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  Home > SPECIAL THEME > プロフェッショナルを活かす企業(第2回) 2004年11月
 NECソフト
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
プロフェッショナルを活かす企業(第2回)
NECソフト ITスキルスタンダードとプロ処遇の関係
〜人事部シニアマネージャー 福嶋義弘氏
ワークス研究所は2004年度、企業の中で働くプロフェッショナルに研究の焦点を当てている。なぜ今、企業の中で働くプロフェッショナルに注目が集まるのか。企業はどんな仕組みによって彼らを育て、評価し、処遇するべきなのか。また彼らがその力を十二分に発揮できる企業組織とはどうあるべきなのか。専門職、プロフェッショナルの処遇に最前線で取り組む人事部門責任者と、大久保所長が対談を繰り広げる。

第2回はNECソフト株式会社人事部人事シニアマネージャーの福嶋義弘氏にご登場いただく。NECソフトは今年 4月から、経済産業省が創設したITスキルスタンダードに基づく専門職人事制度をスタートさせた。その狙いは何か。SI企業におけるプロフェッショナル処遇のポイントについて、議論が交わされた。
→プロフェッショナル人材処遇への取り組みについてはこちら
文、構成:五嶋正風
大久保 最初の質問ですが、ITスキルスタンダード(以下ITSS)は、プロフェッショナル人材の処遇に活用できるものなのでしょうか。
福嶋氏福嶋 活用できるものと期待しています。まずIT業界全体の横断的ものさしとして、ITSSで個人スキルや能力の判断が可能である点。そしてITSSレベルと社内資格を連携させていることで、ITSSは、個人が先のキャリアを考えるときの道しるべになる点。それからシステム構築業務などを入札にかける際の応札条件としてITSSで証明される人材のスキルや能力基準が利用される可能性がある点。この3つの点から我々はITSSに期待しています。実は今、ITSSを人事制度に導入しているのは日本でも数社しかなく、認定制度という形を採っているところが大半です。ITSS自体には気になる点もあるのですが、今までにはなかったものであり、推進することが重要だと思っています。
みんなが使えば共通言語になる
大久保 実はこのスキルスタンダードを策定する国のプロジェクトに、私は最初の部分参加していました。IT分野がスキルスタンダードの策定は最もやりやすかったため、この分野が先行することになりました。ですが日本ではなかなかもうまく普及しない。その理由はとても簡単で、同時にみんなが使い始めないということです。制度がよいか悪いかはあまり関係がなくて、みんなが使えば使われる過程で改善がなされ、共通言語になっていく。ところが使う会社が少ないと、どんないいものでも機能しない。スキルスタンダードにはそういう特徴がありますね。

みんなが使うということでいえば、エンジニアの人たちがITSSのレベルを高めるような能力開発をすれば、市場価値が上がるというような仕組みができるかどうかでしょう。
福嶋 ITSSの認知度が上がらない理由には、その点が関係しているかもしれないですね。
大久保 プロフェッショナルに対する人事施策がなぜうまくいかないのか。一般論でいうと、私はいくつか理由があると思っています。まず本当の高度専門職としてのプロフェッショナルと、そこそこのレベルの専任職を、一緒くたに処遇しているのではないか。つまり、なんでもプロと呼んでしまう状態ですね。

次に高度専門職としてのプロフェッショナルと、「自立して、全ての人がプロになれ」という場合のプロを、混同して言葉を使っていること。それから、やっぱり組織長が上位であり、組織長ではない人たちは、プロフェッショナルであってもその命令に従うのだという価値観が根強いこと。最後にプロフェッショナルの人事制度をつくるときに、プロフェッショナルが制度設計に携わっていないこと。いくつかの企業で共通して見受けられる印象があるのですが、一般論としてどうお考えですか?
取りづらい人事とラインのコミュニケーション
福嶋 確かにそういう部分はあると思います。最後の「プロフェッショナルが人事制度設計に携わっていない」について言えば、人事とラインのコミュニケーションはなかなか取りづらい部分もあります。そうすると、人事だけで制度をつくって、それを押し付けるような形になることはあり得るでしょう。

今回の当社の人事制度改革に関しては、各部門から毎月のようにそれぞれのキーマンを呼び、人事の案をたたいてもらってきました。
大久保 実際に制度を設計する際、レベルの高い技術者たちを呼んで声を聞いたということですが、人事制度の問題について、トッププロの人たちからはどんな声が聞かれたのですか?
福嶋氏×大久保所長福嶋 一つは管理職と専門職、それに職場により業務規模や範囲が異なる。そのためそれぞれの処遇に格差があるという点。それから、いろいろな専門職の処遇がなるべく一本化された制度にできないかという声もあるわけですね。人事としてはある程度わかりやすい制度にしようとするのですが、完全に一本化するというのは結構難しいですね。

