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  Home > SPECIAL THEME > 雇われない働き方とは 2003年11月
 雇われない働き方とは?『フリーエージェント社会の到来』著者インタビュー
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
雇われない働き方とは?
米国にみる企業とフリーエージェントの新たな関係
ダニエル・ピンク氏フリーエージェント社会の到来』著者
ダニエル・ピンク氏インタビュー
企業に属さず、自らの力で事業や人生のかじを握る働き方、フリーエージェント。米国では労働人口の 4分の1、3300 万人がこの働き方を選択しているという。1 年かけて全米を旅し、多くのフリーエージェントに出会ってその働き方の詳細を初めて明らかにしたダニエル・ピンク氏の『フリーエージェント社会の到来』は、昨年日本でも翻訳出版され大きな話題となった。さて、大きな勢力となったフリーエージェントに対し、米国企業はどう対応しているのだろうか? 例えばフリーエージェントと企業の受発注を容易にするようなマッチング・サービスが、ここ数年急増しているという。今回、フォーラムの基調講演のため初めて日本を訪れたダニエル・ピンク氏に、企業とフリーエージェントの新たな関係について話を聞いた。
インタビュアー ワークス研究所 笠井恵美 編集 五嶋正風
※『フリーエージェント社会の到来〜「雇われない生き方」は何を変えるか』の概要はこちら
――『フリーエージェント社会の到来』の中で、カリフォルニア州で働く 3人に 1人は雇用という労働形態をとっていないと、ピンクさんは指摘されています。ピンクさんがいうように、カリフォルニアがアメリカの未来を先取りする州だとするなら、米国の 4分の1 を占めるフリーエージェントの数は今後ますます増えていくでしょう。このような状態に対し、企業側の人材マネジメントはどう対応しているのでしょうか。
これまでのところ、企業の対応は非常に複雑です。一部の会社では正社員を減らすことでコストが減らせますから、その分柔軟性が高まるということでこの傾向を歓迎し、メリットがあると考えている企業もあります。別のより賢い企業は、その仕事に本当に合う、高い才能を持つ人を集めてチームをつくる手法が最もよいと考えています。その場合、その人たちが社内であっても社外であっても、その混合であっても構わないと考えています。
能力ある人が容易に離れるのは悩みの種
フリーエージェント化の流れで歓迎できない点としては、企業が引き留めたい非常に優れた能力を持つ人が、容易に企業を離れてしまうことが挙げられます。その人の能力に対し、ほかに仕事のニーズがあれば、その企業に必ずしもとどまろうとしません。そういった人たちは、会社がその人たちを必要とするほど、その会社を必要としていないという状況になっています。非常に優れた能力を持った人たちは、ほかにも仕事があるので、その会社にはこだわらないのです。ベストな人たちを引き留めておいて、自分たちがその人たちの能力を活用したいときにどう備えるのか。自由に働く人たちの自主性が今、企業の悩みの種になってきました。
――日本では、特に大手の企業は個人に業務委託しないのではないかという人もいます。業務の遂行能力とは別に、情報漏洩のリスクや、外の人に任せて社内に知識が蓄積されないリスクが指摘されているのですが、それについてはどうお考えですか。
情報漏洩、情報管理は確かに重要な点だと思います。非常に大きな問題になりかねないのですが、これは契約に NDA(Non-Disclosure Agreement)と呼ばれる情報非開示の条項を盛り込み、情報漏洩を防止することで逃れられる問題でしょう。 NDA を結ぶという点では、個人と契約する場合でも、非常に有名なコンサルティング会社に仕事を外注するときも同じです。情報漏洩への対応は個人だけに限ったことではないと思います。
「知識は個人に属する」という新たな常識
ダニエル・ピンク氏2 つめの知識、ナレッジが蓄積されないという問題ですが、これは企業側にとって新しく出てきた常識です。専門知識は会社に属するものではなく、本来個人に所有権があるという常識を受け入れるべきだと思います。プロジェクトで契約をするということは、そのとき必要な専門知識を、そのときだけ借りる、そのことにお金を払うという考え方に、今後企業は慣れなければならないと考えています。

