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  Home > SPECIAL THEME > 新世代の就業観 2002年12月
 新世代の就業観インタビュー 4
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
週給払いとシニアの小言が、若い従業員をソノ気にさせる
中小企業EMS社長の
フリーターと呼ばれる若者たちをいかにわが社の戦力にするか――。このテーマにあの手この手で挑んでいるのが、栃木県大田原市で携帯電話の組み立てなどを請け負うEMS(電子機器の製造受託サービス)、アイ電子工業だ。同社の高橋徳経社長は、1週間契約から始まり、評価次第で正社員への道も開ける雇用制度や、大手企業をリストラされたシニア層を教育係に取り込むことで「フリーターをその気にできる」と説く。「若い従業員が何を考えているか分からない」とお嘆きの経営者、管理職に、ぜひ参考にしていただきたい"戦力化実践論"だ。
インタビュアー ワークス研究所 豊田義博/五嶋正風
――アイ電子工業は、どんなビジネスに取り組んでいるのですか?
平尾氏 写真最も大きいのはEMS(電子機器の製造受託サービス)です。携帯電話の組み立てなどを請け負っていますが、これが売り上げの8割以上を占めています。

そのほか、自社製品の開発にも力を入れています。殺菌効果があるオゾンを含む水を安価に製造する装置や、ほこりっぽい場所の精密機械冷却に使う、密閉式の熱交換ファン。ソフトウエア分野ではパートタイマーを含む社員の勤怠管理システム、またアイデア雑貨で、ハムスターの回し車の回転数を、磁束密度の変化で計測する「ペット用歩数計」などを世に送り出してきました。
若者をモノ扱いする業者に怒る
――アイデア新製品のお話は次の機会にお聞きするとして(笑)、今回はフリーターの活用についてお伺いします。ウイークリーワーカー、マンスリーワーカーと呼ぶ制度を導入されているそうですが、導入に至る経緯は?
フリーターを活用しているのは、先ほどの事業展開のうち、特にEMS部門です。例えば携帯電話の組み立てですが、非常に生産の振れ幅が大きい。生産量の最大時は、最小時の3倍、4倍にもなります。注文から納品のサイクルも短く、直前キャンセル、変更もたびたびで、来月の予定も立たないほどです。その結果、労働力の調達も迅速さ、柔軟さが求められます。

当初、労働力の調達は工場に人を派遣する構内請負の業者を頼りました。ところが業者から派遣される人のレベルが大変低かった。派遣される人は、誰か一人休むとほかの誰かがやってくる。だからちっとも連続性がないし、スキルも上がらない。

業者にも問題が多い。ある業者が10人ぐらい連れてきて「これ、置いていきます。だめだったらまた次を入れますから」と言ったことがある。私もカーッときて「人に向かって人形の首をすげ替えるようなことを言うな。連れてきた人材に自信がないなら連れて帰りなさい」と追い返したことがあります。

そんなわけで、1997年から自社で雇い入れるウイークリー、マンスリーワーカー制度を導入しました。ただ、さきほど言った生産の大きな振れ幅に対応するため、構内請負も併用しているのが現状です。
「あと1日がんばれば2500円」で出勤を促す
――ウイークリーワーカー、マンスリーワーカー制度にはどんな特徴がありますか。
高橋徳経氏 写真ウイークリーワーカーは、1週間単位の雇用契約です。給料も1週間単位で支払う。この一週間で結果が出るところが一つのポイントです。

例えばずっと無職だった人が仕事に就いたとします。月給制だと給料が出るのは当然1カ月先。最初は「いいかな?」と思って始めた仕事が、イメージと違う場合もある。すると「お金もらうのに、しょうがないから1カ月だけいるか」となる。これでは雇う側も雇われる側もお互い不幸です。週給制なら1週間で判断できるわけです。

また当社は1週間無遅刻無欠勤で2500円の皆勤手当を支給します。これも理由がある。木曜まできちんと出勤し、「あと1日」という日に二日酔いになったとします。「ああ頭痛いな」というとき、月給制の皆勤手当だと支給まで間があるので「だめだコリャ」と休んでも平気。ところが週給ならあと1日で2500円じゃないですか(笑)。「今朝は何としても出よう」と、我慢して出勤する。これで皆勤手当の支給率がぐっと上がるのです。

また働く彼らに「来週も来たければ、皆勤手当を取ってね」と言っておく。すると「皆勤手当取れたから来週も来ていいんだな」と、次の週も来てくれます。2、3週目になったら今度は「だんだん能力も上がってきたから、時給を10円上げましょう」と伝える。隔週ごとの10円昇給を、3カ月ぐらい繰り返していく。その中から本当にこの仕事をやりたい者が定着していく。そうなったら、マンスリーワーカーへの昇格をもちかけるのです。

