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 若手社員は期待通り育っているのか 人材マネジメント調査「ここがポイント」
ワークス博士に聞く 人材マネジメント調査「ここがポイント」 Works Institute
リクルートワークス研究所
その2 若手社員は期待通り育っているのか
ワークス博士が最近世に問うた研究成果のひとつ、「人材マネジメント調査 2003」。かつての教え子で、今はX社の人事マンとして働くR君がそのポイントを聞く講義の第2回目である。テーマは「若手社員の育成」
R君
こんにちは、ワークス博士。今日は若手社員の育成の問題ですよね。最近、うちの会社でも、若手に覇気がない、仕事へのモチベーションが低いと、いろんな声が現場から上がっていて、人事としても困っているところなんです。
ワークス博士
いつの時代も若者は、年長者からは頼りなく見えるものだが、そうとばかりもいっていられない事情があるようだな。前回も見せたものだが、まずこの表に注目してほしい(図表2-1 人材マネジメント部門が認識している企業課題」)。「若手社員の早期戦力化」は 2番目に重要な人事課題と認識されておる。
図表2-1 人材マネジメント部門が認識している企業課題
(クリックで拡大)
若手の教育・育成に力を入れる余裕がなくなり、即戦力となる人材を求める傾向がますます高まっていますからね。この場合の若手とはどのくらいの経験を指すのでしょうか。
大学を卒業して新卒で入社後、 3〜5年程度までの人材だ。年齢でいうと、23から 26歳くらいの社員を想定している。ひとりで仕事を完結でき、重要な戦力となっていることが望まれるが、果たしてうまくいっているのかを調べようと思ったんだ。
若手が未成長、しかも元気がない
R君
結果はどうだったんですか。
ワークス博士
図表2-2「若手の能力・態度に対する満足度」を見てほしい。自社の若手に対する満足度を 5段階評価で回答したものだが、「満足している」企業はわずか 1割にすぎず、これに「やや満足している」企業を加えても、過半数に達していない。しかも、3割以上の企業が「どちらともいえない」と回答している。
図表2-2 若手の能力・態度に対する満足度
若手に対する評価は、誰が回答するかによって違ってきますし、なかなか難しい問題ですね。
しかも、若手の能力や態度に満足していると答えた企業の多くは、「新卒採用の満足=若手に対する満足」と答える傾向が強く、どうも、入社後の能力開発で若手が育ったという認識ではないようなのだ。
若手のどんな点が不満なのでしょうか。
それがわかるのが図表2-3「若手の能力・態度における課題」だ。「成長する者、しない者の差が激しい」「課題設定、目標設定ができない」「元気がない」……。規模別では従業員 1万人以上の大企業では「仕事の全容・意味付けが見えていない」の割合が高くなっており、反対に 300人未満の中小企業では「成長する者、成長しない者の差が激しい」の割合が高い。大企業では任せられる仕事の範囲が限られているのに対し、小さな企業になればなるほど、任される仕事の範囲が広くなる。第一、若手が少ないから、その能力差もすぐ分かるというわけだろう。
図表2-3 若手の能力・態度における課題
(クリックで拡大)
仕事の範囲や役割の違いも、若手の能力や態度に対する評価に影響するということですね。
「プログラム化されていない OJT」で若手は育つか
ワークス博士
R君のいう通りだ。次に、若手向けにどんな能力開発がなされているか調べてみた(図表2-4「若手の独り立ちに向けて実施している能力開発施策」)。これを見る限りでは、伝統的な能力開発の施策がとられている。現在は未実施だが、今後実施する予定がある施策も聞いた(「若手の独り立ちに向けて実施する予定の能力開発施策」)。こっちは前述の調査とは対照的に、1位の「配置転換や育成を意図したジョブローテーション」をはじめ、現在の実施率が低い施策が上位に来ている。
図表2-4 若手の独り立ちに向けて実施している能力開発施策
(クリックで拡大)
R君
そうですね。
実は、「若手と新人、それぞれに対する能力開発の仕組みは一律ではない。若手の能力開発は実際の仕事を通じて能力向上を図る、いわゆる OJTが中心ではないか」という仮説を考えていたのだが、この正しさが証明された(図表2-5「新人若手に対する能力開発の仕組み」)。新人は「会社主催の一律型 off-JT」が 1位に来ているが、若手に関しては、「プログラム化されていない OJT」がトップだ。
図表2-5 新人若手に対する能力開発の仕組み
(クリックで拡大)
プログラム化されていない OJTとは?
内容や指導方法、時期など、しかるべき指示が事前にあるわけでもなく、年齢が近い先輩が、若手と一緒に仕事をこなしていくうえで、適宜指導や助言をする形といったらいいかな。
結局、それが主流なのはすごくよく分かります。
しかし、こういう OJTは指導が場当たり的になる危険性をはらんでいる。しかも、指導役自身の仕事が立て込んだりなどしたら後回しにされるケースも多い。別の設問で、 6割以上の企業が「 OJTに携わる指導者の質に課題あり」と答えており、これらをあわせて考えれば、若手の能力開発はうまくいっていないということだろうね。
X社もそうですね。怖いのは、若手相手のみならず、すべての階層で OJTがうまく働かなくなることです。
そのあたりの現実を企業の教育担当部門は真摯に受け止める必要がありそうだ。OJTは能力開発の根幹をなすものだからな。
長期的視点と、個々との対話と
R君
今説明していただいた調査結果から、どんな教訓が引き出せますか。
ワークス博士
図表2-6「現状の能力開発予算の配分」を見てほしい。中堅→管理職→新人→若手→経営層という順番で総予算が割り振られていることが分かるだろう。これを見て、私は若手への投資額が人数の多さに比べて少ないのではないかという危惧を抱いた。能力開発は短期で成果が得られにくいものだから、低成長時代の今、少ない予算でやり繰りするしかないというのはよくわかる。だが、そんななかでも長期で人を育てる視点をなくしてはいけないと思うね。
図表2-6 現状の能力開発予算の配分
頭が痛い問題ですね。
もうひとつは採用と能力開発のつながりを重視するということだ。
採用内定者から新人、若手と一貫性のある能力開発が必要ということですね。
おっしゃる通りだ。最後に付け加えたいのが「対話の重要性」ということ。若手をひとくくりの集団でとらえるのではなく、個性や能力、キャリアの問題と、それぞれ千差万別な個々の人材とみなすことが大切だと思う。対話によって、それぞれの個性を把握し、対話によって、仕事の動機づけを図る。上に立つ者には、ある種のカウンセリング能力が大切になるということだね。
今回は少し耳の痛いお話が続きましたが、博士、ありがとうございました。
次回は「雇用の多様化」の話をしよう。
(文:荻野進介 構成:五嶋正風)
人材マネジメント調査2003の詳細な報告書はこちら
これからの人材マネジメントのあり方を模索し、将来像の提案に資する基礎調査として 2001年から実施し、今回が 2回目。調査対象は。全国の企業 2万社の人事責任者、担当者。回収数は 1168社(回収率 5.8%)。調査時期は 2003年 6月 2日〜 7月 31日。
◇ 人材マネジメント調査「ここがポイント」 目次
その1 それでも軽視できない「新卒採用の意味」
その2 若手社員は期待通り育っているのか
その3 「雇用の多様化」は進んでいるか
その4 効果は測られているか 能力開発
最終回 よき人材マネジメントは高業績に通ず
(2004年6月25日掲載)

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