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  Home > SPECIAL THEME > 続・新世代の就業観 2004年4月
 続・新世代の就業観インタビュー
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
「通話派」と「メール派」の違いとは
ケータイ利用状況調査から読み取る若者像
関西大学社会学部助教授 辻大介氏
若い人たちにとっては、存在しない生活は考えられないようにも見える携帯電話。それだけに利用の実態に迫ることは、彼らを理解するための早道かもしれない。「通話派」と「メール派」に見られた違いなど、最近実施された携帯電話の利用状況調査からうかがえる若者像について、辻大介・関西大学社会学部助教授に聞いた。
インタビュアー ワークス研究所 豊田義博 五嶋正風
――若者の携帯電話の利用状況を調査した結果から、どんなことが分かったのでしょうか。
辻大介氏2002年 3月、16歳、17歳を対象に、友人、親子関係やコミュニケーション頻度、携帯電話やメールの利用状況に関する調査を実施しました※。この調査を分析してみると、携帯電話を主に通話に使っている人と、メールの端末として使っている人に傾向の違いが見られたのです。

まず「通話派」ですが、「場合に応じて、いろいろな友達と付き合う」人ほど、携帯電話で友人によく電話をかけていることが分かりました。買い物、食事、スポーツ観戦と、目的に応じて一緒に行く友人は別々。携帯電話で話して約束を取り付けるというイメージです。携帯電話の通話は、友人関係を切り替え、使い分けるリモコンの役割を果たしているといえるでしょう。
孤独耐性が低い「メール派」
一方「メール派」を見ると、「友達とはプライベートなことも含めて、密接に付き合いたい」という人ほど、メール送信頻度が高くなっています。また別の調査で、メールをどんな用件で送るか、選択肢をいくつか示して選ばせたことがあります。特に用件のない雑談や遭遇した出来事の報告、そのとき感じた気分などの回答が非常に多かった。メールはおしゃべり的、自己充足的に使っていることが見て取れます。これらから、携帯メールは友人との関係自体を維持し、深めるメディアとして位置付けられているといえます。もうひとつメール派で特徴的なのは、孤独に対する耐性が低いという点です。「一人での食事はさみしくて出来ない」といった人がメールをよく使う人には多いのです。

今、携帯電話を持っていると、どこにいても他人とつながれます。そうすると、つながれる状態なのに、メールも入らない、携帯電話もかかってこないことが孤独を感じる要因となってしまう。携帯電話がない時代には、一人で電車に乗っているときなど孤独が当たり前で「独りぼっち」と感じる必要はなかった。そんな状況でも、今では「メールが一通も入ってこないな。じゃあこっちから送ってみよう」と孤独を感じてしまうことになる。以前なら孤独だと思わずに済む状況でも孤独を感じるようになったのは、携帯電話というテクノロジーが生み出した一つの変化だと思います。
飲み会中のメールチェックに違和感なし
――若い社員の中には、職場というコミュニティーにはいまひとつなじめない人がいるかもしれない。そんな職場にいるときでも、プライベートな携帯メールはどんどん入ってきますよね。メールを見て「孤独が癒やされた」と感じているのかもしれませんね。
辻大介氏本当にそれはあるかもしれません。

私は旧世代なので、学生と飲みにいっていちばん違和感があるのは、一緒に飲んでいるのに、目の前でメールを打つために学生の指が動いているようなときです。「ちょっとすみません」といって席を外して電話したり、メールを見たりというのも珍しくありません。

ゼミコンパの途中でメールをパッと見たりすることに、学生たちは全く違和感を覚えないようです。私はやはり非常に違和感があるのですが。私たちにとっては会って話しているのが対面関係で、メールでやりとりするのはバーチャルな関係だと区別していますが、学生たちはその違いがあいまいに見えます。対面関係のリアリティーも世代で変わってきているのかもしれません。そこにジェネレーションギャップが生じる要素がかなりあるのではないでしょうか。
家族関係に影響はあったのか?
――「家族一緒の時間に友達からケータイがかかってきて、だんらんが乱される」といった話も聞きます。携帯電話は親子の関係に何らかの影響を与えたのでしょうか。
まず父親についてはコミュニケーションの量そのものが少ないことが分かります。例えば母親と携帯メールをやりとりする人は男性で 34%、女性は 48%いるのに対し、父親とのやりとりは男性 19%、女性 21%に減少します。母親については「携帯電話を使うようになってからのコミュニケーションの増減」を聞くと、女性の2割が「増えた」と答えているのが目立ちます。ですが女性と母親のコミュニケーションはもともと活発な傾向にあること、母親とのコミュニケーション量は、その質(共通感、被理解感、信頼感)には関連していないこともあわせて見るなら、携帯電話が母子関係に大きな変化をもたらしたとは考えにくいでしょう。父親とはもともと少ないコミュニケーション量が、携帯電話で変わったという事実は認められません。つまり父親を見ても母親を見ても、携帯電話が親子関係に与える影響は小さいと見ています。

ですが「親が電話を取り次ぐことがなくなり、友達のことを親に知られなくなった」と答えた人が、男性で 50%、女性で 48%います。そして「友達のことを親に知られなくなった」、つまり親子関係と友人関係の接点が切り離されている人は、接点がある人と比較して、アイデンティティーが不安定な傾向が見られます。
半数が「友人のことを親に知られなくなった」と回答
――アイデンティティーが不安定というのは、もう少し詳しく説明していただくと、どんな状態なのでしょうか。
辻大介氏自分らしさをあまり感じておらず、どんな場面でも自己を一貫することが大事だという感覚が弱い。今の自分とは違う自分、本当の自分はどこか別のところにあるのではないか、と思う傾向が強いのでしょう。

ポジティブな面では、今の若い人は非常に多様な関係をネットワークとして保ちつつ、その関係を使い分けながら、一つの関係に埋没や依存せず生きていると感じます。

一方ネガティブ面に目を向けると、多様な関係は、別々に張り巡らされている場合があります。例えば携帯電話が登場して親が電話を取り次ぐことがなくなり、友達関係を知られなくなる。そうして家族の関係と友人の関係が切り離されるといった状態です。

切り離された関係の中で「本当のわたしはどれなのか」と考え、一貫した自己を保ちにくくなっている。つまりアイデンティティーの揺らぎが起きてくる。このことが、自分探しが文化現象、社会現象として目立ち始めた点と関係しているのかもしれません。
※調査概要 若者の友人・親子関係とコミュニケーションに関する調査研究
首都圏 30キロメートル以内在住の 16歳、17歳、800人に郵送で実施。調査時期は 2002年 3月。有効回答は 387で回収率は 48.7%だった。
プロフィール 辻 大介(つじ・だいすけ)

関西大学社会学部助教授。専門はコミュニケーション論。1965年大阪府生まれ。東京大学社会情報研究所助手、関西大学社会学部専任講師を経て現職。共著書に『子ども・青少年とコミュニケーション』(北樹出版、1999年)、『メディアとことば1』(ひつじ書房、2004年)など。論文・調査報告書はホームページ(http://i.am/tsuji/)で閲覧可能。
(2004年4月8日掲載)

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