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 Works創刊10周年記念シンポレポート
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リクルートワークス研究所
Works創刊10周年記念シンポレポート 特別講演 ジェフリー・フェファー・スタンフォード大学経営大学院教授
21世紀における競争――人事の役割とは
『Works』誌創刊10周年を記念するシンポジウムが、東京・六本木ヒルズで4月22日に開催されました。第一部の記念講演とパネルディスカッション、そして第二部の9つの分科会。計11本の記事でWeb上に再現された、シンポジウムの模様をご覧ください。(レポートは順次アップします)
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組織行動論を研究する米国スタンフォード大学経営大学院教授、ジェフリー・フェファー氏の特別講演「21世紀における競争――人事の役割とは」で、記念シンポジウムは幕を開けた。米国を中心に、この10年の企業経営と人事を取り巻く環境の変化を分析し、その課題を指摘したうえで、企業と人事部門が果たすべき役割を語った。「人的資本の重要性を再認識する」「雇用に関するあらゆる不安を取り除く」「事実や実証的根拠に基づいたマネジメントを実践する」などのポイントが示され、来場者は熱心に聞き入っていた。
文 向江 睦
誤った人材マネジメントでリーディング・カンパニーも失速
ジェフリー・フェファー氏
スタンフォード大学経営大学院教授フェファー氏はまず、米国企業の事例を挙げながら過去10年の重要なトレンドを語った。この間、ボーイング、ゼネラル・モーターズ、ヒューレット・パッカードなどの米国のリーディング・カンパニーは失速した。ボーイングは労働組合との関係が悪化するなか、EADS(エアバス)に年間受注数で追い抜かれた。激しく変化するIT環境にあって、ソフトウエア大手のマイクロソフトも成長を鈍化させた。背景には、「稚拙な人材マネジメントが離職率を増大させ、不安を助長した」「金融市場を重視するあまり、顧客を軽視することになった」「業績改善、成長の救いを安易に合併に求めた」などの問題があったと解説。また、そのほかに「海外移転を含むアウトソーシングの増加」や「労働者の組合加入率の低下」を重要なトレンドに挙げた。特に、労働組合の弱体化は、所得格差の拡大、職場の安全性低下、雇用の不安定性増加といった負の現象をもたらしたと解説。そして、「残念ながら、企業はこうした失敗からあまり多くを学んでいない。他社の成功例やイデオロギーなどではなく、事実に基づいた実証的マネジメントの実行に関心を持っている企業は少ない」と現状を憂えた。

アメリカに追従することが最善策ではない
フェファー氏はまた、日本を含む多くの先進国が、これまで人材マネジメント・システムについて米国の事例に倣ってきたことに触れ、「先進諸国にはアメリカが成功しているという誤解がある」と話した。現実は必ずしも米国がほかの先進国に対して優位を保っているとは限らないことをデータで示した。世界経済フォーラム2004競争ランキングでは、フィンランドが1位、米国は2位であったことを紹介。高い賃金と労働組合加入率を維持するフィンランドが、米国を上回っていることを強調した。また、ドイツを除いたEUの1人当たりGDP伸び率は2.1%で、米国と同一であることも指摘。ハーバード大ビジネススクール教授のマイケル・ポーター氏の競争優位に関する研究によると、OECD(経済協力開発機構)17カ国中、米国は6位で、日本、フィンランド、スイス、デンマーク、スウェーデンを下回った。これらのデータを踏まえ「米国のやり方をそのまま取り入れてはいけない」と強調。さらに、雇用に関する恐怖を拡散し、職場の就業意欲やモラルの低下を招いた一部の米国型の稚拙な人材マネジメントが、最大の問題だと語った。

