研究プロジェクト

調査データ

書籍・提言

機関誌 Works

研究所について

  Home > SPECIAL THEME > 次世代リーダー育成のいま(第4回)2005年5月
 ソニー
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
次世代リーダー育成のいま(第4回)
ソニー 「夢」なくしてリーダーたりえない
−ソニーユニバーシティグループ ダイレクター 四方昌利氏
次世代の経営を担うリーダー人材の育成。近年各社で大きな課題となっているこのテーマに、リーディング企業はどのように取り組んでいるのだろうか。これから期待されるリーダー人材の役割、それらの人材をどのように育成、処遇しているのか。各社の人材育成責任者にインタビューする。

第4回はソニー株式会社 ソニーユニバーシティグループ ダイレクター 四方昌利氏にご登場いただく。同社は 94年にソニー塾、2000年にソニーユニバーシティを設立。「『夢』はソニーの根幹である」という同社は、リーダーにも夢を起点に行動することを期待している。なぜ夢が必要なのか、夢と仕事を結び付ける仕組みはどのようなものか聞いた。
インタビュアー:古野庸一
文、構成:内田美代子
――ソニーユニバーシティの名前は知られていますが、その内容はあまり公表されておりません。今日はリーダー育成にどのように取り組まれてきたのか、お聞きしたいと思います。
四方氏
四方 ソニーが基幹人材の選択的な育成を本格化したのは、94年に開始したソニー塾からです。ソニー塾は係長や若手の課長を対象に、年間 2回、15人ずつを選び、ソニーの将来を考え事業内容や組織機構のあり方を提言してもらうものでした。このソニー塾を拡大発展させて、2000年にソニーユニバーシティを設立しました。
――ソニーユニバーシティを設立したのはなぜですか。
四方 90年代の中ごろから、事業の中心であったエレクトロニクス分野と、他分野との境界線があいまいになってきて、プレーヤーが他分野からも参入するようになりました。またソニー自身も事業分野を拡大しており、視野に入れなければならない領域も広がっていました。ソニー塾では、日本のエレクトロニクス事業の中から受講者を選抜していましたが、環境変化の激しい中、全世界を見据え、広い領域をカバーできるようなリーダーを育成しなくてはならない、リーダー育成の仕組みも強化しなければ間に合わないという認識から、ソニーユニバーシティの設立に至りました。
知識やスキルを使いこなすアティテュードに注目
――ソニーユニバーシティは、どのような方針でリーダー育成に取り組んでいるのですか。
四方 ひとつは、受講者をソニーグループ全体から集めてグループの視点を持ってもらうこと、そしてもうひとつは知識やスキルを使いこなす、人材のアティテュード(振る舞い方)を重視することです。つまり、自分が所属している事業の枠を一度取り払い、他の事業領域では何が課題で、何を考えているのかを知り、それに対して自分たちは何ができるかをソニーグループの視点で考える。そしてそれぞれやるべきことを再び事業の単位に落とし込む。さらにそのときリーダーとしての振る舞い方(アティテュード)はどうあるべきかを併せて考えるのです。ソニーユニバーシティはこの2点に最大のエネルギーを割いており、知識やスキルの教育は、別の研修体系の中で主に行っています。
リーダーの行動の起点には夢がある
――なぜアティテュードに注目するのでしょうか。
四方 一般的には、リーダーとは世の中の動きが見えにくくなり、先の見通しが立たない中で、何をするべきか自分なりに考えられる人でしょう。ソニーの場合は、夢を語れることが最初の一歩です。夢はソニーの根幹でありDNAともいえます。ソニーにいて何を実現したいのか、すべきなのかを起点に、その夢をコンセプトに落とし、他人と共有可能な形にする。次に組織で仕事をするために、チームメンバーとコンセプトを共有し、モチベートする。そして最初に立てた目標をあきらめずに達成する。このプロセスをたどれることがリーダーの要件であり、また取るべき行動だと考えています。

