周年記念シンポレポート | |
リクルートワークス研究所 |
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『Works』誌創刊10周年を記念するシンポジウムが、東京・六本木ヒルズで4月22日に開催されました。第一部の記念講演とパネルディスカッション、そして第二部の9つの分科会。計11本の記事でWeb上に再現された、シンポジウムの模様をご覧ください。(レポートは順次アップします)
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『Works』誌で4年前にスタートした好評連載「成功の本質 ハイ・パフォーマンスを生む現場を科学する」。この分科会はそのライブ版として、監修者の野中郁次郎一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授と執筆者であるジャーナリストの勝見明氏を招き、取材を通じて得られた知見を中心に、暗黙知をめぐる人事・経営の課題と暗黙知活用の方法論などが披露された。
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| 文 宮内 健 |
分科会の冒頭、まず担当編集者の荻野進介が連載と今回の分科会の概要を説明した。「『成功の本質』は誰もが知っているヒット商品の開発物語にスポットをあて、そこで得られた材料に野中氏が独自のコメントをするという構成で、20の事例を取材してきた。2004年5月には『イノベーションの本質』というタイトルで日経BP社から書籍化され、これまでに2万部が売れた。さらに韓国版が発売されたほか、中国版、台湾版の翻訳も進行中」と反響の広がりを報告。さらに「新たなイノベーションを生み出すには新たな知が必要で、その知を生み出すのは優れた企業、現場、あるいはイノベーター個人が持つ仕事の『型』や『癖(くせ)』。それこそが成功の本質であるというメッセージを込めた連載記事だと熱く語った。 本当に大事なのは「これをやりたい!」という個人の思い 続いて野中氏が暗黙知と知識創造をテーマに講演した。「米国を中心に発達した経営学は、自然科学のように精緻で客観的な学問にならなければいけないという発想が強く、分析が主体になっている。しかし、本当に大事なことは『自分はこれをやりたい!』という個人の思いであり、主観だ」と強調した。 もちろん客観的な視点を取り入れ、科学的に分析することも重要で、主体的な知と客観的な知識の間を往還することこそが知識創造のプロセスであり、イノベーションの創出につながるのだが、これまで主観的な知は排除されがちだったと指摘。主観の復権がイノベーションの創出にとって重要だと訴えた。また、取材を通じて出会った開発者たちは皆「この仕事に取り組みたい」という強い思いと現実察知能力などの豊かな暗黙知を持ち、妥協を排し徹底的に自己主張をすると同時に、相手の主張も受け入れながら、少しでも高みに昇ろうとする弁証法的な思考と対話をしていた点を共通項として挙げた。 主観と主観をぶつけ合い、限りなくリアリティーに迫る そのうえで「われわれの体験している現実とは、自らの体を中心として見た世界。イノベーションに大切な気づきはそこで起こり、客観からは決して起こらない。しかし、主観だけではバイアスがかかる危険性があるから、もう一人の自分が自分自身を見るメタ認知が必要だが、これは非常に厳しい世界。であれば、皆で対話をする場をつくり、お互いの主観と主観をぶつけ合い、限りなくリアリティーに迫っていくことが大切になる」と、ホンダの「ワイガヤ」を例に挙げて、知を生み出す場と人間同士の相互作用の重要性を説明するとともに、こうした営みは従来の経営学が提示してきた概念とは根本的に違うのではないかと持論を展開した。 続いて、勝見氏がこれまで連載に取り上げた20のケースから、えりすぐりの事例を紹介した。最初に取り上げた事例は三鷹光器。中小の光学機器メーカーながら、スペースシャトル搭載カメラを製作するなど高度な技術力を誇る同社が、いかにして暗黙知を若手に継承しているかに触れ、採用試験の際には昼食で煮魚を食べさせ、身のほぐし方を見て器用さを確かめたり、途中で失敗すると分かっていても、高額な機器の制作をあえて最後まで任せ切り、なぜ失敗したのかを考えさせたりする、同社のユニークな取り組みの概要を説明した。 強い思いと行動がメーカーを動かした さらにKDDIのauデザイン携帯を取り上げ、携帯端末に初めてデザインの概念を持ち込み、同時に機能性を犠牲にすることなくヒット商品を誕生させた裏側に、ひとりのデザインディレクターの存在があったことを紹介。「通例、デザイナーは理想に到達する前に設計の都合などの現実と折り合いをつけがちだが、消費者が本当に欲しい理想の商品を求め、このディレクターは、デザイン部門とは水と油の関係である設計部門にたびたび出向き、自分のやりたいことを語り、どうすれば実現できるのかを尋ね、相手が休日出勤すれば自らも一緒に出社するという熱心さで、最後には『切り札の技術』を出してもらった」とその仕事ぶりを説明し、「塗装でニシキゴイの鮮やかな赤を出すのに苦闘して真っ赤な夢を見、現物の感覚を伝えるために全国を飛び回る毎日から過労で病院に運ばれたほどの強い思いと行動が部材メーカーや塗装メーカーをも動かし、auのブランドイメージを一新しただけでなく、KDDI全体の活性化をもたらした」と話した。野中氏は、このデザインディレクターが人を動かすためには自らの内面を高める必要があると、寸暇を惜しんで空手を習っていたことに言及し、「一歩踏み込めば相手に死をもたらすギリギリの限界、そのバランス感覚を、毎日汗をかきながら彼は身につけていた。暗黙知と形式知のように、世界にはいつも二面性があり、そのバランスで成立している。一連の取材の中で感じたのは、このバランス感覚こそが高質な暗黙知ではないかということ。われわれが見ていると、仕事ができる人は皆すぐれたバランス感覚を持っていて、『これ以上はいけない』というギリギリの箇所がわかる」と解説した。それは単なる妥協ではなく、妥協点を超えながら矛盾を両立させる行為であり、「そんなバランス感覚がイノベーターに共通する資質としてあるのではないか」と語った。 概念で語れないときはメタファーの活用が重要 質疑応答で、「それぞれの暗黙知を共有するときに、共通の言語体系を人工的に持ち込むのは可能か?」という会場からの質問に対し、野中氏は「暗黙知を形式知化する際、きちんとした概念で語れないときはメタファーを使うことが重要。メタファーを使えるリーダーがいると、組織全体の知の創造力のポテンシャルが高まる」と答えた。 勝見氏は、サントリーの飲料「DAKARA」の開発を例に、「この商品を開発するとき、メンバーは現場に出向き、宅配便のドライバーと一緒に行動したり、コンビニのレジに立ったりして、市場にあるモヤモヤとした暗黙知を体に乗り移らせた。次に、その暗黙知をみんなで共有するときは『マザー(母)』『看護師』『学校の保健室』といったメタファーを使って一度形式知化して共有。さらに、それをもとに次の段階のコンセプトをつくるという形で開発を進めていった」と説明した。 最後に野中氏が「バランス感覚は日常のありふれた会話の中で相手の意図を察知、言語化し、判断するといった主観・客観の往復運動の中で磨かれるものだから、どんな人にでもこうした知性は備わっている」と前置きしたうえで、「トヨタウェイ、ホンダウェイなどいろいろなウェイが存在する。これらには、こうした知の作法が組み込まれ、型として会社で共有している。これこそが、究極の競争優位性を生むのではないか」と締めくくった。 |
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| (2005年5月23日掲載) |
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