| Home > SPECIAL THEME > 次世代リーダー育成のいま(第3回)2005年2月 |
| 富士通 | |
リクルートワークス研究所 |
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次世代の経営を担うリーダー人材の育成。近年各社で大きな課題となっているこのテーマに、リーディング企業はどのように取り組んでいるのだろうか。これから期待されるリーダー人材の役割、それらの人材をどのように育成、処遇しているのか。各社の人材育成責任者にインタビューする。
第3回は富士通株式会社 FUJITSU ユニバーシティ 所長の山村弘氏にご登場いただく。同社は 2002年にFUJITSUユニバーシティを設立し、FUJITSUグループの教育戦略の一元化を図ってきた。その中で国内外の富士通グループ 500社、16万人の従業員を擁する組織で活躍できるグローバルリーダーの育成に取り組んでいる。グローバルな視点を持ちながら、人間力学部を設けるなど富士通文化を根にもつ同社の取り組みについて聞いた。 |
| インタビュアー:古野庸一 文、構成:内田美代子 |
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――まずは、FUJITSUユニバーシティの概要を教えてください。
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![]() 山村 FUJITSUユニバーシティは、2002年 4月に設立された富士通の教育機関です。昨今の厳しい経営環境の中で、長期的かつ戦略的に人材を育成することが重要だと社内で認識されるようになりました。富士通グループの知識を結集し、業界をリードしていく人材を育成するために、それまで事業部ごとに実施していた研修をFUJITSUユニバーシティのもとに一元化したのです。「FUJITSU NetCampus」というe-Learningシステムを用いて、従業員がどこにいても研修システムを利用できる環境も整えました。そのため、例えば全従業員を対象とするような一斉・必修科目(例「情報セキュリティ」など)では、全従業員の受講率がほぼ 100%に達するなど成果を挙げています。現在は海外へもe-Learningシステムを提供し始め、国内外の富士通グループ約 500社、16万人の従業員が対象になっています。 |
海外子会社の教育システムの統一を図る |
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――それほどのシステムを設立するに至った経緯を説明していただけますか。 |
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山村 まず大きな背景として弊社を取り巻く環境の変化がありました。以前はどちらかというと大手のお客さまを相手にしたビジネスが主体でしたが、今は個人のユーザーを直接相手にするようになりました。また現在は顧客の方が私たちより知識が豊富な場合もあるなど、パラダイムシフトと呼べる変化が起きています。こうした状況変化の中、これから富士通は何をしていくべきか見直しが迫られたのです。 また、教育戦略や研修システムをグローバルに考える必要性が生じていました。弊社は 90年代後半に海外の複数の大手IT企業を 100%子会社化し、2002年には子会社の名称をFujitsuの名前で統一するようなブランドキャンペーンを実施しました。教育に関しては、以前は各社で個別に取り組んでいましたが、各社の設立の経緯が違うため、教育の方針や内容もばらばらになっていました。そのため、教育システムを統一することで富士通グループの方針や戦略に合わせた教育をすることを目指しました。またThe FUJITSU Wayの浸透を徹底したいという意図もありました。 |
The FUJITSU Wayで企業の価値観を体現 |
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――The FUJITSU Wayとは何ですか。 |
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山村 The FUJITSU Wayは企業としていかに行動すべきか、また社員はどのように行動すべきかの原理原則を示すものです。先ほど申し上げました事業環境の変化の中で富士通グループとしての価値観や方針を明確に掲げる必要があったため、会社活動、事業方針、事業計画の指針をThe FUJITSU Wayとして2002年に制定しました。FUJITSUユニバーシティの設立もそのときに掲げた方針に基づくものです。 |
事業戦略と連動させ教育の効果を高める |
――FUJITSUユニバーシティの中で、次世代リーダー育成のプログラムは、どのように位置づけられているのでしょうか。 |
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山村 FUJITSUユニバーシティの研修には3本の柱があり、そのうちのひとつが「ビジネスリーダーの育成」となっています。他のふたつは「プロフェッショナル人材の育成」と、「ベースライン(階層別の教育)の強化」です。 また、FUJITSUユニバーシティで重視したのは、ビジネスと教育の一体化です。事業戦略や人事制度と連動させずに教育を推し進めても、教育の効果はうまく発揮されません。事業戦略にのっとって必要とされる人材像を想定し、戦略や制度に合わせた適切な教育計画を策定することが重要でしょう。 |
――ビジネスリーダー育成の仕組みを教えてください。 |
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山村 FUJITSUユニバーシティの中に人間力学部、ビジネスカレッジ、そしてGKI Leadership Programの 3つの部門を設けています。GKIはGlobal Knowledge Instituteの頭文字を取ったものです。 |
一般教養でリーダーに必要な人間力を育成 |
――順にお聞きしますが、人間力学部とは何を教えるのでしょうか。 |
![]() 山村 人間力学部では哲学や歴史、倫理などの一般教養を教えます。弊社では技術分野の人が全社員の8割を占めていますので、バランスよく総合的に人材を育成するためにこうした科目を設けました。専門的な技術知識だけでなく、それをどう使うかというときに哲学や歴史などの素養が必要です。またリーダーの人間力には、トップとして言い切れる強さが必要だと私たちは考えています。人間的な資質の形成のためにも、一般教養は大切です。人間力学部はリーダー育成プログラムに限定せず階層別の教育でも開講しており、一般教養を重視する文化は弊社の社風の一つといえるでしょう。 ビジネスカレッジはビジネス関連の経営スキルの教育を提供します。ビジネスカレッジもリーダー育成に限定せず、全社に提供しています。 |
