| Home > SPECIAL THEME > 新世代の就業観 2003年2月 |
| 新世代の就業観インタビュー 5 | |
リクルートワークス研究所 |
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ケータイで友とつながり、コンビニを中継基地に街を漂う。今どきの若い人たちに「漂い系」と命名した、伊藤忠ファッションシステムの吉水由美子さんが今回の語り手だ。漂い系の特徴から始まり、「ヤル気で働いてもらうには」「定量調査でつかまえにくい理由」さらには「コミュニケーションの変化」へと話は広がった。マーケティングの視点から見える若者像とはどんなものかを紹介する。 |
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――2002年4月に出された『「漂い系」の若者たち』の土台となった、若者を対象とした3つの調査があるそうですが、どのようなものですか? |
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マーケティング会社で新製品開発やマーケティング戦略の策定にかかわる者として、いろいろな企業の開発担当者から相談を受けます。その中で「今どきの若者って、一体何を考えているんでしょうね?」という質問が気になっていました。分からないなら調べてみましょうと、3つの調査を実施しました。「シングルライフスタイル調査」でライフスタイル全般、「モバイルコミュニケーション調査」でケータイヘビーユーザーのコミュニケーション実態と動機、「コンビニマニア調査」でコンビニヘビーユーザーの利用実態と動機を把握した。合わせて約160人の若者を調査しました。 |
自宅で1対1のインタビュー |
調査の特徴としては、まず訪問調査が挙げられます。対象者の自宅で、1対1のインタビューをしました。本音が聞きやすく、部屋の様子や持ち物などから、生活背景が見えるからです。グループインタビューも手法を工夫し、「いちばん好きな人に手紙を書いて、10年後の自分を語ってください」などと依頼しました。また「理想のライフスタイルを表現してほしい」と、用意した300枚くらいの写真から好きなものを切り貼りし、それらを選んだ理由を説明してもらいました。 これらの調査から、今どきの若者の生活にはケータイとコンビニが必要不可欠だと分かった。ケータイを持つことで、どこにいても友達とつながれる。コンビニに立ち寄ればいつでも食料や飲物が買える。毎日行くのが習慣化し、自分の部屋のようにくつろげる居場所であることも分かりました。 ケータイとコンビニで家にいる必要がなくなった若者は、あたかも街中を漂流しているようです。そんな彼らを「漂い系」と名付けました。意思や冒険心を持ってある程度遠距離を移動する「放浪」に対して、どこへ向かうか自分でも分からず、安心できる範囲内でぶらぶらまったり過ごす。それが「漂い系」です。 |
「漂い系」に見られる3つの特徴 |
――「漂い系」の特徴をもう少し詳しく教えてください。 |
次の3点が挙げられます。1)精神的目的地がなく漂っている。 2)物理的目的地が狭く、漂っている。 3)流されながらも明るく楽しく。1)については、物質的に恵まれた現状にそこそこ満足している半面、将来の目標やビジョンは不鮮明といえます。上昇志向がなく、目標を設定し達成へ向けて努力するという態度が希薄です。 2)に関しては、海外への出国率や国内旅行の参加率が低下、車の月間走行距離の減少など、行き場所がない、もしくは移動距離が短くなっている様子がうかがえる。車の走行距離で言えば、月間607km(1989年)から491km(2001年)へ、2割くらい減っています。実際彼らにインタビューしてみると、海外旅行は言葉や治安の問題など、国内に比べて緊張感を強いられ、プレッシャーがかかるのがイヤだという。また国内旅行やドライブも、事前準備が面倒、長距離運転は疲れるといいます。逆に近所のコンビニやカフェ、公園で、プレッシャーやストレスなく過ごすことを好むのです。 こういうと後向きで消極的な若者像を想像されそうですが、そうでもない。明るく楽しく過ごすことを良しとする、ポジティブな人たちです。「私は○○な人」と自分らしさにキャッチフレーズをつけ、自分を肯定する。そして「ムリせずラクに」「今を楽しく」暮らしたいという欲求が顕著です。仕事もそこそここなすが、友達と過ごす時間や一人の時間を何よりも大切にします。 物質的に豊かな時代に育ったから、モノやお金に対する飢餓感はない。多過ぎる情報に疲れながらも、自分のアンテナにピッときたらすぐ消費する。上の世代のように我慢し、「いつかはクラウン」と段階的にモノを入手せず、欲しければ「最初からベンツ」。しかも無理して手に入れたくないから、「中古車でもいいや」となるのです。 |
