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  Home > SPECIAL THEME > プロフェッショナルを活かす企業(第5回) 2004年12月
 日本ユニシス
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
プロフェッショナルを活かす企業(第5回)
日本ユニシス 模索から明らかになった「個人の認識と自覚」の重要性
〜人材育成プロジェクト部長 八田泰秀氏
ワークス研究所は2004年度、企業で働くプロフェッショナルに研究の焦点を当てている。なぜ今、企業で働くプロフェッショナルに注目が集まるのか。企業はどんな仕組みによって彼らを育て、評価し、処遇するべきなのか。また彼らがその力を十二分に発揮できる企業組織とはどうあるべきなのか。専門職、プロフェッショナルの処遇に最前線で取り組む人事部門責任者と、大久保所長が対談を繰り広げる。

第5回は日本ユニシス株式会社 人材育成プロジェクト部長 八田泰秀氏にご登場いただく。同社では、1990年代後半に職能資格制度の運用に行き詰まりが見られるようになったことから、新たな制度の導入と運用の方法を模索してきた。しかし、課題は制度の仕組みだけに由来するのではないという。課題の根はどこにあるのかについて聞いた。
→プロフェッショナル人材処遇への取り組みについてはこちら
文、構成 内田美代子、福島さやか
露呈した職能資格制度の負の側面
大久保 これまでのプロフェッショナル人材への取り組みの状況を教えていただけますか。
八田氏
八田 他社でも同じ状況かもしれませんが、90年代後半に入ったころ、弊社でも職能資格制度の運用に行き詰まりが見えるようになりました。それまでの右肩上がりの成長が止まったため、制度の運用に必要な総人件費が高コスト化し、固定費が会社の経営を圧迫するようになりました。そこで経歴給と能力給で構成された職能資格制度を抜本的に見直し、「個人が担っている職責の重要度と達成した成果」という2つの軸で評価する方式へと大きく方針を変えることになりました。

さらに最近の状況として、国内のIT業界の劇的な構造変化が挙げられます。こうした認識のもと、従来の制度の微調整にとどまらず、人事関連施策の改革に着手しているところです。
*職能資格制度:職務遂行能力により決まる資格等級(職能資格等級)によって従業員を格付けし、その資格等級を基準として処遇や配置をしていく制度
価値が目減りしていく時代
大久保 IT業界の構造変化は、どのような影響を与えたのでしょうか。
八田 IT業界の構造が変化するとは、単に技術革新や新たなビジネスモデルの誕生といったことにとどまらず、お客様が求めるものが大きく変化しているということです。そのため、私たちが提供する価値そのものも大きく変化し、例えば昨年は100の価値があったサービスが、今年は80の価値しかないということが起きているのです。
総合的な期待値を評価する
大久保 人材を評価する方法は、人を見る能力主義、職務を見る職務主義、成果を見る成果主義の3つに大きく分けられます。評価の方法については、どうお考えでしょうか。
八田 市場やお客様がわれわれに求めるものが刻一刻と変化し続ける以上、提供するサービスもそれに合わせて変化させていく必要があります。このような状態では、過去に定めた職務定義や人材モデル定義に基づく厳格な評価や処遇は、現状と合わない部分が生じてきて、評価を受ける社員の納得感を得ることが難しくなります。社員の納得を得られるよう公平かつ公正な評価をして処遇をするには、一度定めた詳細定義であっても、変化に合わせて修正を繰り返していくことが必要となりますが、現実にこの方法を実行することはほとんど不可能といわざるを得ません。

そのため、能力と職務に基づく処遇については一定の幅を持たせ、その人への期待値を加味して運用していくことが効果的ではないかと考えています。一方、成果軸については、数値化してより明確に判定していくことが、社員の納得性やモチベーションを高めるうえで重要になると思います。また、野球のホームランのような単発的な成果については、加点主義で明確に処遇していく必要があるでしょう。
大久保 ホームランのような単発的な成果を加点主義で評価することは、日本人の心理に合っているように思います。というのも、ホームランはその試合の成果であって、次の試合ではかんがみられるものではありません。いわば試合ごとに清算されてしまうのです。仕事の場でも、毎日自分が評価され清算されてしまうストレスに、人は耐えられないのではないでしょうか。
八田氏×大久保所長
八田 そこに職能資格制度の崩壊後に、安易に導入された成果主義の限界があったといえます。もっと日本人の精神的な部分や、チームでの仕事を重視するといった行動様式を考慮した評価の方法があったと考えています。人を見ることについても、われわれは従来から暗黙のうちに複数の視点や中長期的な視点で評価してきたのではなかったでしょうか。