もう1つ重要なのは、業績の評価です。ラインのマネジャークラスが評価するのですが、正等に評価されたかに対して、評価者と被評価者には多少ギャップがあるのです。

双方向のマネジメントや、ITSSの人事制度について説明する評価者の訓練を、マネジャー以上約800人に展開しています。制度を実行するときに誰が評価するのか。その評価者のパフォーマンスをいかに上げるかというのが、今、大きな課題になっています。
技術がわからない人の評価で納得感下がる
大久保 いったいだれがプロの人たちのレベルや価値評価をするかは、やはり1つの大きなポイントです。プロの中身の技術を分かっていない人が評価をすると、仮に正しい評価であっても、納得感はやや下がりますよね。そのあたりを制度としてどう担保するのか、非常に大きなテーマですね。
福嶋 そこは非常に難しい。評価者がみな同じレベルなら、それは同じ基準でやれますが、違うわけですから。レベルをできるだけ近くするということで評価者教育を実施しています。また根拠の信頼性の高いITSSを、評価基準の統一された教科書として使うようにしています。
スキルが先行してしまうIT業界の専門職
大久保 IT業界の場合、スキルがまず引っ張る形になっていて、プロ意識がついてこないケースが多いのではないでしょうか。意識がついてこないことが、あるレベル以上に行こうとすることに、自ら歯止めをかけてしまう。私たちはプロ意識というときに、自分がその仕事をやっていくということ、最初は人事異動で配属されたのであっても、改めて自分が進む道を選びなおす。「この道でやっていく」と腹を決め、場合によってはほかの退路を絶って、初めてプロの入り口に立つのではないか。プロ意識については、こんな定義を研究の中ではしています。プロ意識が先行する世界もあれば、プロとしてのスキルが先行する世界もある。典型的にIT技術者の世界というのはスキルが大体先に行く世界で、どうやってそこにプロ意識をつけ加えていけるかが、テーマになるような気がします。
福嶋氏福嶋 この業界でスキルが先行するのは当然ですし、どうしても目に見えるものはスキルだと思います。スキルさえ持てれば、プロフェッショナルとしてある程度のレベルに行けるように見ますよね。やはりプロ意識の醸成というのは、どうしても遅れがちになります。そう考えると、今弊社では社員の4割ぐらいは「自分はプロジェクトマネジャーだ」という意識で仕事をしていると思うのですが、その中でプロ意識を持ち、高度なプロフェッショナルだと自らいい切れる人は、いったいどのくらいいるでしょうか。
これまではプロ意識の醸成より短期的に成果や数字を挙げることが求められてきました。今後は成果や数字を達成することだけではなく、それぞれがプロ意識を持つように育成していくことが大事だと考えています。プロになるため必要なのはスキルだけではないでしょうから。プロには、スキル・資格・経験・人脈・プロ意識をすべて幅広く持っていることが必要ではないでしょうか。そしてそれらを幅広く持つようになるためには、ある程度の時間が必要でしょう。逡巡したり、遠回りしたり、他の仕事を経験するというようにね。
大久保 例えばSEの場合、一般的にはある程度SEを続けていったら、1つのコースはプロジェクトマネジャーへ進みますよね。もう1つのコースは、技術屋というよりは管理職の道に歩いていく。さらにもう1つの道はITコンサルに行く道がありますね。またあまり大きな声ではいわれませんが、専任職的なSE、テクニシャンとしてやっていくという道があると思います。そういったキャリアの積み方は、どのように考えておられるのでしょうか。
部長以上で明確な複線型制度
福嶋 管理職と専門職という複線型の人事制度という観点では、今年の制度改革の前は、課長職以上で管理職と専門職に分けていました。今年導入したITSSに基づいた新人事制度では、組織をフラットなものと考えることと、課長職であっても部下のいない人も増えていることを踏まえて、部長職から組織長への道を分けることにしました。それ以外はITSSをベースとした専門職という位置づけをはっきりさせたのです(図表参照)。ただし処遇は専門職コースであっても、組織長コースでいうところの事業部長(ITSSレベル7)まであり、役員になれる可能性もあります。
→新人事制度の概要についてはこちら