癒やしに「目標」が出てきてしまう中高年 |
――「漂い系は目標設定し、達成へ向けて努力する態度が希薄」というお話がありました。目標のとらえ方も世代によって違うのでしょうか。 |
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以前ある調査で「あなたの究極の癒やしを描いてほしい」と40代、50代と20代、30代の方にそれぞれお願いしたことがあります。このとき、中高年の男性は、癒やしの場面で必ず山を描いた。一方、若い男性は必ずプールや海を描く。それを精神科医の香山リカさんに分析してもらったのですが、山というのは、「征服する目標」「到達しなければならないもの」の象徴だそうです。 |
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――「癒やしを描いてほしい」といっても「目標」を象徴するものが出てきてしまう? |
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つまり中高年は、「目標を達成したぞ」ということに喜びがあり、癒やしを感じるわけです。ところが20代の男性で最も典型的なのは、プールや海にマットなどを浮かべ、ゆらゆらと浮いている、超脱力状態です。脱力の中で、風の動きや、自分がゆらゆら揺れる感覚を楽しむ。日常から解放され、動物的な生体感覚を研ぎ澄ますことが、癒やしなんです。こんなことからも、世代による「目標」の重みや意味の違いがうかがえます。 |
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成長している自分に気付いてほしい |
――そんな若い人たちが、やりがいを持ち、能力を発揮して働けるようにするには、どんなことに配慮すればいいのでしょうか。 |
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いきなり全体の大きな目標を示しても「私には関係ない。別の世界だ」となってしまう。全体目標はこうだ、それを細分化した部分目標はこうだ、その中であなたの役割はこれと示す。「小さく見えるかもしれないが、こんなに全体目標に貢献しているよ」と、全体と自分のやっていることの関係を明確にしないと、モチベーションは上がらないでしょう。 |
また、特に男性の場合ですが「職場で、集団内で認められたい」という思いが伝わってくる。「自分なりにきちんと仕事をしてるんだから、できた部分は認めてほしい」と。それが認められないと「正しく評価されてない」と、被害者意識が出てくる気がします。 私の下にいる若い人たちは「成長する」ということにこだわります。例えばクライアントの前であいさつや自己紹介を求めると「前回のプロジェクトに比べ、成長した私を見てください」と話す。こちらからすれば、小さな成長にも気付いている、ちゃんと見ていると伝えることが重要で、そこに大変気を使います。 |
人と比較されるのは大嫌い |
――ある小売業の方に聞いた話です。店長は勤務中、名刺大のカードを持っている。良い行動をした店員がいたら「一緒に働いていて、○○さんのこういう動きが良かった」と書いておく。翌日の朝礼でカードを読み上げて本人にプレゼントし、みんなから拍手を受けるそうです。これも「気付き」を伝える工夫です。 |
なかなか上手ですね。 |
――ですがこのカードは報奨金とは全く結び付いていない。「何枚ためたら何万円」ではない。そうしないほうがいいのです。 |
それも分かります。カードをためようとすると、比較が出てくる。彼らは人と比較されるのは大嫌い。だから説教するときも「あの人はこうだけど、あなたは」は禁句です。「あなたが目標を達成したときはこうだった。今回ここはできたが、ここはできなかった」と説明するのが効果的です。目標管理のための目標ではなく、そこへ向かって行くことが、自身の成長につながると思えるような目標。常に成長してきた軌跡が確認できるような動機付けが大切ですね。 |
定性調査にこだわっている理由 |
――先ほどの若者を対象とした3つの調査ですが、いずれも定性的ですね。何か意識されているのでしょうか。 |
定量的、統計的な分析手法では、今の若者の軸は表現できないと感じています。ですから、私たちは定性調査にこだわっている。定量調査をやれといわれればできますが、定量調査では当社でも別の調査会社でも、そんなに違いは出ない。むしろ、お宅訪問だったり、路上でつかまえたり、調査対象が生息する場所にこちらから出掛けていく。そこにリアリティーが出てくると思います。 20年くらいこの仕事をしていますが、以前は企業の方にこういう定性調査の結果をプレゼンテーションすると「こういうタイプは何%いるの」と必ずいわれたが、最近はあまりいわれなくなりました。「あなた方のターゲットはこの人なんです」と、一人でもいいからあるタイプを象徴する写真を1枚見せる。そのタイプの人の気持ちにあてはまる、いくつかのキーワードを交えてプレゼンテーションした方が、有り難がられますね。 |
