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 急成長トヨタファイナンスの人事制度改革
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リクルートワークス研究所
多様な働き方を認めながら、筋肉質でスピード感ある組織を - 知る人ぞ知るAAA企業が挑む 人材ポートフォリオ再構築 - トヨタファイナンス 総務人事部担当部長 足立録司氏
トヨタファイナンスを始めとするトヨタファイナンシャルサービスグループ(TFS)は、親会社であるトヨタ自動車の卓越した財務基盤を裏づけに、スタンダード&プアーズ社から最高ランクの「AAA」に格付けされている、希有な金融サービス企業グループだ。2001年にクレジットカード分野に進出したトヨタファイナンスは、カスタマーサービスセンターを設置し、個人顧客との接点を新たに設けるとともに、魅力あるカードサービス提供のため他社との提携も推し進めている。このような業容拡大期にあっても、筋肉質でスピード感を持った企業であり続けるため、同社は2002年春、人事制度の改革と人材ポートフォリオの再構築を実施した。今回は、トヨタファイナンスの総務人事部担当部長、足立録司氏に人事制度改革のポイントと、同社の人材ポートフォリオ戦略を聞いた。急成長期に必要とされる新たな労働力を、どのような就業形態で確保するのか、また正社員が担うべき業務とは何かを思案中の企業に、ぜひ参考にしてほしい。
インタビュー ワークス研究所 石原直子/五嶋正風
※「人材ポートフォリオ」
企業や組織にとって必要な人材をポートフォリオで整理し、それぞれに最適な業務の割り振りや処遇を実施する考え方。ワークス研究所では、雇用・非雇用、正社員・非正社員の枠組みにとらわれず、広く外部の労働力(知識供給者)までを視野に入れたうえで「人材ポートフォリオ」を再整理すべく、研究を進めている。
キャリアの選択と向上を契約社員にも求める
―― まずトヨタファイナンスの業務内容や設立の背景を教えてください。

トヨタファイナンスは、トヨタ自動車株式会社の財務部月賦課が1988年に分離・独立してできた企業です。トヨタ自動車系列の販売店における自動車ローンを主軸として事業を拡大してきましたが、2001年4月に「TOYOTA TS3 CARD(トヨタティーエスキュービックカード)」の発行を開始し、クレジットカード分野に参入しました。会員数は2002年11月現在で340万人を突破しています。

トヨタファイナンス 総務人事部担当部長 足立録司氏 写真
―― 今回の人事制度改革の狙いは何でしょうか。
当社は急激に規模が大きくなった企業です。1988年の設立当初、従業員数は約70人で、全員がトヨタ自動車からの出向者でした。その後の業容拡大に伴い、従業員数も増加しましたが、それでもカードビジネスに参入するまでは、正社員は300人から400人程度、派遣社員を入れても500人くらいの規模でした。
それが、カードビジネスに参入してからは急激に人員が増加し、現在は正社員が1100人以上、派遣社員も同数程度と、全体で約2300人もの規模に拡大したのです。当然のことながら、社員の大半、特に旧人事制度で総合職にあたる社員の約8割は中途入社で、さまざまなバックグラウンドを持った人材の集団となっています。このような当社独自の状況を勘案し、新しい人事制度を構築しました。
――具体的にはどのようなことでしょうか。
人事ビジョンを「多様な人材がそれぞれの能力を発揮して、いきいきと働く企業を目指す」としました。これは、会社での働き方とキャリアを自ら選択し、向上することを、正社員のみならず契約社員などにも実行してほしいという当社の考えを表しています。
例えば、いったん結婚・出産などにより退職した社員も、適切な時期がきたらもう一度会社に戻って本人と会社のニーズに合った働き方で頑張ってほしいと考えています。会社は、努力する社員をサポートし、長期安定的に労働条件を向上させる努力をします。
正社員については、総合職とエリア職に分けていた職群を廃止したうえで、大くくりで分かりやすい職能資格制を導入しました。それぞれの期待役割は、下から
業務職:オペレーションスタッフ
専門職:自立した専門スタッフで上司のサポートを受けながら独力で仕事ができる人材
上級専門職:自らのコアな業務領域を確立した人材で、会社の中核を担うコアスタッフ
基幹職:高度な専門性とリーダーシップを持つプロフェッショナル人材
という位置付けです。
また、新たに勤務地コース制を導入しました。勤務地コースは国内外への異動を伴うナショナルコースと、原則的に異動のないエリアコースですが、職務内容や職能資格制度は共通です。
一方でこれまで、派遣社員がほとんどを占めていた顧客応対の業務や定型的な業務についてはキャリアパートナー社員という契約社員に置き換えることにしました。
派遣社員を契約社員に置き換える理由
―― なぜ、派遣社員が対応してきた業務をキャリアパートナー社員という自社雇用の契約社員に置き換えようとお考えなのですか?