これまでは課長職から管理職と専門職に分けていたのですが、一度道が分かれても、その先で管理職と専門職を行き来する人がいるなど、2つの区別が明確でなかった。新制度では管理職と専門職の職階の間に、はっきりと壁をつくりました。例えば管理職の職階で昇格するためには役員の面接や役員に対するプレゼンテーションがあります。また専門職側は今後審査委員会を設け、本当にその人の専門性が高いかどうかがチェックされ、昇格が認められかどうか検討していきます。このように審査を厳しくすることで、管理職と専門職の職階間を自由に行き来できないようにしました。
会社の価値観と一致しないプロ独自の価値観
大久保 別の切り口で聞きたいのですが、社員が高度専門職的なプロになることを促していったとします。そして社員が社外でも認められる専門性を持ち、成果をあげるようになってくると、その人独自の価値観も芽生えてきます。すると、必ずしも常に会社の価値観その人の価値観が一致するわけではないため、組織としては扱いにくい社員になっていきます。扱いにくくはあるが、せっかくプロとして育てた人材であり、会社の利益にも貢献してもらいたい。そんな人たちはどのように処遇するのでしょうか。
福嶋 そういう人材をいかに活用していくかが今後の我々の重要課題になると思います。例えばある面では、報酬体系を一般社員と変えてより成果を重視したものにする、など。お金だけの問題ではないと思いますが、そのような人材が活用できる社内組織である必要性は十分認識しています。
大久保 スキルレベルが高くて、外に出る力も十分にある。だけどNECソフトが好きだから残っているという人たちもいますよね。そういう人たちとはどういい関係を築いていくのでしょうか。
福嶋 そこはもう各部門の対応が大切になってきますね。ある部門が合わないなら、社内公募制度で別の部門に移ってもらうであるとか。ざっくばらんな話ですが、「部門としてもこの社員は必要だが、うまく活用できない。かといって外へ出してしまうのももったいない。どこかよい引き受け部門はないか」というような形です。「ここでは自分の能力を伸ばせない」と思うなら、社内公募制度いう道はあります。
プロフェッショナルのメンターはだれがする?
大久保 次の話題に移りたいと思います。これは私どもの研究の視点なのですが、プロフェッショナルのメンターは、プロフェッショナルが務めるのが最もよいと考えています。自分の専門性の面から尊敬できる人が、最も望ましいメンターではないかという仮説です。この観点からプロフェッショナルとしてトップに登りつめた人たちへのインタビューを多数実施しています。
福嶋 インタビュー結果はどうですか? 仮説どおりでしょうか。
大久保 ある技術領域、別に技術者に限らず、ホワイトカラーの職種で、プロフェッショナルへと登りつめた人は、やはりその技術領域で尊敬できる人がメンターをやっているケースが多数見受けられます。

「プロのメンターはプロが務める」を制度化するには、まずある領域のプロフェッショナルとしてトップに立った人は、全社のトップ人材だという位置づけにします。そしてこの尊敬すべきトッププロが、その領域のトッププロを目指す人たちへ、所属部門にかかわらず、どんな仕事で経験を積むのか、どんな勉強をするべきかアドバイスできるようにしてはどうでしょうか。
「プロがプロのメンターを」への反論
福嶋 そういわれると、そういう方は当社にも1人いました。今はもう定年になられましたが、エグゼクティブエキスパートとして、後輩にアドバイスしていた方です。ただ、「プロのメンターはプロが務める」という点には反論もあります。ある領域のトッププロは、発想がその領域から抜け出し切れないのではないでしょうか。ある世界で行き詰ったなら、ひょっとしたらほかの世界もあるのではないかという発想です。ですからプロのメンターは必ずしも、同じ領域のプロじゃなくてもいいのではないかという考え方を持っています。

技術の分野は多岐にわたり、今脚光を浴びている分野もあれば、廃れ始めている分野もある。トッププロに相談しづらい分野もあるかもしれないですね。
大久保 リクルートは一度辞めた人をまた再雇用するのが好きな会社です。2年間外へ出て帰って来ると、社内に2年間いた人より大抵能力が高いですね。外の飯を食ってきた方が視界も広がり、知識も身につくようです。
福嶋 現状、当社では再雇用したという実績はほとんどないですが、辞めた人の再雇用はもっと活発にしていくべきだと思います。もちろんそのためには、「外にいる間にどれぐらい成長したか」をしっかり見なければいけませんが。
プロフィール
福嶋義弘(ふくしま・よしひろ)
NECソフト株式会社人事部人事シニアマネージャー
1978年日本電気ソフトウェア(現NECソフト株式会社)に入社。
基本ソフトウェアの開発を経験し、そのあと人材育成業務を担当、現職に至る。
現在は、JISA(社団法人情報サービス産業協会)の人材育成委員、経済産業省「ITSS評価ガイド策定委員会」委員やITSSユーザ協会教育研修WG主査を行っている。

大久保幸夫(おおくぼ・ゆきお)
株式会社リクルート ワークス研究所所長
1983年一橋大学経済学部卒業。同年株式会社リクルート入社。
人材総合サービス事業部企画室長、地域活性事業部長などを経て、1999年、雇用・労働問題に関する研究機関「ワークス研究所」を立ち上げ所長に就任。
詳細プロフィールはこちら
◇ プロを活かす企業 目次
第1回 トヨタ自動車株式会社
第2回 NECソフト株式会社
第3回 アサヒビール株式会社
第4回 日本テレコム株式会社
第5回 日本ユニシス株式会社
第6回 日本IBM株式会社
(2004年11月12日掲載)

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