キーワードは「多様化」ではない |
――定性的にしかとらえられないというのは、それだけ若者が多様化しているということでしょうか。 |
多様化ではない気がしています。「多様化でニーズが細分化しているなら、限りなくオーダーできるシステムをつくればいいんですか」といわれるが、若い人たちは、これが欲しい、あれが欲しいがいえない。関心があるか、それ以外は無視というか、「嫌い」という判断すらウザイといいますか。 |
――多くの中から選択するのは、彼らには負担なのでしょうね。 |
「自ら商品選択をする」という労力を減らしてくれるのがセレクトショップであり、コンビニです。自分よりもセンスのいい、目利きのバイヤーが選んだとか、ヒット商品、定番商品しか並んでいないということは、それを購入したときに一定以上の満足が保証される。省力化、プレッシャーのなさ、ローリスクを求める感じがあります。 |
――今までは、たくさんの中から選べるというのが価値だった。それが今は「選んでくれよ」と。その違いですね。 |
本当に「選んでくれよ」ですね。だからケータイでも「着メロ何千曲から選べます」みたいなのがありますが、若い人はうれしくないかもしれない。何千曲より、私のための5曲を選んでほしいと。 |
細切れなコミュニケーション |
――ケータイなど若者のコミュニケーション手段についても調査されていますが、何か気付かれたことはありますか。 |
ケータイメールのやりとりなど、コミュニケーションが細切れになっていると感じます。「どう、元気?」「今、何してる?」「何々してる」「何々買った」みたいな。何か重大な相談事があり、それに対し中身の濃いアドバイスがある、ではないのです。 取りあえず自分の不満や不安を受け止めてくれる相手がいれば満足。言語より、時間や気持ちの共有によってコミュニケーションが発生している感じがします。一つ一つは断片的でも、頻度の多さが濃密なコミュニケーションの証しなのでしょう。 |
言語を補う「ビジュアル会話」 |
――ケータイではその場で取った写真など、画像を送信できるようになっています。彼らはそれをどう使っているのでしょうか。 |
ビジュアル会話ですよね。J−フォンの写メールは本当にいいところに着目したと思います。 |
――これだけ現像屋さんが街中に増え、かといって、写真を保存するアルバムが売れているのかというとそうでもない。写真の意味が「記録する」から変化しているのでしょうか。 |
今は交換するためのものですね。 |
――ケータイのカメラ、デジカメ、使い切りカメラ。いろんなカメラが増えて、撮った写真を何に使っているのかというと、例えばカフェで会話するときに、交換し合っている。 |
その通りだと思います。彼らは自分の感情を言葉や文字で表現するのが下手ですよね。それでメールの文面でも絵文字や写真の助けを借りたりする。あるいは、話題を探すのもまたきっと大変。共通の話題としてビジュアルがあれば、そこで場が持ちますよね。そんなところから、コミュニケーションが言語系ではなくなっている感じがします。 |
多様な「カワイイ」を解明したい |
――「コミュニケーションが言語系ではない」といえば、ある外資系のSPAの方に「店員を見ていると、今の若い人たちはボディーランゲージを使いこなしている」と聞いたことがある。彼らの方が私たち大人よりグローバルで、日本語をあまり使っていない(笑)。 |
ボキャブラリーは貧弱なんですが、イントネーションの上げ下げとか、ボディーランゲージとか、そういう表現力は高いですよね。非言語なコミュニケーションも併用しているからか、「カワイイ」一つとってもいろんな意味があります。今後カワイイ調査をやってみたいと思っています。彼らがカワイイと思う物の秘密を解き明かしたい(笑)。 |
――今後このマーケットの探究には、大人と若者の間の通訳書が必要だと思います。 |
若い人たちは、言語系ではない手段も併用してコミュニケーションしている。その考え方や判断基準を、言葉中心でコミュニケーションする大人たちが、理解できる言葉に翻訳する。そこは私たちがこだわっている点でもあります。 |
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「新世代の就業観」 おわり |
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| (2003年2月28日掲載) |
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