トヨタファイナンス 総務人事部担当部長 足立録司氏 写真
これまでは、業務が急拡大する中、正社員の雇用を最優先にしてきたこともあり、契約社員やパート社員を自ら雇用する余裕がありませんでした。そのため定型的な業務については主に派遣社員を活用してきましたが、カードビジネスに参入し、カスタマーセンターを名古屋と東京に開設した今、お客様対応に従事する派遣社員は1000人を超えています。派遣社員をこれだけ抱えることによって、いくつかの新たな課題が見えてきたのです。
ひとつには高コストです。派遣社員の時給は、派遣会社に支払う分を上乗せすると、相当な金額になります。それから長期的に勤める人とそうでない人が入り交じる派遣社員では、当社へのロイヤリティ醸成やノウハウの蓄積といった面で、どうしてもこちらの思うようには進まない現実もありました。
そこで、これからは派遣社員だけに頼るのではなく、比較的長期間の勤務を見込める契約社員を、自ら雇用することとし、同時にその人たちの処遇や評価の仕組みをキャリアパートナー社員制度としてスタートさせたのです。
キャリアパートナー社員には、フルタイム型とパートタイム型を用意し、個人の働き方に対するニーズの多様化に対応します。業務内容は、当面はカスタマーセンターでの顧客対応からオペレーションまでですが、将来的には本部業務の一部も担わせたいと考えています。
―― 昨年10月に第1回の募集を行い、採用も決定したそうですが、実際の選考にあたってはどのような能力や資質を重視されたのでしょうか。
ひとつは基本的なビジネススキルを持っていることです。別にこの業界に限らず、通販業界などでもいいのですが、個人のお客様を相手にした電話応対の業務経験があるのは大切です。
また、仕事はチームで取り組むものですから、やはり人間性や協調性といった部分に注目しました。選考過程では、1次選考は人事サイドが主導しましたが、2次選考は、実際に一緒に仕事をするカスタマーサービスセンターの課長と、そこでスーパーバイザーを務める業務職社員の2人による面接を実施しました。面接者が、一緒に仕事をしていける人材かどうかという視点から判断するためです。
当社独自のシステムの使い方などはマニュアルや研修期間を通じて入社後に覚える機会を提供しますし、トヨタらしいものの考え方などについては、働いていくうちに身に付けられると考えています。
リーンで筋肉質な組織を目指す
―― 将来的にはどのような人材ポートフォリオで組織を構成しようと考えているのでしょうか。
正社員は極力、コア業務の担当に絞り込むというのが目指す姿です。キーワードはリーンな組織、筋肉質な会社ということです。現状でも正社員の数はやや多過ぎると認識しています。
将来的に、正社員が担う業務は本当のコア部分に絞り、定型業務については、契約社員化、アウトソーシング化、システム化のいずれかを考えていきます。今後は、定型業務のうちのどれを外注化し、システム化し、また契約社員に移行するかを決めるため「業務の棚卸」を順次進めたいと考えています。

