| Home > SPECIAL THEME > 次世代リーダー育成のいま(第2回)2005年1月 |
| アサヒビール | |
リクルートワークス研究所 |
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次世代の経営を担うリーダー人材の育成。近年各社で大きな課題となっているこのテーマに、リーディング企業はどのように取り組んでいるのだろうか。これから期待されるリーダー人材の役割、それらの人材をどのように育成、処遇しているのか。各社の人材育成責任者にインタビューする。
第2回は、アサヒビール株式会社戦略企画本部 教育研修部 プロデューサー 樋田憲一氏にご登場いただく。次世代リーダーの早期選抜を狙い、2000年からアサヒスーパー塾を実施してきた同社は、2004年から経営者養成塾を新たに開設した。なぜ新たな取り組みを始めたのか、2つの制度の目的や内容の違いはどこにあるのかについて聞いた。 |
| インタビュアー:古野庸一 文、構成:内田美代子 |
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――アサヒスーパー塾はマスコミでも取り上げられるなど注目を浴びてきました。これまでの取り組みを教えてください。
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![]() 樋田 2000年から「アサヒスーパー塾」と銘打って、早期選抜型の人材育成プログラムを実施してきました。そして2004年3月からは、次世代の経営幹部候補の育成を目指した「経営者養成塾」という新たなプログラムを開始したのです。 |
20年前の採用抑制から生じた危機感 |
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――まずはアサヒスーパー塾について、実施の背景を教えてください。 |
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樋田 弊社の歴史をさかのぼると、1980年代に業績が悪化し、85年にはビールのマーケットシェアが 9.6%まで落ち込むような時代がありました。そうした状況の中、採用を極端に絞り、採用を行わない年もあったため、現在 45歳から 50歳ぐらいの年齢層が非常に薄くなっています。この年代は、まさに次の経営を担う層なのに、十分な人材の確保ができていないのです。45歳より下の世代を早く引っ張り上げないと、経営環境の変化についていけないという危機感から、アサヒスーパー塾を開始しました。 アサヒスーパー塾を実施したもう一つの背景は、酒類業界の変化です。それまでは免許制度に守られていましたが、酒販免許制度の緩和や大手小売業による価格破壊が起こるなど、変革の波に襲われるようになりました。こうした変化を読み取り、戦い抜いていける強いリーダーを育成しなければいけないという危機感がありました。 |
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――プログラムはどのような内容ですか。 |
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樋田 アサヒスーパー塾では、36歳から 42歳ぐらいの層を対象にしました。継続的かつ計画的にリーダー予備軍を育成することを目標とし、目指すリーダー像は、組織に変革を起こせるようなチェンジリーダーとしました。1回の受講者は 12人とし、6カ月にわたって経営知識の学習研修と、自社の課題解決にグループで取り組むアクションラーニングを実施しました。 |
社内でうまく認知されなかった制度の目的と意義 |
――アサヒスーパー塾は開始から既に 4年以上たっていますが、どんな課題が出てきたのでしょうか。 |
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樋田 課題はいくつか出てきました。まず選抜の母集団が約 600人と限られていたため、回を重ねるごとに候補者を選ぶのが難しくなりました。また、アサヒスーパー塾のゴールは何か、チェンジリーダーとはどういう人材か、どう育成できるのかといった議論が起きたのですが、そうした問いに対して明確な答えを出すことができませんでした。さらに、アサヒスーパー塾はトップの承認を得て開始しましたが、実際は制度の設計から選抜まで人事部が主導で進めてきたため、実施の目的や意義が社内でうまく認知されないという状況にありました。 |
ビール会社から総合酒類メーカーへの転換を目指す |
――そうした問題点が経営者養成塾を新たに実施することになった理由ですか。 |
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樋田 それらの問題も経営者養成塾を実施することになった理由の一つですが、それ以外にも環境の変化が大きな理由となっています。以前の弊社は全くのビール会社であり、スーパードライという主力製品があって会社の方向性は明確でした。シェアの拡大は利益の拡大を意味し、いかに企業の求心力を高め、突破力を働かせて推し進めるかという経営の手法だったのです。会社の仕組み、生産、営業、調達業務もすべてビールを中心にした仕様でした。 現在は消費者の嗜好の変化もあって、ビール市場にも先細りの影が見えてきており、総合酒類メーカーに転換しようとしています。第2次中期経営計画では、2004年度からの 3年計画を立て、新たに清涼飲料水、ヘルスケア、国際市場に展開していくことを事業戦略として打ち立てました。 ビールメーカーと総合酒類メーカーでは、企業の経営手法も、戦略も異なります。従来のアサヒビールのリーダーには、ある意味では業界トップとしての守りも必要でしたが、これからは変革を起こせる活力ある人材が必要です。また、2006年時点に経営計画を達成した場合、新たに展開していく清涼飲料水やヘルスケア、国際市場での事業に関連する会社が国内外に展開していますので、そのトップたちをつくらなくてはいけません。経営者養成塾の短期的な目標は、2006年までに目標人数の経営幹部候補をつくることです。長期的な目標として、最終的にはアサヒビールグループの経営を担えるような人材を育成したいと思っています。 |
トップが人材を育成するとメッセージを発信 |
――アサヒスーパー塾との違いは、どこにあるのでしょうか。 |
