| Home > SPECIAL THEME > 続・新世代の就業観 2004年2月 |
| 続・新世代の就業観インタビュー | |
リクルートワークス研究所 |
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「パラサイト・シングル」という言葉を世に送り出した社会学者、山田昌弘氏は 1990年代後半に日本社会が大きな転機を迎えたと説く。「1998年問題」と名付けられたこの転機は、どんな状況でやってきたのか。それは家族、親子の関係にどんな影響を与えているかを聞いた。
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| インタビュアー ワークス研究所 豊田義博 五嶋正風 |
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――最近山田さんは「1998年問題」という言葉を使われていますが、1998年はどんな意味を持った年なのでしょうか。
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私が勝手に「1998年問題」と命名したのですが、戦後社会の第 2の転機が 90年代後半にやってきたと見ています。まず自殺者が突如急増しました。90年代は 2万 2000人前後で推移していたのが、この年 3万 3000人となり、そのまま高止まっています。フリーターの数も 98年の 323万人から 99年は 385万人へと増えた。家族分野でも「できちゃった婚」、離婚、児童虐待の増加傾向に弾みがついています。クリントン政権で労働長官だったロバート・ライシュ氏は、著書『勝者の代償』(清家篤訳)で、ニューエコノミーが進展すれば、雇用が必然的に二極化することを指摘しています。大量生産、大量消費型のオールドエコノミーの下では、企業に就職し、まじめに努力すれば昇進、昇給できました。学歴や能力の差は、スタートライン、昇進スピード、到達点の差として表われたが、ほとんどの人が昇進でき、収入増が期待できるという点では、差がなかったのです。 |
企業内で仕事を覚え、昇進する仕事は漸減 |
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しかし、90年ごろから顕著になったニューエコノミーの下では、企業内で仕事を覚え、昇進するような仕事は徐々に減少します。高度に専門的な知識や技能を持った人材が求められる一方で、指示通りに単純作業をする人々も大量に必要とします。IT産業を例にとれば、システムエンジニアたちが高度なシステムを構築しようと熾烈な競争を繰り広げるが、末端では駅前でモデムセットを無料で配る単純労働者が大量に必要となるのです。 能力のある少数の者は企業の中核社員やフリーとして活躍できるのに、多くの者は昇進や昇給が期待できない職に就かざるを得ない。そして、両者の溝はどんどん広がっていくのがニューエコノミーの本質なのです。「1998年問題」は、こうしたニューエコノミーのマイナス面が一気に噴出したものかもしれません。 「将来への確実な期待」がなくなっていることは、人々の心理や行動にも影響を及ぼします。経済成長期にも失業する人はいましたが、仮に失業しても以前と近い条件や、やや収入が減るレベルで再就職できた。今は条件を下げてもなかなか仕事が見つからないという状況でしょう。それで家族の生活を守るためには「自殺で保険金を得るしかない」と考えてしまうケースが増えたのではないでしょうか。中高年は「もうやり直せない」と思っている節があります。 一方で若者は将来が見えなくなった。正社員の若者も、フリーターの若者も、先が見えないままです。私たちの将来の仕事はどうなるのか、そもそも生活していけるのかと思いながら、ズルズルきているのが、この 5年間なのです。 |
結果的に見通しを誤った親たち |
――「将来への確実な期待」が持てないことは、親子の関係にどんな影響をもたらすのでしょうか。 |
今の若者たちの親世代が就職したころは、勉強を頑張って有名な学校に行けば、有名大手企業で正社員になることがある程度保証されていました。だから親もそのつもりで子どもを育て、勉強させて、学校に通わせてきた。ところが子どもたちがいざ就職するときには「そうではない」といきなりいわれてしまった。「おれたち、私たちの今までの努力はいったい何だったのか」と思っている若者は多いでしょうね。 |
――家族の関係が変わったというよりは、家族をとりまく環境が変わったということですか。 |
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今の 40代、 50代の親たちと彼らの親の代とで、子どもとのコミュニケーションはそんなに違っていないと思います。子に教えて、やらせたことが結果的に役に立たなかった。結果的に見通しを誤ってしまったということです。こういう時代に子どもをどう導けばいいのか、親の方も分からなくなっているのです。 |
社会の変化のヒントは地方にある |
――ニューエコノミーのマイナス面は、社会をどう変えていくのでしょうか。 |
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今地方に起きていることに注目すれば、そのヒントが見つかるかもしれません。私たちは去年、青森県弘前市で 25〜 35歳の人たちを対象とした調査を実施しました。 まだ正式な集計はできていませんが、ざっと調査票を見ると年収で 400万円を超すのは公務員くらいで、100万円未満という男性もかなり存在しました。雇用形態でいえば正社員は非常に少なく、男性でも契約社員などが多かった。中小企業が多いこともあって、地方では「勤めている」といったときに正社員の若者はむしろ少数で、契約社員が多くなっているようです。 また、独身女性に「相手男性の年収がいくらくらいなら結婚してもよいか」という質問をしたところ、200万円以上という回答が多数寄せられました。最初、この質問への回答として選択肢の下限は 400万円の予定でしたが、一緒に調査した現地の研究者のアドバイスで、下限を下げておいてよかったです。 |
「低収入の共働き」が家族の一形態に |
――山田さんは著書『家族というリスク』(勁草書房)で、現在日本の家族のライフスタイルは (1) 共働き夫婦(妻も男性並み収入)、(2) 片働き(妻は専業主婦)、(3) 共働き夫婦(妻は低収入)、(4) 親と同居する未婚女性、(5) 低収入未婚男性という 5タイプが共存しているとしています。これに(6) 共働き夫婦(夫も妻も低収入)が加わってくるのでしょうか。 |
そうですね。弘前のような地方都市では物価も低く、例えば夫婦の合計年収が 400万円でも、どちらかの親の家に同居するような形をとれば、そこそこ豊かな生活ができるという事情もあるようです。東京や大阪といった大都市圏では、夫婦で年収 400万円は厳しいかもしれませんが、弘前市のような状況が、地方全般にどんどん広がっているのではないかと感じます。 |
――ニューエコノミーの進展、夫も妻も低収入な共働き夫婦の登場……。家族の関係はどう変化していくのでしょうか。 |
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ニューエコノミーの進展は日本の家族を支えていた男性の終身雇用や年功賃金を維持できなくしています。そうしてこれまでの家族の関係は崩れてしまっている。今までの日本の家族の関係というのは、結局は生活維持の上に成り立っていました。だから生活抜きの関係をどう持てばいいのか、誰もよく分からないのだと思います。 少なくとも今後は、妻にせよ子にせよ、夫や親の収入に頼るのではなく、経済的な自立が求められるでしょう。欧米では家族の構成員が経済的に自立したうえで、家族の間に信頼関係が生まれています。経済的な安定が与えられることを見返りとして、家族の信頼を築くような関係とは違った家族関係のあり方が、日本の家族にも求められてくるでしょう。 |
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プロフィール 山田 昌弘(やまだ・まさひろ)
東京学芸大学教育学部教授。専門は家族社会学・感情社会学。同大学助教授、米国カリフォルニア大学バークレー校客員研究員を経て現職。著書は『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書、1999年)、『家族のリストラクチュアリング』(新曜社、1999年)など。
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| (2004年2月13日掲載) |
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