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  Home > SPECIAL THEME > 人を活かす高年齢期就業へのヒント 2006年11月
 人を活かす高年齢期就業へのヒント
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リクルートワークス研究所
人を活かす高年齢期就業へのヒント
第二回 パート1 65歳まで緊張感をもって働ける仕組み 〜住友スリーエムの場合
今年6月の厚生労働省の調査では、60歳より高い年齢に定年年齢を引上げた企業は6.3%に過ぎない。9割以上の企業が定年年齢を60歳とするなか、40年以上前から65歳定年を導入しているのが、住友スリーエムである。パート1では65歳定年制を機能させる仕組みと課題について、パート2では一つの具体例として、まもなく65歳定年を迎える社員の方に同社での職業人生を振り返ってもらった。
文:ワークス研究所 笠井恵美 編集:五嶋正風
>> 第2回 パート2
65歳定年は、空気のような存在
「私が入社したときには、もう65歳定年でした。現在の社員にとっては空気のような存在なのかもしれません」65歳定年について、住友スリーエム人事支援部部長の渋谷和久氏はこう話し始めた。

住友スリーエム人事支援部部長
渋谷和久氏住友スリーエムは、1960年、米国のスリーエム社と住友電気工業、日本電気の合弁で設立された。現在は、接着剤、断熱材、フッ素化学製品といった産業関連製品から、電気・電子、自動車、建築、そして、身近な文具や家庭用品を含む生活関連商品まで、広く事業を展開している。同社のほかスリーエムヘルスケアなど関連会社を含めたグループの2005年度の売上高は2469億円、従業員数は2874名(2005年12月末日)にのぼる。

「会社設立当時の男性の定年は60歳、女性は55歳でした。その後、設立から 4年目、1964年9月16日に65歳定年を制度化しました。当時は55歳定年が一般的な時代です。そんななか65歳定年を決めたきっかけは、年金制度にあります。ちょうど前年の1963年から新卒の採用を始め、そこで年金制度をつくろうとなったわけですが、その時点で入社 5年を経過している人もいました。本来であればその人の 5年分を積み立てる必要がある。定年年齢を伸ばしたほうが、積立不足金額がすくなくて済むということから、定年年齢を65歳としました。加えて、米国のスリーエム社の当時の定年が65歳でしたので、グローバルでもその年齢にあわせるということで65歳となったわけです。ただし、女性の定年については、1985年に57歳、男女雇用機会均等法施行の1987年に男性と同じ65歳定年を導入しました」

高年齢者雇用が喫緊の課題となる現状において、60歳定年を境に給与の額が下がる制度をとる企業と比べると、65歳まで実績に応じて給与が決まる同社は、社員にとっては働きがいのある環境なのではないかと渋谷氏はみている。しかし、社員側はといえば、65歳定年は導入から30年以上経った"空気のような存在"だということもあり、全ての社員がそのよさを実感しながら働いているというわけでもないという。

年功から実力主義へ
65歳定年制度の発端は創立当初の事情とはいえ、その運用が軌道にのっている理由は2つある。ひとつが、年功序列を廃した実力主義の給与制度だ。住友スリーエムは、職務責任の変更にともなって給与が決まる職務等級制度を、1993年に管理職に、2003年に一般社員に導入、実力主義の方向へと転換をはかった。その結果、年齢給が廃止され同じ年齢であっても担当する職務が異なれば給与の額が大きく異なるといった、年齢と全く相関しない給与形態が出来上がり、担当する職務にもとづいてのみ給与が支払われるようになった。組織もフラット化され、現在、管理職は800人程度。その内訳は部長職以上が約300名、あとはすべてマネジャーである。マネジャーのうち約45%が部下を持たない担当マネジャーである。この人事制度の改革により、65歳まで常に、職務と成果に応じて給与が支払われる働きがいのある風土ができあがった。

そんななか課題とされているのは役職定年制である。「部長職は58歳、事業部長・統轄部長は60歳を役職定年としています。この役職定年制度を将来的には見直したいと考え、今、慎重に議論を進めています」(渋谷氏)。役職定年制は96年に導入されたが、「米国のスリーエム社は年齢で差別をせず、若くても優秀であれば登用するし、年齢が高いことだけを理由に役職を外すということをしないのが基本方針。ですから、役職に年齢定年を設けるこの制度は見直したい。その一方で、役職定年制には、組織の健全性維持について一定の効果もある。離職率が2%と定着率が高いなか、トップが変わることで意識もかわり、組織がリフレッシュする。一定の機能も認識しつつ、役職定年制をどのように見直していくべきか、慎重に議論しているところです」

高年齢者も実務の最前線へ
65歳定年運用にあたってのもうひとつの鍵は、中だるみを阻止しモチベーションをもてる仕事への配属である。「一般的に役職定年制度において、『役職を降りたら、あとはもうのんびりできるかな』という受け止められ方が時々見受けられますが、当社で働く以上、年齢に関係なく仕事を進めていただきたい、ホッとしないで、役職がなくなっても新しい仕事で貢献していただきたいと考えています」(渋谷氏)。

では、具体的に、住友スリーエムでは、高年齢者の活用をどう考えているのだろうか。
役職定年後の仕事の例には、次のようなケースがあるという。業界内の長年の経験をベースにした企業トップへのコンタクトが可能な人材がいる。同社の製品は多岐にわたり、顧客にまだ紹介できていない製品が、課題解決につながることも多々ある。そこでそうしたトップコンタクトが可能な人材が製品の展示会を発案・企画して実行する。

庶務部門の部長だった人はかつての営業経験を生かし、顧客と直接やりとりするような仕事を希望。発足から 2年目のコールセンターでお客様からの相談対応を担当し。活躍しているケースもある。

「当社としてはその方の力量を活かせる仕事を提供するよう考えています。やはり、"年齢が高くなったから、後進の指導や相談役"ではなく、ご自身の足で稼ぐような仕事です。フットワークよく動いていただくことを求めています。もちろん、後進の育成も重要な仕事ですが、弊社の場合も他社と同様に団塊の世代の層が厚いので、全員が相談役になっては大変です」(渋谷氏)

仕事は会社から与えられるだけではなく、自分から考えることもできるものだ。ある年齢層以上になった、1つの部門で仕事を続けてきたといったことから、守りに入って新たに仕事の幅を広げようとしない人もいると渋谷氏は指摘する。社員同士が楽しく理解しあい、自律して仕事ができるようにしていく働きかけを強めているといい、「ジョブインフォメーション制度」呼ばれる社内公募制度、「カルチャー9(ナイン)」という、企業文化を変革し、根付かせていく活動を通じた自己申告制度、評価面接で自分のキャリアをより意思表示できるような評価面接の進め方・受け方の集合研修形式による訓練などを進めている。
(2006年11月20日掲載)
>> 第2回 パート2

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