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  Home > SPECIAL THEME > 「成長の危機」Webサイト特別編 後編(3) 2005年9月
 「成長の危機」Webサイト特別編 後編(3)
SPECIAL THEME Works Institute
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「成長の危機」Webサイト特別編
ハプンスタンス・アプローチと成長の危機
後編(3) 個性派社長2人のハプンスタンスin沖縄 Wrap-Up
「予期せぬ出来事を積極的、肯定的にとらえる」−−米スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が提唱するハプンスタンス・アプローチは、組織と個人の「成長の危機」克服にも大きな示唆を与えてくれる。このWebサイト特別編では、まず前編として慶応義塾大学SFC研究所キャリアリソースラボラトリーのシンポジウム「ハプンスタンス・アプローチの最新動向」(6月28日、慶応義塾大学三田キャンパスで開催)における、クランボルツ教授の講演をレポートする。続いて後編では、ハプンスタンス・アプローチの生きた事例として、沖縄で事業を展開する個性派社長お2人の物語と、高橋俊介・慶大大学院教授によるまとめ(Wrap−Up)をお送りする。
- 目次 -
 前編 提唱者クランボルツ教授の講演レポート
 後編 個性派社長2人のハプンスタンスin沖縄
 (1) 竹田誠さん(マコト・オリジナル・グッズ社長)
 (2) 三上伸司さん(ブルーム社長)
 (3) 高橋俊介先生のWrap-Up
立ち止まらず、行動で次の展開を呼び込む
沖縄に「適応すれども同化せず」の2人
高橋俊介(慶応義塾大学大学院教授)
高橋俊介氏
意識せずにハプンスタンス・アプローチを実践しながら、これまでの人生を歩んできた、沖縄の 2人の社長のケースを解説したい。竹田さん、三上さんともに予期せぬ出来事に遭遇しながらも、結果的にそこから好ましい展開を引き出している。人や出来事との「出あい」を糧として、困難な状況を打破することに成功してきたのだ。クランボルツ教授はハプンスタンス・アプローチに欠かせない要素として、積極的な行動や柔軟な考え方を挙げている。2人の社長はこうした行動特性も持ち合わせていた。

竹田さんの場合、人との「出会い」が好機をもたらし、キャリアを展開させることができた。久米島で全日空ホテルの担当課長と出会って、ホテル内で商売を始めるきっかけをつかみ、国際通りでは、ビジネス・パートナーとなる地元のコネを持つ人物と知り合って開店にこぎ着けた。行き詰まった状況を打破するのは、いつも人との出会いであった。
沖縄で気付いた「ワーク・ライフのバランス」
三上さんの場合は、試練をきっかけに、自ら探し求めた出あいや学びによって成長している。岡山で美容院の経営者として経営危機に直面したときには、「経営理念を突き詰める」ということに出あった。窮地を脱するとともに、自らの持つテーマも「人に喜んでもらうのが好き」から「環境を意識したサービス」へと発展させた。多店舗経営が行き詰り、困難に直面したときには、新しい考え方を求めて国内外を旅し、沖縄に出あった。この出あいは、環境というテーマを深めさせるとともに、「働きすぎずワーク(仕事)とライフ(人生)のバランスを取る」という人生観も変化させた。

こうした出あいをどう生かすのかも重要な点だ。出あいによって気付き、自分を変化させる力がなければ成長することは難しい。2人の社長は、企業や組織の仕組みの中で教わるのではなく、自らの経験の中で、あるいは自ら探し求めた人や場所から学び取ってきたのだ。
人を引き付ける行動特性とは何か
竹田さんと三上さんは、転機となる「出あい」をどうやって引き寄せたのか。久米島のリゾートホテルの担当課長は、露店の竹田さんが、たくさんの客に囲まれる様子をそれとなく見ていた。日々の仕事ぶりが次のビジネスチャンスをつくり出したのだ。竹田さんの出あいのパターンは、常に「相手からアプローチを受ける」ものだった。これは、人に頼るのが好きではないという竹田さんの性格や動機が関係している。竹田さんは自分自身を律する明確なポリシーを持つ。それは「人に迷惑を掛けない、自分でできることは自分でやる」というものだ。自分自身を律するルールに基づいた行動は人を引き付ける力となり、明確なポリシーを持って行動する人は、他人の信頼を得やすいものだ。また、竹田さんのように、友人を数多くつくりたい、知り合いを増やしたいといった社交動機が弱い人は、孤独に耐えることができるので、自分から人を頼りたがらず、相手からのアプローチを受けることになる。