企業が提供している専門知識は個人に属している。仕事が終われば、毎晩その人と共にオフィスから出て行ってしまう。この状況は、専門的なサービスを提供する会社ならどこも同じでしょう。
――米国の企業はこのような新しい潮流、労働の変化を先取りするような人材マネジメントが、できているのでしょうか。
なかなかいい質問ですね。少ないながら、2、3 のアメリカ企業で、イン・ハウス・エージェンシーと呼ばれるチームを社内に抱えている例があります。市場における仲介機関のような機能をするチームですが、外部ではなく、社内にあるチームで、外部のヒューマンリソースとの関係をきちんと保つという役割を果たす。たとえば、以前その会社に勤めていたが、もう引退した人とのネットワークを維持するなどです。
社内から社外へ、人事の役割も変化
企業の中で人事の役割が変わってきていると思います。ある会社では、従来の既存の社員の付加給付や給料の管理から、社外の優れた能力を持つ人たちを探す部署へと、役割が変わってきました。社外の才能を持った人とよいネットワークを構築し、維持する。その人たちがあるプロジェクトに必要な場合は必ず確保できるようにする。そういう戦略的な役割を、人事部が新しく持つようになってきたのです。

新たに社外で人を探そうとするとコストがかかったり非効率であったりという問題が起こりますが、人事部が新たな役割を果たすことで、そのような問題を避けられるわけです。
――どの企業、どのような業界が、そういった動きを始めているのですか。
例えば、マンセントという企業があります。バイオテクノロジー、化学、農業関連の大企業です。そこではインハウス・テンプ・エージェンシーが、プロジェクトに合わせて才能、技術を持った科学者を主に集めています。元マンセントの社員で、既に引退している人とのネットワークを持ち、そこから必要に合わせて人を呼ぶという役割を果たしているのです。

広告業界でもそういう取り組みが始まっています。ただ、そういったことはまだ一般的ではなく、実践している会社はごく少数です。しかし、この人事機能の変化は、今後の戦略的な人事の方向性を示す前兆ではないかと考えています。
木材、水、石油と同じ資源でいいのか
ダニエル・ピンク氏人事部の役割はこれまで官僚的、事務的で、管理が中心でした。英語の human resource という言葉自体も私はあまり好きではない。そもそも最初、英語では人事を personnel と呼んでいました。それがちょっと良くなって human resource となったのですが、human resource も、"人"に対して使うのは適切ではないと思います。

例えば木材、水、石油、こういったものはリソース、資源です。同じ資源でも、木材と人はどう違うのか。人には自主性、自立性があり、心があって、脳があって、魂がありますよね。それを木材などと同じ"リソース"と呼んではいけない。human asset という言葉も出てきていますが、アセットはもっと悪いいい方だと思います。適切なのは英語でいう Talent。適性、能力を持っている。そこが一番大事です。どういう特性を持ち、どんな仕事ができるのかが大事なのです。
日米、似通った状況が起こっている
――最後に、今回初めて来日されて、日本の独立事業者のブレーンミーティングに参加されたわけですが、米国と日本のフリーエージェント化の状況に違いは感じられましたか。
ミーティングを終えての感想は、日本でも、アメリカと非常に似た状況が起こっていると理解しました。独立事業者のブレーンミーティングの中で、私が、コンフェデレーションというフリーエージェントの同盟で信用をつくるという話をしたとき、パネリストの秋山さんが、自らそのような行動をとったことがあると指摘されましたし、その他の方の事例も、アメリカの状況と関連づけられるものがあり、非常に興味深く感じました。
プロフィール ダニエル・ピンク氏

1964 年生まれ。米国ノースウエスタン大学卒業、エール大学ロースクールで法学博士号(J.D.)取得。米上院議員の経済政策担当補佐官を務めた後、クリントン政権下でロバート・ライシュ労働長官の補佐官兼スピーチライター、1995 年から 97 年までゴア副大統領の首席スピーチライター。フリーエージェント宣言後、ファストカンパニー誌やニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙をはじめとするさまざまなメディアにビジネス、経済、社会、テクノロジーに関する記事や論文を執筆。ワシントン D.C.在住。
(2003年11月27日掲載)

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