こうしたことから「人への期待値を信じて処遇していく部分と、成果を明確に処遇していく部分」をバランス良く併用していくことがこれからは必要だと考えています。社員が安心して仕事に向えるように、期待値としての固定報酬部分を設けると同時に、短期的な成果を加点主義的に積むことをバランス良く実施することは、一つの有効策となるのではないでしょうか。
ロールモデルが目指すべき姿を示す
大久保 成果主義においては、どんな成果を挙げることが会社にとって望ましいのかを示すことが求められました。これからプロフェッショナル人材を育成していくには、どんなことが必要になるのでしょうか。
八田 人材モデル別に詳細定義を設けることによって、プロ人材を育成できるとは考えていません。むしろ今後会社が目指すビジネスモデルを遂行できる人材を「具体的ロールモデル」として明確に示すことの方が大事だと考えています。「この人材モデルは例えば社内のAさんやBさんのような人」というように、目指すべき背中を具体的に示すのです。そのうえでプロフェッショナル人材に対する処遇や、育成のためのプログラムを整備する必要があります。
ITで顧客価値を実現するとは
大久保 それでは、企業として今後のビジネスモデルではどんなことを目指していくのでしょうか。
八田 ITを用いて顧客の価値を創造する、価値創造企業となることを目指しています。言い換えると「経営の効率化と新たなビジネス機会の創出のためにITをどう利用すべきか」を提言し、その提案を実行できる会社になるということです。
大久保 従来のビジネスモデルから変えたことは何ですか。
八田 弊社を取り巻くビジネス環境について少しお話しします。われわれにとって新たなビジネスチャンスには2つのケースがあります。1つ目はお客様がITや新しいテクノロジー利用の必要性を感じたときで、2つ目はお客様がビジネス上の課題やチャンスを認識したときです。1つ目のチャンスにはITコンサル的な対応行動が必要で、ITアーキテクトが担当します。一方2つ目のチャンスにはビジネスコンサル的な対応行動が必要で、ビジネスアーキテクトが担当します。

これまで弊社ではITアーキテクト領域に力を入れて顧客の信頼を獲得してきました。しかしビジネスアーキテクト領域は、ITアーキテクト領域と比べて非常に弱く、この領域の人材育成の方針も不明確であったと思います。そこで、ビジネスコンサル・ビジネスアーキテクト領域の強化と人材の育成のために、コンサルティングファームから優秀な人材を数十人規模で招聘しています。またその為に人事制度を複線化し、プロフェッショナル社員制度を導入しました。
※プロフェッショナル社員制度の概要はこちら
ロールモデルにならなかった傭兵部隊
大久保 外部から採用したプロフェッショナル社員をこれから目指すべきロールモデルであると示したということでしょうか。
八田 いくつかある人材モデルのうち、ビジネスコンサル人材については、その通りです。会社としては、ビジネスコンサル領域に進出していくため、その分野のプロである人材を外部から採用し、今後目指すべきロールモデルとして提示しようとしました。プロ人材育成のためにOFF-JTでのコンサルタント養成プログラムも用意しました。そして既存の社員に対し、コンサルタント養成プログラムを受講したうえでビジネスコンサルとしてプロフェッショナル社員のレベルまで成長してもらいたいと考えたのです。しかし現在このやり方は見直しを余儀なくされたと判断しています。
※OJT、OFF-JTの概略はこちら
大久保 目指すべき人材を社内に実際に置いて、そうした人材になるための育成プログラムも用意する。なぜそれがうまくいかなかったのでしょうか。
八田 一言でいうと「分かること」と「動けること」の間にある距離が大きな原因でした。あるべき姿が示されても、感覚的に近づける、または近づいていこうと思えない限り、具体的な行動に移すことは難しいでしょう。従来のビジネスモデルが「お客様の意思をいかに忠実に実現するか」をコアバリューにしていましたので、「お客様の意思決定の相談役的な対応行動」までにはかなり距離があったのです。

そこでいきなり高い山を示すだけではなく、まず自分の立っている位置から、少し背伸びをしたらどうなるのかを見せるような運用に修正しました。
OCT(On the Chance Training)で身近な人間が変わる
大久保 背伸びをしたらどうなるかを見せるためにどんな修正をしたのですか。
八田 OCT(On the Chance Training)と呼ぶプログラムを導入しました。OCTではOFF-JTで学んだことを基に、一定期間その仕事を実際に担当させます。元の職場に戻りOJTを受けるだけでは、OFF-JTで学んだことを実践できる機会はなかなか得られません。そこで挑戦意欲がある人には、OFF-JTで学んだことをOCTで実践するチャンスを与えるのです。例えばコンサルタント育成プログラムを受講した後に、希望者をビジネスコンサル部隊に一時的に配置し、実務経験をしてもらっています。
大久保 OCTは全員が受講できるのですか。
八田 全員にこのプログラムを実施することは難しいと思っています。しかし、先ほど話に出たロールモデルのように、何人かが育成プログラムを受け、自分で選択した仕事を実際に行い、結果を出せるという実例を見せていくことに効果があると考えています。例えば全社員のうち何%かでもこのプログラムに参加し、気付きを得ることができれば、変化した人の様子を見ている周りの人にも気付きが与えられることになります。実は大きな流れを生む起爆剤は、強制的に与えられるものではなく、社員個人が自ら気付いて、何か動きを変えたときに大きく動きだすものだと考えています。
大久保 OCTの対象者の年齢に関して何か制限などは定めていますか。
八田 年齢上の制限は設けていませんが、入社して10年前後の30代後半が中心の年齢層となっています。柔軟性が高い人の方が、可能性を秘めているように感じます。
キャリアの自立を支援する
大久保 われわれはプロフェッショナル人材としてキャリア上の自立をするためには、いろいろな経験を経た上で「自分はこの分野で専門性を極めていこう」と道を選択し、決断することが必要と考えています。こうした選択についてはどうお考えになりますか。
八田氏
八田 人材育成プログラムとしても、個人が専門分野を選択できるように支援していかなければなりません。2004年4月から、求める人材モデルごとに人材育成プログラムを策定しました。入社後社員はまず全社共通のプログラム(ビジネスベーシックプログラム)を受講します。そしてさまざまな業務を経験した後で、自ら進むべき人材モデルのキャリアを意識し、必要な育成プログラムを選択して受講します。一定レベルに達した後で、個人のキャリアを意識させるような教育によって各人の進むべき道を選択し、それぞれの専門分野へと特化していけるようにするものです。
※人材育成プログラムの概要はこちら