マンスリーになったら、きちんとした査定をする。正社員と変わらないようなシステムで評価もするし、月給制にもなります。さらにその中からまじめで、なるべく能力がある人を正社員に登用もできるわけです。
ウイークリーから正社員昇格は13人
――ウイークリーワーカーから手順を踏んで、正社員になった人はどのくらいいますか?
13人になります。新卒の採用は原則「ウイークリーワーカーから」にしたいと考えています。
――なぜそのように考えたのですか。
やはり、これまで新卒採用に苦労してきたということですね。当社は中途採用も多く、事業拡大の中、新入社員を教育する時間がなかなか取れなかった。なんとか採用してもほとんどが3年で辞めていく状態でした。せっかく教育しても意味がないと思っていました。この制度はそんな苦い思いに対する、一つの解決策ですね。

ところで若いフリーター活用のために、もう一つ実行しているアイデアがあるんです。
リストラ社員を活用する「玄人軍団」
――どんな取り組みでしょうか。ぜひ聞かせてください。
高橋徳経氏 写真2000年4月に「玄人軍団」という会社を新たにつくりました。シニア層の知識や経験を生かし、工場での組み立て作業、梱包作業、物品販売やイベント開催を請け負う企業です。従業員は時給制のパートタイマーとして働いてもらう。このあたりは大手企業の工場も多いので、そこをリストラされた人も数多くいます。

このシニアの人たちを、作業する若い人たちの中に、数十人にひとりの割合で入れてあげるんです。彼らは企業戦士として大手でずっと仕事してきた人たちですから、もの作りや、職場のルールをよく知っている。

一方、若い人たちは、そういう職場のルールが全然分からないので、終業時間がくるとさっさと帰ろうとする。そのとき玄人軍団の人が「ちょっと待った。もう少しだからやっていけよ」「今日、朝礼で何個作れと言われたの? 何個できたの? まだじゃない。残業しようよ」と声を掛けるのです。
フリーターは職場のルールを知らないだけだ
私も最初は「こんな若い連中」と思っていましたが、そんなことはない。教わっていないからルールを知らないだけなんです。知らないから突っ立っている。「何したらいいのか分かりません」と、こうくる。

そこで「あんちゃん、こんなことやってちゃだめだよ、こうやってやるんだよ」と一生懸命教える。相手も最初は「うるせえじじいだな」と思っていても、徐々に「あの親父の言うことも本当だな」となってきます。するとだんだん仕事も面白くなってくる。これはね、職人の徒弟制度と全く同じこと。構内請負や、若い人たちだけの職場では、それができないのです。

そのうちに、今度はシニア層も生きがいを感じてくるんですね。「若い人が自分の言うことを守る、分かってくれるようになった」と。すると今度は、自分の持っている技能を、どんどん若い人に渡してやりたいと思うようになる。

そんな様子になってきたら、私は「出身企業に営業しなさい」と言うようにしています。仕事をもらってくるということですね。最初のうちは絶対にやらないんですよ。「冗談じゃねえ」と腹を立てている。それがだんだん若い人たちと働く中で「オレもまんざらじゃない」と、自信を取り戻す。そしてリストラされた会社へ営業に行くんですよ、久しぶりに。

若い人たちとの接点とか、実際の生きがいというようなものとか、世代を超えた関係が徐々にできてくるわけです。これは素晴らしいことだと思っています。
卒業後、すぐ定職に就かない選択もあっていい
――若者がフリーターなることについて、どう思っていますか?
高橋徳経氏 写真今人生80年ですよね。大卒で22歳、高卒で18歳のときに仕事に就くわけですが、そこで定着した仕事に就けというのは間違っているんじゃないかと私は思う。学校の先生たちもあまり仕事の内容などは教えてくれない。職場っていうのはどういうものなのかとか、そこでのルールなどは全く分からない。

そんな中、親たちは「あなたは本当に不幸なときに生まれたわね。不景気で、就職先もない。しょうがないから私たちがあなたの生活を支えます。あなたは何もしないでいいから」と子どもを守ってやる。これは冗談じゃない。「よもやフリーターなんかしないでちょうだい」「海外旅行でも行ってらっしゃい」「専門学校でも行ってらっしゃい」と、親が言うわけです。私、絶対それは反対だと思います。
下宿代と食事代は家に入れさせるのが本当の親心
――それでは働かない方がいいと言っているようなものですよね。
そう言いたくなりますよね。私が一生懸命になってフリーターを生かそうと主張するのは、若いうちにいろんなことを体験できるからです。「フリーターはインターンシップですよ」と私は言っているのです。

人生50年、60年のときは、18歳で働き始めるとか、元服は15歳で、でした。だけど人生80年なら、計算でいけば30歳ぐらいまでは、いろんな体験をするインターンシップの時代であってもいいのではないか。

若い人たちには、何もそんなに急がないで、就職にきゅうきゅうとすることはないよと言いたい。一方でお母さんやお父さんは、自分の子どもに「フリーターでもいいから、下宿代と食事代ぐらいはちゃんと入れてくださいよ」と自立を促す。これが本当の親心ではないでしょうか。
プロフィール 高橋 徳経(たかはし・のりみち)

アイ電子工業(本社=栃木県大田原市)代表取締役。1943年生まれ。大田原電機製作所、オリジナル電機工場長などを経て、80年に独立。88年に同社を株式会社に改組、代表取締役に就任。同社は現在、従業員数154人(パート含む)。玄人軍団の藩主(代表取締役)も務める。
(2002年12月26日掲載)

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