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  Home > SPECIAL THEME > 次世代リーダー育成のいま(第1回)2005年1月
 セイコーエプソン
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
次世代リーダー育成のいま(第1回)
セイコーエプソン 人材層の厚さが競争力の源泉に
−人事部人事課長 竹内上人氏
次世代の経営を担うリーダー人材の育成。近年各社で大きな課題となっているこのテーマに、リーディング企業はどのように取り組んでいるのだろうか。これから期待されるリーダー人材の役割、それらの人材をどのように育成、処遇しているのか。各社の人材育成責任者にインタビューする。

第1回は、セイコーエプソン株式会社 人事部人事課長 竹内上人氏にご登場いただく。同社では次々世代のリーダーを育成するプログラムを 2001年から実施してきた。企業の経営陣自らプログラムの設計からかかわり、セイコーエプソンのこれまでと今、そして未来への思いを受講者たちに自分たちの言葉で語り、企業の文化を継承することを試みている。自身もプログラム受講者である竹内氏に、プログラムの成果と問題点について語ってもらった。
インタビュアー:古野庸一
文、構成:内田美代子
――次世代のリーダー育成に取り組むことになった理由は何でしょうか。
竹内氏
竹内 弊社が諏訪精工舎といっていたころは、セイコーブランドの名の下に、時計をきちんとつくっていくことが主な仕事でした。しかし 1985年に、子会社のエプソンと合併し IT分野の事業にも参入したことで事業分野は広がり、マーケティングや独自の技術開発、販路の拡大にも取り組むようになったのです。こうした事業の拡張とそれに伴う組織の成長の中では、新規の事業を立ち上げる機会が多くあり、今の 50歳以上の人たちは 30歳代のときに、新しいことに挑戦する経験をしてきました。しかし、今はそうした場が自然発生的に生まれることはなくなってきています。現在のビジネスはこれまでの経験の蓄積でできても、将来を考えたときに、これからは意図的にリーダー人材を育成していく必要があるとの認識が生まれてきました。
社員に何を伝えていくべきか
竹内 ただ、私たちが注意したのは、会社には変えていいものと、変えてはいけないものがあるということです。創業してから大切に引き継いできた企業文化や行動規範は、変えてはいけないと考えています。変えてはいけないものを見極め、若い社員たちにも伝えていくことは重要です。また経営のトップが、今までどういう価値観で事業を進めてきて、どういう課題があり、これからどうしようとしているのかを社員に語りかけていくことは、企業文化を継承するうえでも大切だという認識に至りました。

そこで、プログラムの設計に当たっては、企業のトップや役員が合宿をし、「次世代リーダーを育成しなければいけない」という認識を持つことから始め、プログラムは何を目的とするのか、研修の内容はどうするのかなどについて意見を出し合い、議論を交わしました。議論をせずに始めれば単なる研修になってしまう恐れがありますので、研修の開始時期も予定より半年遅らせ、徹底的に議論をしたのです。
――その結果、プログラムはどのようなものになりましたか。
竹内 リーダー育成プログラムを2001年から開始しました。次の事業部長や関連会社のトップといった次世代のリーダー育成には既に取り組んでいましたので、このリーダー育成プログラムでは、次々世代のリーダーとなり得るような人材の候補者層を厚くすることを目的にしました。プログラムは6ヵ月で完結し、各期の受講者は25人です。既に5期まで実施しており、現在は6期生が受講しています。
――次々世代のリーダー候補者を選ぶとなると、対象となるのはどのような人ですか。
竹内 課長・部長クラスを対象とし、年齢層でいうと40歳前後になります。弊社で該当するのは2000人ぐらいです。この2000人の中から200人ぐらいを選び、彼らを次の事業部長の候補者層と位置づけました。選抜は毎年行いますので、候補者200人のメンバーには入れ替わりがあります。この200人の中から、各事業部当たり1人を目安に25人をプログラムの受講者として選びました。
リーダーに必要な3つの能力
――どのような基準で選考をしたのですか。
竹内 基本的には事業部長の評価と推薦を受けた者で、最終的には人事で決定しました。選考の基準には数値的なものはなく、弊社が求める人材像に当てはまる人を選びました。求める人材像とは、次の 3つの能力を持つ人です。まず、いろいろな課題がある中で優先順位をつけ、重要なことに力を注げる人。次に周囲の人に影響力を発揮し、周りの人がついていこうとするような人です。そして、決して途中で投げ出さず最後までやり遂げる人。かなり人としての資質に近いものですが、こうした人材を求める企業文化は、もともとありました。これらの能力がリーダーには欠かせない要件であり、このような力を持つ人材を選ぶことを、プログラムの設計の際に経営陣も再確認したのです。
見極めが難しい将来の可能性
――現在の業績や能力を評価することと、これからの成長を見込んで将来の可能性を探ることは視点が異なります。現在優秀な人であっても、将来リーダーになるとは限りません。その違いは見極められているのでしょうか。
竹内 その点は、自信を持って言えないですね。ただ、事業部長には、次々世代のリーダー層を厚くするという趣旨で選ぶようお願いしました。企業や組織には、さまざまなタイプのリーダーが必要で、そのときの環境に合わせて彼らを組み合わせ、最適なマネジメントチームをつくっていくことが重要だと考えます。ある場合では最適でも、異なる局面では別のタイプのリーダーが求められるかもしれません。こうした観点から、弊社の基本思想として、さまざまなタイプのリーダーの「層」を厚くしていこうという方針があります。そしてそのときの状況に応じ、トップが豊富な人材の層から最適なチームを配置していこうということを基本姿勢にしています。
――研修の受講者を選抜することは、社内で公表しているのですか。
竹内 公表しています。プログラムを開始する前は、選抜することに対する抵抗感や、選ばれなかった人のモチベーションを維持できるのかという懸念もありました。ただ、プログラムの趣旨はあくまでもリーダー候補者の層を厚くすることにあります。そのことを説明し、受講者には役職が保証されるわけでもなく、また管理層に進む道はほかにもあることを示しました。
「エプソンを倒産させる方法」を考える
――プログラムではどんなことを行いましたか。
竹内氏
竹内 プログラムの期間は半年間で、パート1 から 6 まであります。パート1 から 5 は、経営理論や経営課題の学習です。外部講師と役員をペアにし、ケーススタディーを用いた講義と、役員が語るセッションを組み合わせました。外部の講師から得られる知識はもちろん必要ですが、役員が自分の言葉で語ることで、今の役員たちが何を問題としているのか、何を考えているのかを伝えるようにしています。