トヨタファイナンス 総務人事部担当部長 足立録司氏 写真
平たくいうと従来の総合職が担っていた部分を正社員が担い、従来のエリア職が担っていた部分の多くは、契約社員が担当するということです。
コア領域を担う人材とは?
―― 厳密には業務のどこまでがコアでどこからがそうでないのかを知るのはなかなか難しいところです。
そうですね。例えば同じクレジットカードの審査・回収でも、他のクレジット会社と当社では恐らくやり方が異なっていて、当社独自のノウハウが存在します。そういったノウハウを生み出し、蓄積していく部分や「カイゼン」していくことが必要な業務はコアといえると考えています。例えば私たちのような人事部門の業務でも、単に毎年採用をしていますというだけでは定型業務にすぎません。人事制度の変更を考え、そのプロモーションをすることなどが必要であり、それでこそコア業務といえると考えます。「業務の棚卸」では、そのあたりの見極めをしたいですね。
―― 正社員はコア業務の担い手であると定義した場合、求められるのはどのような人材でしょうか。
例えば同じ営業でも、街の飲食店に出掛けていって「カード加盟店になりませんか? 料率は○○%です」ともちかける加盟店開拓などの比較的定型的な営業であれば、契約社員に任せるのも可能かもしれませんが、複雑な利害関係を調整する必要のある、アライアンス先の開拓営業などは正社員が担うべきコア業務になるでしょう。
特にカードビジネスでは、今後、現時点でトヨタ車ユーザーではない方に、どうやってカードを持っていただくかを考える必要があります。すると、いかに魅力のある提携カードを開発するかに知恵を絞らなければなりません。既にスタートしたものに、ガソリンスタンドのJOMOとの提携カードがありますが、このような商品を今後も次々に開発していかなければなりません。その意味で、アライアンス相手をうまく発想し、提携カードの交渉をもちかけ、これをまとめるというような能力を持つ人材が、今後中核を担う人材として必要になってくるでしょう。
補佐的業務からオペレーション業務のリーダーへ
―― 従来エリア職ということで、補佐的・定型的業務を担ってきた社員を、今回の人事制度改革で従来の総合職と同じ土俵にのせたわけですが、この旧エリア職の方々に今後期待する役割は何ですか。

トヨタファイナンス 総務人事部担当部長 足立録司氏 写真
エリア職の多くは、まず業務職に移行しましたが、業務職の期待役割にはオペレーション業務のリーダーとして、後輩社員や契約社員を取りまとめることも含まれています。単に与えられた仕事を自らがこなすだけでなく、そういった経験を積むことにより、次のステップに進むために必要なリーダーシップを身に付けてほしいと考えています。
また業務職を部下に抱える管理職にも意識変革を求めています。業務職の人たちを、従来のエリア職のような補佐的業務、定型的業務の担い手の延長として扱うのではなく、次のステップへの成長を促すような、少し高めの目標と新しい業務を与えてほしいですね。
―― 多様性を生かすというのは、具体的にどういうことなのか教えてください。
まず正社員の人事制度では、勤務地を限定したいというニーズに応えるためにナショナルコースとエリアコースを選択できるようにしました。これにより、勤務地を限定したい個人にも、昇進の機会を提供できるようになりました。
また、基幹職には2通りのパターンがあると考えています。ひとつはどの部署にも対応可能な、マネジメントに専念する人材の領域で、もうひとつは得意分野で高度専門家となる人材の領域です。
一方で、正社員でなくとも高度な専門性を持った人材であれば、契約社員として、比較的自由な働き方を認める制度を考案中です。プロフェッショナル基幹職制度ともいうべきもので、これにより、正社員と契約社員の双方に、特定分野のプロフェッショナル人材を、相応の待遇で活用できる仕組みを取り入れることができるようになると考えています。
勤務地や勤務時間を限定したい、あるいは仕事の内容を限定したいなどといった個人のニーズに応えながらも、無駄のない、スピード感のある組織をつくっていきたいと考えています。
プロフィール 足立 録司(あだち・ろくじ)

トヨタファイナンス(株)総務人事部担当部長。1985年、株式会社クレディセゾン入社。94学習院大学経営学修士課程修了、同年トヨタファイナンス入社。カード事業創設プロジェクトチームなどを経て、2001年4月から人事企画部門に。2002年1月から現職。
(2003年1月15日掲載)

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