![]() 樋田 経営者養成塾は、企業戦略と環境変化に対応したもので、アサヒスーパー塾の進化型ととらえています。アサヒスーパー塾の経験を踏まえ、経営陣が経営哲学や経験を語るマネジメント・セッションをプログラムに組み込むなど、経営層の参画を深めました。重要なのは、人事部門はあくまでも実行部隊であって、経営者自らが自分たちの後継者をつくる必要があるということを認識し、トップが人材を育成していくのだとメッセージを発信していくことです。また選抜の基準も、アサヒスーパー塾は人事考課などを重視していましたが、経営者養成塾ではコンピテンシー的な評価も取り入れるなど、基準をより明確にして客観性を高めるようにしました。 経営者養成塾では、対象を40歳から 45歳の年齢層としました。第1期を 2004年 3月から開始しており、第1期生は 13人となりました。プログラムの期間は 10カ月間とし、経営に関する講義やケーススタディー、自社の課題に基づくケーススタディーや戦略立案などのグループワークをし、最終的には経営トップに提言します。 |
――ビジネススクールで学ぶような経営スキルの講義には、経営陣は抵抗感がなかったのでしょうか。 |
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樋田 抵抗はなかったですね。逆に自分たちがこれまでに経営知識や専門的なスキルを勉強する機会を十分に得られず、苦労をしているという認識もありますので、経営スキルの分野にもしっかり取り組んでいこうと考えています。 |
――対象の年齢層を上げたのには何か理由があるのですか。 |
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樋田 先ほど申し上げましたように、経営者養成塾の当面の目標は、2006年に事業部のトップとして経営を担える人材を育成することです。従って、現実的に執行役員や取締役に登用できる年齢を考えて年齢層を上げました。 年齢層を上げたのには、もう一つ理由があります。アサヒスーパー塾では、36歳で参加したとしても、例えば 40歳代後半に執行役員になる場合、プログラムに参加してから 10年も経過しています。その間に企業の環境も変化しますし、10年以上にわたって人事部がモニタリングをし、適切な配置をしていくのは現実的に難しいのです。 |
――経営者養成塾の目的は非常に明確になっています。目的達成に向けて、特に留意している点はありますか。 |
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樋田 いくつかありますが、まずはプログラム参加者の計画的な配置(サクセッションプラン)を実行することです。アサヒスーパー塾では、年齢的な要因もあって計画通りに人事異動をすべて実施することはあきらめざるを得ませんでした。リーダー人材の育成のために計画的な配置は不可欠ですので、経営者養成塾ではやりきろうとしています。 |
個々の状況にあわせた配置が人を育てる |
――配置をするときに、必要なポストを用意できるのかという問題はないのでしょうか。 |
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樋田 ポストが用意できるかという懸念は確かにありますが、単にグループ会社のトップを経験させればいいというものではないと考えています。プログラム参加者を個別に見ていけば、一人ひとりのこれまでの経験は異なり、伸ばすべき強みも補うべき弱みも異なります。計画的な配置といったときに、どういった経験をさせるのかについては、個々の状況に応じて策定していくことが大切だと認識しているのです。 配置以外の留意点は、全社的な人材育成の仕組みについてです。プログラムに参加した優秀な人材集団をしっかりと囲い、モニタリングしながら計画的な異動をさせていくことは重要です。一方、プログラムの参加者だけを登用するのではなく、プログラムには参加していないが実力のある人たちを見極め、育成していくことも必要です。プログラム参加者と、参加者以外の優秀な人材の活用のバランスをうまく取り、会社全体の力を高める方法を見つける必要があります。 もう一つの留意点に、弊社の企業文化との関係があります。経営者養成塾は経営幹部候補の育成を目的としています。育成のために何が必要かということを問い詰めていくと、執行役員の登用要件は何か、取締役に必要な能力は何かといった、これまで明確にされていない評価や登用基準を明らかにせざるを得なくなるでしょう。これまでの、ある種家族的な企業文化の中で、選抜式の育成プログラムがうまく機能するかどうか、逆にマイナスに作用しないかということは若干気掛かりです。 |
研修前の選抜と、研修後の配置が要 |
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経営者養成塾は、経営者のサクセッションプラン*の一部であって、いちばん大事なのはサクセッションプラン全体の制度の設計です。研修に何が必要かは、われわれのこれまでの経験からの考えに基づいている部分もあり、プログラムの手法の開発には現在も試行錯誤をしています。だからこそ、経営者養成塾の入り口と出口の部分、つまり入り口である選抜の仕方と、出口にあたる配置の設計と運用をきちんとしておく必要があるでしょう。 *サクセッションプラン:後継者候補の選抜および育成のこと チェンジがチャンスになるという考えがあります。業績が伸びているうちに変革を成し遂げなければ、次の成長はありません。そうした危機感をわがこととして認識し、自分たちに変革を迫れるか、われわれ自身の挑戦がこれから始まります。 |
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プロフィール
樋田憲一(ひだ・のりかず)アサヒビール株式会社戦略企画本部 教育研修部 プロデューサー 1988年、慶應義塾大学法学部卒業。同年、アサヒビール株式会社入社。名古屋支店、本店、首都圏・関信越地区本部の物流部門にて、商品の需給計画、物流効率化などの業務に従事。98年、中国最大のビールメーカー青島ビールとの合弁事業を立ち上げ、中国・広東省/深 |
| ◇ 次世代リーダー育成のいま 目次 | |
| 第1回 セイコーエプソン株式会社 | |
| 第2回 アサヒビール株式会社 | |
| 第3回 富士通株式会社 | |
| 番外編 日本マクドナルド株式会社 | |
| 第4回 ソニー株式会社 | |
| (2005年1月21日掲載) | |
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