パート6 はテーマ実践期として、セイコーエプソンの経営課題に基づいてテーマを設定しグループワークを行います。テーマを設定する前に、経営企画部長や事業戦略部長が弊社の今の課題を語りますので、グループワークはかなり実際的な視点を取り入れたものになっています。テーマは、例えば「他社がエプソンを倒産させる方法」といったものから「中国市場に向けたソリューションビジネス」などがありました。このパート6 では、個人の 360度評価と組織分析を行い、自分自身と組織の状態や、強みや弱みについてかなり詳細に分析をします。
*プログラムの概要図はこちら
150人が共通言語を持つようになる
――既に5期まで終了しているとのことですが、修了者は現在どんな状況にいるのでしょうか。
竹内 125人の修了者全員をモニタリングしていますが、実際に、昇格年齢が平均よりも若くなっています。副事業部長や海外の関係会社の社長になった人もいます。ただ、このプログラムを通じて選抜された 150人が経営的な視点を持つことができ、同じ研修を受けることで共通のロジックや言語を持てたことが、このプログラムの大きな成果だと個人的には考えています。そうした共通言語を持つ人が 150人もいると、「○○先生の▲▲」など、同じ言葉を使って議論できるようになるのです。
――モニタリングをしていて問題と思うことはありますか。
竹内 修了者には、研修で学んだことを実践したり、組織のトップとなる前にいろいろな経験ができるような場を提供したいと思いますが、そうした人事異動や最適な配置をしていくのは難しいですね。
生まれてきた3つのタイプのリーダー
竹内 修了者たちを見ると、おおむね 3つのタイプに分けられるのではないかと考えています。第1 に、将来経営層の一員に加わっていく層の人材です。第2 に、専門職能として能力を発揮する職能のリーダーとなる人たち。第3 が社内の全体的な場というよりは、職場の中でリーダーシップを発揮する職場のリーダーです。リーダー育成プログラムは、第1 のタイプの人材層を念頭に置いていましたが、議論を重ねる中で、私たち自身もいろいろな階層で、リーダーシップを発揮してさまざまな役割を担っていける人材層を厚くすることが、企業の競争力の源泉になるという認識を持つようになり、結果的にはさまざまな層が生まれるようになりました。
――さまざまなタイプの人材がそろったとのことですが、リーダーとマネジャーの違いについてはどう考えられますか。
竹内 弊社の場合、リーダーはまさに先ほど申し上げた3つの必要な資質を備えた人です。つまり、ビジョンを提示してそのために必要なことを示す、そして「絶対これは大丈夫だ」と言って周囲の人を巻き込みながら、やり遂げる力を持っている人です。一方マネジャーは、基本的には進むべき道が既に用意されているところで、その過程の段階ごとに必要な業務を遂行し、着実に一歩一歩進んでいける人です。リーダーとマネジャーの仕事に違いはありますが、組織には両者が必要でしょう。またマネジャーにもリーダー的な資質が求められる場面もあるはずです。リーダーシップとマネジメントは車の両輪のような関係にあると思います。現場でマネジメントが機能していてこそ、リーダーシップはその力を発揮できるのではないでしょうか。

今後は弊社にとって必要な人材像を明確にし、どう組織としての力を高めていくのか、そこから議論を始める必要があると考えています。
プロフィール
竹内上人(たけうち・かみひと)
セイコーエプソン株式会社 人事部 人事課長
1986年セイコーエプソン入社。関系会社人事・総務部門、本社人事部門、電子デバイスの営業部門に勤務。その後退職し、LSIロジック株式会社およびトランスコスモス株式会社の人事部門を経て、2000年に再びセイコーエプソンに入社。以後、人材育成部門を経て、現在は人事部で人事を担当する。
◇ 次世代リーダー育成のいま 目次
第1回 セイコーエプソン株式会社
第2回 アサヒビール株式会社
第3回 富士通株式会社
番外編 日本マクドナルド株式会社
第4回 ソニー株式会社
(2005年1月7日掲載)

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