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 Works創刊10周年記念シンポレポート
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
Works創刊10周年記念シンポレポート プロフェッショナルのキャリアを導く「予期せぬ経験」
『Works』誌創刊10周年を記念するシンポジウムが、東京・六本木ヒルズで4月22日に開催されました。第一部の記念講演とパネルディスカッション、そして第二部の9つの分科会。計11本の記事でWeb上に再現された、シンポジウムの模様をご覧ください。(レポートは順次アップします)
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分科会(6)では、ワークス研究所の笠井恵美主任研究員が、プロ意識に関する研究成果を報告した。プロ意識は、自己概念、他者認知、専門技能の3つの意識から成り立ち、この3つの意識をバランスよく高める必要があるという。さらに笠井は、プロフェッショナルへのインタビューから、プロフェッショナルの成長には「予期せぬ経験」が有効だという発見があったことを報告。後半は会場の声も交え、プロフェッショナルのキャリア形成に個人はどう取り組むべきか、また組織がそのような人々の成長の機会を創出する可能性はあるのか、議論が交わされた。
文 内田美代子
まずワークス研究所主任研究員笠井恵美によるプロ意識に関する研究成果の報告から、本分科会は始められた。笠井は「プロ意識とは何か、プロ意識が高まるプロセスを理解したい」という思いから研究を始め、「プロ意識の構造モデル(図1)」を設計したと語る。

プロ意識は自己概念、他者認知、専門技能の意識からなる
笠井恵美
ワークス研究所主任研究員このモデルによると、プロ意識(プロフェッショナルであるという意識、プロフェッショナルでありたいという意識)は、自己概念、他者認知、専門技能の3つの意識から成り立つ。自己概念とは「プロフェッショナルでありたい」という意識、他者認知は自分が他の人からどのように見られているかという自覚、専門技能は自分の専門技能についての自覚をさす。また「プロ意識には5つの段階があり、第1段階が仮決め、第2段階が見習い、第3段階が本決め、第4段階が開花、第5段階が無心にあたる」とし、「段階が上がるほどプロフェッショナル化し、第3段階以降が自他共に認めるプロフェッショナルの領域といえる(図2)」と説明した。

ワークス研究所が実施したワーキングパーソン調査の結果を用いてこのモデルの妥当性を検証したところ、「自己概念、他者認知、専門技能の3つの要素はお互いに高まり合う関係にあり、また3つの要素は自尊心とも共に高まり合う」という結果が得られた。
この検証結果から「プロ意識の構造モデルはプロ意識の研究の基本フレームとして使用できると判断」し、次にプロフェッショナルたちに自身の成長経験について個別インタビューを実施した結果を紹介。個別インタビューでは、モデルの有効性が確認でき、同時に「意識の段階を上げるのに、予期せぬ経験が有効という発見があった」という。

「予期せぬ経験」がプロフェッショナルのキャリアを築く
予期せぬ経験とは、予期していなかった認識を得る経験である。笠井は、「プロフェッショナルとしてのキャリアを歩む人々は、仕事経験のなかで、変化→内省→規範という自覚のサイクルを回している。そのサイクルの結果、仕事を始める前には予期していなかった新たな認識を、仕事を経験した後に得ている。この新たな認識とは、プロフェッショナルとしての歩みを深めるうえで不可欠な内的規範、自律的な規範である。従って、このような自律的な規範を得ることにつながる予期せぬ経験の積み重ねが、プロフェッショナルの意識を深め、プロフェッショナルのキャリアを築いていく」と述べ、何人かのインタビュー事例をもとに分析結果を紹介した。

予期せぬ経験を生み出すことの重要性
続けて、「個人と組織の双方が、予期せぬ経験につながるような経験の機会を生み出すことがプロフェショナルのキャリアにとって重要」とし、個人が予期せぬ経験を自らにひきおこすためには、「成功するかどうかわからないけれど自らの内的欲求に従う行動や、仕事の意味を深く問うこと、専門技能の範囲を学際的な領域に広めていく行動などが有効である」と考察。
また、組織が予期せぬ経験となる機会を作り出すためには、思いがけない人事異動やプロ認定制度、他流試合といった異なる価値観に触れる機会、直接の取引先だけではない広い顧客の存在を知り、触れる機会、「目からうろこ」となるような専門技能の水準の高みに触れる機会などが有効であると述べた。

おわりに、プロフェッショナルのキャリアを歩むことは、個人にとって、「成長実感がもて、長く職業人生を送ることができる道であり、それに付随して、広く社会的な人間関係が築け、生き方に誇りがもてるあり方である」とし、それが、プロフェッショナルのキャリアやプロフェッショナリズムの魅力であると述べ、報告を締めくくった。