人的資本の重要性を強く意識するべきだ
ジェフリー・フェファー氏
スタンフォード大学経営大学院教授続いて企業の現状と今後を分析した。この10年の流れを引き継いで、企業はさまざまな問題に直面していると語った。高齢化が進み労働力が減少していくこと、米国では「労働者の約4分の1が単に給料をもらうためだけに出社している」との調査結果が示すように労働者の仕事に対する姿勢が低下していること、グローバル競争が進行していることなどだ。

グローバル化は資本の移動だけでなく、人材の流動化も高め、テクノロジーの進化は知識・情報の移転を高速化させた。そのため、企業が競争優位性を維持することが困難になっているという。こうした状況にあって、「企業は人的資本(タレント)の重要性を強く意識するべきだ」と強調した。企業風土や、人的資本の保有するスキルやモチベーションは、技術や物的資本などよりも模倣されにくく、企業の競争優位を維持させやすいと説明。また、人材マネジメントと業績の関係についても触れ、働きやすい企業は業績の伸び率も高いとのデータを示した。

そのうえで、企業にとって「最高の人材をひきつけ、会社にとどめることは必須条件」と話した。米国はこれまで世界中から労働力を受け入れ、競争上の成功に結び付けてきたと述べた。米国では、科学・技術分野の博士号取得者のうち27%が外国出身となっている。日本でも1992年から99年の間に、熟練労働者に対するビザ発給が75%増加したと紹介し、移民やダイバーシティに関する政策が、今後の日本にとっても重要かつ興味深いポイントになるとの見方を示した。

企業が実践すべき7つの具体策
ジェフリー・フェファー氏
スタンフォード大学経営大学院教授さらにフェファー氏は、企業に最高の人材をひきつけるためにはどうするべきか話した。「人的資本というのは、単純にIQの高い人を意味するものではない。本当のスキルや資質は企業風土によってはぐくまれるもの。従って、有名大学の卒業者を集めるだけでは人的資本の質は高まらない。そこで企業が実践すべきことは、従業員のコミットメントを形成するための人材マネジメントだ」という。具体的には、1)情報を共有し、皆がその情報を使えるように訓練する、2)社員の才能とスキルを活用するために、従業員に意思決定させる。すなわち、従業員にその才能に見合った仕事をさせる、3)従業員に敬意と尊厳を持って接する、4)チームやグループワークを通して、仕事の楽しさを実感させる、5)仕事と仕事以外の領域を統合する、6)職業訓練や能力開発など継続的に人材に投資する、景気が悪化しても人材投資は削らずに維持する、7)業績に応じて適切な臨時報酬を付与するという7点を挙げた。

仕事と仕事以外の領域についてはさらに詳しく述べた。合理的な組織運営には、客観性と社会的距離、そして業務上の諸条件に基づいた意思決定が求められるため、仕事とそれ以外の領域の区別は必要だとしながらも、「現代社会では、仕事をしている時間が長くなり、携帯電話などの登場によって仕事とプライベートの区別がつきにくい」と指摘。「企業は労働者にとって単に働く場というだけではなく、帰属意識を持つことのできるコミュニティーとして存在するべきだ。米国で成功している企業は、従業員の人格と家族をも包含する企業風土を持っている」と話した。

データと事実に基づいたマネジメントを実践
最後に、人事部門の役割として「人事は適切な人材を採用し、妥当な給与を支払うこと以上の責任を負っている」といい、データや事実に基づいたマネジメントを実践するべきだと強調した。その戦略的役割には、従業員の「メンタル・モデル」や「マインド・セット」を発見し、彼らが自らそれを理解し、変化させるための手助けをすることも含まれると紹介。また、知っているだけでなく、実行すべきこととして、1)競合との比較から抜け出し、勇気を持って新たなことを試みる、2)システム思考の理解と実践、3)さまざまな不安と恐れを取り除く、4)行動を重視する企業風土、5)協力し信頼し合う企業風土を挙げた。中でも、この10年に企業に蔓延した雇用に関するあらゆる不安や恐れを取り除くことは、極めて重要だと話した。
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(2005年5月26日掲載)

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