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 よき人材マネジメントは高業績に通ず 人材マネジメント調査「ここがポイント」
ワークス博士に聞く 人材マネジメント調査「ここがポイント」 Works Institute
リクルートワークス研究所
よき人材マネジメントは高業績に通ず
ワークス博士が最近世に問うた研究成果のひとつ、「人材マネジメント調査2003」。かつての教え子で、今はX社の人事マンとして働くR君がそのポイントを聞く講義の最終回である。
ワークス博士
いよいよ「人材マネジメント調査」に関する講義の最終回になる。今回は趣向を変えて、まず私からR君へ質問しよう。君は優れた人事制度を導入すれば、企業の業績が高まると思うかね。
R君
う〜ん、そうともいえないでしょう。企業の業種や戦略によって、人事制度の中身が変わってくるでしょうし、第一、そんな単純な理論が成り立つなら、人事の苦労はほとんどなくなりますよ。
そうだな。組織は一種の複雑系であり、一筋縄ではいかない部分が大きいからな。とはいうものの、人事施策と企業業績の間には何らかの因果関係があると考えるのは自然じゃあないかな。
そこで、私はこんな仮説を考えてみた(図表5-1「事業戦略と業績向上を結びつける人材マネジメント」)。適切な人材マネジメントを実行し、現場での知識創造を促進させる。これによって、その企業の競争優位や顧客との関係強化に役立つ知的資本が充実し、それが業績向上にも結びつくのではないかと。もちろん、この時の人材マネジメントのあり方はその企業の戦略によって異なるのはいうまでもない。
いかにも研究者的発想ですね、ワークス博士。ちょっと綱渡りな感もありますが(笑)。
図表5-1 事業戦略と業績向上を結びつける人材マネジメント
混沌とした人事の世界に理論とデータを持ち込む
ワークス博士
大胆な仮説であることは私も重々承知しておる。でもこういう形で人材マネジメントのモデル構築をやらないと、いつまでたっても人事のあり方が変わらないのではないかと思っているんだ。人は単なるコスト要因ではなく、利益を生み出す源だという認識は、人事ならほとんどの人が同意するはずだ。今はまだブラックボックス化していてよく分からないから、人材マネジメントと業績の関係を明るみに出そうというもくろみもある。
R君
業績が下がると能力開発予算などは真っ先に減らされがちですが、こういうモデルが描けるなら、逆に予算をもっと投下しなければならない状況もありうるということですね。
そうだ。もうひとつ、これも無謀といわれかねないが、関連して、各企業の人材マネジメントのあり方を数値で表してみた。人事の世界をデータ化して語るのはとても困難なことなのだが、自社のあり方を見つめ直すきっかけになればと考えたのだ。
人材マネジメントに関するアセスメントツールでもあるということですね。
われわれは調査結果をもとに人材マネジメントの中身を評価する 7つの指標を設定した。D1「期待成果の明確化」、D2「立体的な評価」、D3「一貫した人材育成」、D4「採用と教育の一貫性」、D5「個人の自律性の尊重」、D6「知識創造活動の支援」、D7「多様な人材の活用」だ。
複数の質問でそれぞれを判定したわけですね。D2「立体的な評価」が分かりにくいのですが。
評価方法や評価の視点が多面的で公開され、内容の本人へのフィードバックもしっかりしていること、そういう評価システムをもって「立体的」という言葉を使ったんだ。こういう評価システムこそ、本人の自覚を促し、組織の活性化を生むからだ。
さて、この 7つの指標が相互に影響を及ぼしながら、どう業績に結び付いているかを分析してみたのだが、その結果が図表5-2(「HRMモデルの全体像」)だ。
図表5-2 HRMモデルの全体像
まずは「期待成果の明確化」からはじまる
R君
この図を説明していただけますか。
ワークス博士
ポイントがいくつかあって、まずD1からD4の位置づけは人事にとっては当たり前のことかもしれない。D2「立体的な評価」、D3「一貫した人材育成」、D4「採用と教育の一貫性」はセットで考えるべきことだ。面白いのは、D7「多様な人材の活用」が事業戦略から影響を受け、D1「期待成果の明確化」に働きかけていることだ。
まず正社員に限らず、どんな人材が必要かを明らかにし、それに従って、採用においては求める人物像、能力開発においては求められる能力やスキルを明確に設定することが必要というわけですね。
そうだ。次に注目するべきは、D6「知識創造活動の支援」だ。これは必ずしも人事が管轄する業務ではなく、現場の自主性に委ねられるものかもしれない。要は、知識創造を可能にするような「場」の設定、従業員間のコミュニケーションを活発化するような仕掛けをいう。
採用や評価、能力開発などに比べて、人事施策へ具体化しにくいものですね。でもそれがとても重要な働きを果たすのはその通りだと思います。
この D6 に影響を及ぼす D5「個人の自律性の尊重」に注目してもらいたい。上からの指示に従って仕事をこなしていれば大過なく仕事が回った時代はとうに終わり、個人の自律性をどう引き出すかが人材マネジメント成功の鍵を握っている。これがないと知識創造がうまく働かなくなるわけで、そういう意味では、化学反応(=知識創造活動)の促進剤として働く触媒のようなものといえる。
D5→D6という図式が大切なのであって、他の指標に D5「個人の自立性の尊重」が利いても益なしということですね。
人材マネジメントと企業業績との深い関係
ワークス博士
その通りだ。企業はチームプレーが基本だから、個人の自律性が闇雲に尊重されても業績にはつながらない。かえってマイナスになるというデータも出ているんだ。
さらに、今回の調査サンプルにおける高業績企業群と低業績企業群とを比較したのが図表5-3「業績の差による指標スコアの違い」だ。この場合の業績とは売上高伸び率を使い、その値が平均値以上のグループ、平均値以下のグループで、各指標の平均得点を見たものだ。
図表5-3 業績の差による指標スコアの違い
R君
どの指標でも高業績企業の方が圧倒的に高いスコアですね。特に、D3「一貫した人材育成」、D7「多様な人材の活用」が高くなっています。
この結果で、人材マネジメントがうまくなされることが業績に好影響を与えるという仮説はある程度証明されたと思う。
そうですね。
「人材マネジメント調査」をもとにした短期集中講義はこれで終了する。全5回にわたり、「人材マネジメント調査」のポイントを解説してきた。もっと詳しく知るには報告書に目を通してほしい。今回のHRM理論と調査のさらなる精度向上が、私に残された宿題だ。人事が自社の具体的施策を考える際に、この調査の結果や得られた知見が活用されることを心の底から願っている。
ぜひそうします。ワークス博士、ありがとうございました。
(文:荻野進介 構成:五嶋正風)
人材マネジメント調査2003の詳細な報告書はこちら
これからの人材マネジメントのあり方を模索し、将来像の提案に資する基礎調査として 2001年から実施し、今回が 2回目。調査対象は。全国の企業 2万社の人事責任者、担当者。回収数は 1168社(回収率 5.8%)。調査時期は 2003年 6月 2日〜 7月 31日。
◇ 人材マネジメント調査「ここがポイント」 目次
その1 それでも軽視できない「新卒採用の意味」
その2 若手社員は期待通り育っているのか
その3 「雇用の多様化」は進んでいるか
その4 効果は測られているか 能力開発
最終回 よき人材マネジメントは高業績に通ず
(2004年 8月 27日掲載)

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