パネリストによる5段階・自己紹介
佐々木良氏
NECシステム建設 ファシリティ&サービス事業部長分科会の後半では、NECシステム建設 ファシリティ&サービス事業部長 佐々木良氏とワークス研究所所長 大久保幸夫をパネリストに迎え、ディスカッションを行った。それに先立ち、佐々木氏と大久保がプロ意識の5段階モデルになぞらえて自己紹介をし、佐々木氏は「入社以来技術者の道を歩んできたが、途中経営企画部門へ異動を命じられた。当初は戸惑ったが、現在は事業再建が私の専門であり、ミッションだと認識している。今思うと、経営企画部門への異動が私の本決めになったと思う」と話した。
次に大久保は、「私は第1段階と第2段階を行ったり来たりしていた。38歳のときにワークス研究所を設立したことが本決めであった。そして本決めのとき、ほかの道に進む可能性を自ら断ったことが重要だったと認識している」と語った。

プロ育成の方針の確立が先決の課題
その後は、会場に質問、感想を求めながら意見が交わされた。「技術を専門にしようとしている人を経営の側に移らせるような場合、企業はどのように動機付けをすればいいのか」という質問が寄せられた。大久保は、「まず現状の根本的な問題として、異なる専門分野に異動させるとき、その前提には企業がどの分野でプロフェッショナルを育成していくのか長期的な方針があるべきだが、実際にはそうした方針をもっていない恐れがある」と指摘した。そして「組織は個人との対話を通じ、個人の意識を受け止めながら、企業としてプロ育成の方針を立てていく必要がある」と語った。

続いて佐々木氏が、大久保の発言を引き継いで、プロ育成の方針について自社(NECシステム建設)の状況を紹介し、「事業部長として事業部の中・長期的なニーズを把握しており、そのニーズに基づき、OJTとOFF-JTを通じて必要な人材の育成に取り組み始めている」と述べた。また、個人の動機付けの観点から、個人の意識の受け止め方についても言及し、「会社の中では、特に個人のプロ意識を受け止める仕組みが必要だと認識し、現在はメンターの役割を担う人材を配置している」と説明した。加えて、「社員の心に気づき、プロフェッショナルになりたいという意識と対話していくことは、事業部長の責任」との考えを示した。

「いかだ下り」で基礎力をつけてから「山登り」へ
企業人から大学教員に転身し、学生の指導に当たっている教授から「フリーターでも経験を積めばプロフェッショナルのような力がつくのではと考える学生もいる。また学生に対して夢を持てといいながら、夢だけでは仕事はできず、覚悟を持てといわざるを得ない。この状況で学生にどうメッセージを発すればいいのか」という声が寄せられた。

大久保幸夫
ワークス研究所所長この問いに対し、大学でキャリア論の講義も担当する大久保は「学生時代に、この道でいこうと本決めすることは無理だということを忘れてはいけない。そもそも、本決めとなるような領域はそんなに簡単に早く決められるものではない。それぞれが仕事経験を積み重ねてはじめて決まっていくものである。何がしたいのかと軽々しく尋ねるべきではない」と述べた。そして「いかだ下り」と「山登り」に例え、「まずは激流をいかだで下ること。必死で岩をよけているうちに、判断力や基礎力もつく。それから自分が登る山を見つけたら、専門性を高める山登りに切り替えるべきだ。基礎力なくして、専門性は身に付かない」とアドバイスを送った。

また佐々木氏は、現在NECシステム建設で導入準備中のプロフェッショナル制度(図3)を紹介し、「企業はこうした育成の仕組みを用意している。企業に入るという壁を越えることを含め、会社に入ることは意味があるのではないか」と語った。そして専門分野と夢の関係を井戸掘りに例えて、「水が出ないからと途中で井戸を掘るのをやめて、違う場所で掘り、また水が出ないからと違う場所を掘ることを繰り返せば、水が出たという成功体験がいつまでも持てないことになる。すぐに水が出なくても、あきらめることなく水が出るまで掘り続ける。そうして初めて達成感が得られたときに夢を持つことができる」と助言した。

人事の役割は2.5段階の組織を3段階にすること
最後に大久保が「プロ意識の5段階モデルの中で、多くの企業は2.5段階にあるのではないか。2.5段階の企業とは、専門技能や他者認知は3段階に達していても、自己概念は2段階の企業である。2.5段階の組織を3段階以上にするために人事部として何ができるかが今問われている」と、会場にメッセージを送って締めくくった。
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(2005年5月31日掲載)

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