この過程の最初に夢を置いているのが、ソニーがソニーたるところでしょう。夢からスタートしてこのプロセスをたどるには、知識やスキルも必要ですが、最後はアティテュード、つまり個人の態度や姿勢が大切です。働く理由が「給料のため」では、それが何であれ人を魅了する「モノ」をソニーにいて生み出すことは困難だと考えています。なぜ自分がここにいてこの仕事をやっているのかが、日本的な表現でいう「腹に落ちている」かどうか。それがリーダーシップの非常に重要な部分のひとつだと考えています。
グループを超えた視点をもつための場づくり
――リーダーはどのような層を想定していますか。
四方 大きく分けると事業責任者クラス、部長クラス、そして課長クラスの3つです。事業責任者は、次世代リーダーとして次にグループの経営チームに参画する候補者でもあるので、経営者としての資質の強化に重点を置いています。部長・課長クラスは、自分が所属するグループで何が起きているかを認識したうえで、グループ全体の視点を早くから身に付けてもらえる場をつくっているのです。ソニーユニバーシティ設立の背景にもあったように、事業の境界線が崩壊していますので、まさにグループを超えた視点を持ってほしいと思っています。また各領域のキーパーソンが社内でのネットワークを公式・非公式に形成することも重要なポイントです。
――どのようなプログラムを展開しているのですか。
四方 主なものとしては、それぞれの層に対し、3〜4カ月間のプログラムを実施しています。一回のプログラムにつき20人程度を指名し、事業責任者向けは年1回、それ以外の層は年2回実施します。
――プログラムではどのようなことを行いますか。
四方 プログラムでは、まずソニーの外の世界に目を向け、政治、経済、社会、文化などを幅広く見ます。次にソニーの内側に視点を移動し、ソニーグループの各所で何が起き、何が課題となっているかを把握する。そして最後は自分自身に焦点を当て、ソニーの中で何をしたいのか、何をすべきかを考える。そして最終的には自分のすべきことを提言としてCEOに発表する。この形式は、ほぼ共通しています。
夢に立ち戻るための4カ月
――提言はどのような内容のものが出てきますか。
四方氏
四方 商品やビジネスに関するものが6‐7割、残りが会社の機構に関する提案です。提言ではビジネスプランの作成や課題の検証は求めますが、むしろ現状の枠組みにとらわれない発想に基づく提言を期待しています。先にリーダーの行動の起点には夢があると言いましたが、プログラムでは、4カ月間を通じ、そこに立ち戻って考えていただいています。やりたいこと、できること、しなくてはならないことの3つが重なるところに提言が生まれるのです。
夢の追求が、新たな商品やビジネスモデル結びつく
――夢と提案は関連するのでしょうか。
四方 ソニーという会社は、入社するときに、「私はこんなことをやりたい」という思いを強く持っていた人材が多いと思っています。その思い、もしくは夢というものは、もちろん時間とともに変わっていってもいいのですが、例えばライフスタイルを変えるような商品をつくり出したいと思えば、そのコンセプトを作って技術をにらみながら商品を考え、メッセージをお客さまにきちんと伝えていく方法をどんどん追いかけていく。結果として、それが新しい商品やビジネスモデルとなっていくと考えます。
――提案にはどのように対応しますか。実際にプロジェクトになったり、配置につながるのでしょうか。
四方 事業化する提案もありますし、検討となるものもあります。時には、しばらく非公式に自分たちで続けなさいとアドバイスされることもあります。研修後の配置については、まだ不十分だと思っています。やはり最後は現場で体験することでしかリーダーは育成できませんので、研修後にいかに実際に体験する場をつくっていくかが、課題となっています。
本人の納得なくして、責任感は生まれない
――育成のための配置というと、本人の希望に限らず、あえて意図的に体験させることもあります。こうした方法にはどうお考えでしょうか。
四方 本人が了解していることが重要ではないでしょうか。本人が納得する配置でなければ、困難なことへの挑戦心や責任感を持つことは難しく、ビジネス上のリスクを負うこともできないのではないかと思います。

本人の意向を尊重するという風土に関連して、実はこれまで申し上げてきた3つの層の選抜式のプログラム以外に「Wonders!!(ワンダース)」というプログラムがあります。プログラムの流れは同じですが、指名ではなく、本人の意思で参加申し込みをしてもらうのです。
1人のメンターが認める個性を大切にする
――どのぐらいの応募がありますか。
四方 前回は約70人の応募がありました。書類選考と面談で選考しますが、ソニーユニバーシティの「卒業生」を中心とした方々にメンターになってもらい、メンターに書類選考と面談をしてもらうという方法をとっています。面談ではルールを1つだけ決めていて、1人のメンターが合格としたら、ほかのメンター全員が不合格としても、合格とします。「Wonders!!」は、指名プログラムと違い、発掘を目的にしていますので、たった1人のメンターでも強くひきつけられる要素があれば、大切にしたいと考えているのです。
――プログラムの成果はどうでしょうか。
四方 「Wonders!!」プログラムで議論しているテーマが「ソニーの10年後」ということもあり、成果というには恐らく早すぎますが、トップマネジメントからは「その方向で進めるべし」という評価や支援を受ける提言がいくつも出てきています。やはり、リーダーのあり方を問い詰めていけばいくほど、ソニーで実現したい夢に立ち戻っていくことになると再認識していますね。

今、あらためて夢に焦点を当てなければならない状況に置かれていると思います。夢はソニーの根幹でありそれを失うことはソニーがソニーでなくなることを意味します。ソニーグループの将来を担うビジネスリーダーに、あらためてこのことをきちんと自分の中で確かめてもらうために、ソニーユニバーシティは試行錯誤を重ねているのです。こうした試みの向こう側には、わくわくするようなソニーの未来が広がっていると信じています。
プロフィール
四方昌利(しかた・まさとし)
ソニー株式会社 ソニーユニバーシティグループ ダイレクター
1985年ソニー入社。海外営業本部勤務の後、88年に退職。京都府立高等学校の英語教諭となるが、91年に再びソニーに入社。以後、教育研修、事業部門の人事、事務系採用、間接部門の人事などを経て、現職。
◇ 次世代リーダー育成のいま 目次
第1回 セイコーエプソン株式会社
第2回 アサヒビール株式会社
第3回 富士通株式会社
番外編 日本マクドナルド株式会社
第4回 ソニー株式会社
(2005年5月31日掲載)

 読者アンケート
このページへの感想を教えてください。
※下記の質問にお答えいただくと、これまでの集計がご覧になれます。
※送信は 1回 しかできません。ご注意下さい。
この記事は、あなたにとって満足できる内容でしたか?
   とても満足
   まあ満足
   やや不満
   とても不満
↑TOP へ戻る
HOME サイトマップ 検索 お問い合わせ サイトについて RECRUIT