この人材育成プログラムを進めていけば、今後5年程で実際に進むべき道を選択して、プロとして道を究める人が出てくるのではないかと予測しています。処遇も連動させていきますので、自分のキャリアは自分で考えつくっていかなくてはいけない、自ら学ばなくてはいけないという認識を多くの社員が持つようになると考えています。
人の育成は会社の責務
八田 また新人研修からキャリアの形成を意識していますので、新入社員の採用基準も変えています。従来のようにゼネラリスト的な「柔軟性や協調性があり明るい」という基準以上に、学生なりにアイデンティティを持っているか、しっかりと物事を考えられるか、といった観点で採用に取り組み始めています。

また説明会でも「これからのIT業界は大変な時代になる。安定を求めているなら入社しない方がいい」というメッセージを打ち出しています。それでも挑戦しようという人材に残ってもらい、学生なりのアイデンティティや考える力があるかどうかで審査し採用しようとしています。また採用後の研修でも考える力をより強く養成していくことに力を入れていきます。採用、育成、登用をそれぞればらばらに考えるのではなく一つのラインで、個人のため、組織のため、人が育成されてこそ会社であるという認識で動いています。
不可欠な社員の気付きと主体性
大久保 プロフェッショナル人材に関して、ほかにはどんな課題がありますか。
八田 プロフェッショナル人材を育成するための制度が理論上は整っていながら、制度の確立と運用まで至っていないことが大きな課題です。社員の側からすれば、急に「プロになれ、成果を示せ」と求められ、どうしていいか分からない状態だと思います。やはり運用まで根付くためには、日々現場の上長や先輩などから「プロになったらどんな価値を会社に与えていくのか」「プロとして会社に与える価値を身に付けなければならない」と言われながら仕事をして、個人の意識が変わることが必要でしょう。そして言葉だけでなく、上司がそうした行動を自ら示すことが大事です。制度を整えることは易しいですが、社員の認識を変えるには、どうしても時間がかかります。
大久保 時間をかける以外に、個人の認識を変えていく方法はあるのでしょうか。
八田 どんな制度をつくったとしても、仕事の場で社員の中に定着しなければ、制度の結果は出ないのです。制度は分かった、何ができていないのかも分かった、でもどう実施するのかという方法論の解は、まだ見つけられていません。人材育成プロジェクトでも、教育プログラムの策定と運用にとどまらず、各年代層の社員が自らのキャリアを考えたうえで、自ら能力開発に取り組んでいくような環境をつくることを目指し活動していくつもりです。
プロフィール
八田泰秀(はった・やすひで)
日本ユニシス株式会社 人材育成プロジェクト部長
1984年立命館大学経済学部卒業。同年日本ユニバック株式会社(現在の日本ユニシス株式会社)入社。10年以上にわたり営業を担当した後、労働組合の中央執行委員長を務め、職能資格制度を撤廃する新人事制度の導入に関わる。その後広報部企画室長、経営企画部担当部長を経て現在に至る。

大久保幸夫(おおくぼ・ゆきお)
株式会社リクルート ワークス研究所所長
1983年一橋大学経済学部卒業。同年株式会社リクルート入社。
人材総合サービス事業部企画室長、地域活性事業部長などを経て、1999年、雇用・労働問題に関する研究機関「ワークス研究所」を立ち上げ所長に就任。
専門は、労働政策、キャリア論、人材マネジメント。
詳細プロフィールはこちら
◇ プロを活かす企業 目次
第1回 トヨタ自動車株式会社
第2回 NECソフト株式会社
第3回 アサヒビール株式会社
第4回 日本テレコム株式会社
第5回 日本ユニシス株式会社
第6回 日本IBM株式会社
(2004年12月17日掲載)

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