――3つ目のGKIは何ですか。 |
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山村 GKIはGlobal Knowledge Instituteの略称で、国内外の外部の人材を活用しながら、グローバルに活躍できるリーダー人材を戦略的に育成していくことを目的に99年に設立されました。またGKIは社員が生み出す知識を集約し社内に知的資産を形成していくことも目指しています。GKI Leadership ProgramにはGKI Advanced CourseとGKI Development Courseの 2つのコースを設けました。 |
2つのコースで人材層を厚くする |
――2つのコースの違いは何でしょうか。 |
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山村 コースの名称にもあるように、育成するリーダーの内容が異なります。GKI Advanced Courseは次世代の経営幹部の育成が目的です。コースの受講者は年間二十数人で、事業部長候補者となる中堅の部長から選びます。受講者の内訳は富士通の国内各社から約15人、海外グループ会社から5人ほどですね。 プログラムは3カ月にわたって開講され、会長の秋草直之が富士通グループの状況や問題点を語り参加者と議論するCEOセッションから始まります。そして、知識創造企業を目指しナレッジリーダーになるための方法論などを学ぶ「コア・プログラム」と、実際の課題の解決に取り組み解決案をマネジメント層に発表する「ビジネス・プラクティス・プログラム」に移行します。なお海外グループ会社からの受講者もいるため、研修はすべて英語で実施しています。 もう一方のGKI Development Courseは次世代のビジネスリーダー候補を選抜し、育成することが狙いです。GKI Advanced Courseの受講者の予備軍を拡充することを目的に、2004年から本格的に運用を開始しました。ビジネスリーダーとしての自覚を促すとともに、リーダーとして必須の知識や能力を身に付けさせることに主眼を置いています。対象は課長クラスで年間40人が受講します。コースは6カ月にわたり、欧米のExecutive MBAプログラムへの派遣を挟んで、受講者一人ひとりが課題テーマを設定し解決に取り組むアクションラーニングを行います。 |
トップが関与し、問題意識と視点を共有する |
――研修プログラムの成果についてはどうでしょうか。 |
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山村 GKI Development Courseは始めたばかりで成果はこれからですが、GKI Advanced Courseについていえば、成果は出ていると思います。会長の秋草がCEOセッションだけでなく、最終発表での議論などにも深くコミットメントしているため、参加者がトップマネジメントと考えを共有し、次世代リーダーとしての視点を持つことができているようです。またプログラムの受講者は国内外のグループ会社から選抜されてきますので、今後の富士通グループを担う人材に必要な、組織横断的なネットワークが構築されつつあります。特にプログラムの修了者が共通の体験をすることで同じ言語や発想法を共有し、彼らのネットワークがグローバルに形成されてきたことは、大きな成果でしょう。実際に研修の修了者が事業部長や役員に登用され始めており、彼らが組織の中枢を担うようになれば、組織全体にも変化が生まれると期待しています。 |
――リーダー育成プログラムは、GKIの 2つのコースのみでしょうか。御社のようなグローバル企業となると、海外向けに研修コースを用意しているのでしょうか。 |
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山村 海外拠点マネジャー教育プログラム(European Leadership Development Program)を、今年 5月から開始します。ELDPは 6カ月間のコースで、欧州各社からミドルマネジャーを 20人程度選抜します。富士通の経営理念、戦略、事業方針を浸透させてガバナンスを強化することを狙っています。また欧州グループ各社間の交流を深めネットワークを形成することも目的としています。こうした海外での教育については、中国やアメリカにも同様のプログラムを展開することを検討しているところです。 |
研修の効果の検証が課題 |
――2002年から取り組んできて、現在の課題は何だとお考えでしょうか。 |
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山村 研修後の状況が正確に把握できていないことが課題だと考えています。先ほど研修の成果は出ていると申しましたが、例えば研修後の配置が適切になされているかについては、きちんと調べられていませんでした。また、研修で提出されたビジネスプランが実行に移されるケースもあるのですが、その後どうなっているのか。もしビジネスプランが実現に至っていなければ、何が問題なのか。こうしたことを把握できていないことが、今の問題だと考えており、現在は状況を調べているところです。 これまではシステムをつくり研修を実施することに力を入れてきたため、研修後のモニタリングをする余裕がなかったことも否めません。しかし研修の効果を把握し、問題があれば研修プログラムを改善させていくためにも、研修後の状況をきちんと把握し、研修の効果を検証していくことが重要になるでしょう。むろん国内のみならず、海外グループの状況についても把握していくことが必要だと考えています。 |
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プロフィール
山村弘(やまむら・ひろし)富士通株式会社 FUJITSUユニバーシティ所長 1969年富士通株式会社入社。営業部門、教育訓練部、富士通経営研修所、米国・ハワイのJAIMS(日米経営科学研究所)、ソフト・サービス部門の人事、事業推進を担当。その後、米国子会社の経営を行った後、2002年よりFUJITSUユニバーシティの所長となり現在に至る。 |
| ◇ 次世代リーダー育成のいま 目次 | |
| 第1回 セイコーエプソン株式会社 | |
| 第2回 アサヒビール株式会社 | |
| 第3回 富士通株式会社 | |
| 番外編 日本マクドナルド株式会社 | |
| 第4回 ソニー株式会社 | |
| (2005年2月4日掲載) | |
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