三上さんの場合、自らの行動をポリシーに昇華させてきた。「美と健康と環境の調和」というテーマを思い付き、そのテーマに沿った行動を重ねている。環境を大切にしながら美と健康を提供するための試行錯誤と行動を繰り返し、沖縄と出あうことになる。三上さんが本来持っていた「人に喜んでもらうのが好き」という動機も行動を導いてきた。特にキャリアの初期段階であった美容師時代には、その動機の部分が大きな要素を占めていた。
キャリア展開に欠かせぬ行動力とは
また、2人の社長には、キャリアを展開させるうえで欠かせない行動力が備わっていた。自ら動いて変化を呼び込んでいるし、壁にぶつかったときには立ち止まるのではなく、行動によって次の展開を呼び込んでいる。竹田さんが環境を変えるために沖縄にやってきたこと、仕事を求めてビーチの露店でアルバイトを始めたこと、久米島で商売を始めたこと、国際通りに進出したこと、すべてが積極的な行動の結果だ。三上さんの場合も、岡山で経営者の勉強会に出席したこと、経営理念を浸透させるために従業員と勉強会をしたこと、環境というテーマに導かれて沖縄にやってきたこと、車に寝泊りしながら農家や化粧品会社に通ったことなど、次々と行動を起こすことで、自分自身と周囲の状況を変化させてきた。
目標は短期の設定がよい
ハプンスタンス・アプローチは「長期的なキャリア目標を立てることはあまり意味がない」としている。三上さんも短期目標を立てる実行派だ。目標は短期的な方が達成しやすいし、結果的に人生を有意義にすると考えて、5年単位で事業計画を立てて実行している。若き日の竹田さんも、目標は常に短期に設定していた。初めて自分で店を出そうと決めたとき、まず与論島に向かうが、難しいと判断するやすぐに久米島に行き先を変更した。また、久米島でも国際通りでも、出店するときには常に期限を決めて準備を進めていた。期限までに目標がかなわなかったときには別のことをしようという柔軟性があったのだ。ハプンスタンス・アプローチは「計画がうまくいかないと思ったら、それにしがみつかずに、計画を変更するべきであり、複数の選択肢に柔軟に対応するべきだ」と説く。竹田さんは、まさにこの通りに思考、行動していたといえる。
過剰適応せずに新たな価値を生む
最後に、新しい環境でのキャリア展開という観点から、竹田さんと三上さんのキャリアに見られる興味深い点を指摘したい。2人の共通点である沖縄に注目すると、新しい環境とキャリア展開の関係が見えてくる。経営者であると同時に沖縄移住者としての視点を失わずにいる。そのことが経営に良い影響を与えているのだ。沖縄への移住者事情に詳しく、『住まなきゃわからない沖縄』などの著書がある仲村清司氏は、「沖縄の人はなかなか自分たちの持つ良さに気が付かない。移住者という異質な人たちが沖縄に来て、新たな文化をつくり出すことに成功している。沖縄の魅力を引き出して新たな価値を創出するには、異質なものとの出あいが必要だ」と指摘する。

前にいた世界を 100%否定し、逃避してきた新天地のすべてを美化して 100%同化しようとすれば、どこかに無理が生じて、それまでの体験の良い部分は生きてこない。すべての世界や体験を、「肯定」か「否定」に二分するのではなく、良いところは身に付け、そして次の世界にチャンスを求めて行動を起こす。新天地では「適応すれども同化せず」で、新しい価値を生み出すことが求められる。

竹田さんは、沖縄文化の素晴らしさを理解し、その発展に貢献したいという。経営する「鍵石(キーストーン)」で沖縄伝統工芸品を販売するのはそのためだ。しかし、過剰に沖縄に適応する必要は感じないという。六本木や青山で遊んでいた竹田さんが持つ都会的なセンスを店舗づくりに生かし、国際通りに従来とは別の雰囲気を持ち込み、新たな価値を生み出すことに成功した。沖縄の環境と文化を敬愛しながらも、永住するつもりはない三上さんも、沖縄に完全同化する必要はないと考える。よそ者だからこそ気付く沖縄の良さにビジネスとして価値を見いだしている。環境の変化は、新たな視点を生み出し、キャリア展開の触媒としての役割を果たすことができる。
(文:向江 睦 写真:勝尾 仁 編集:五嶋 正風)
プロフィール 高橋 俊介(たかはし・しゅんすけ)

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授
プリンストン大学工学部修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ワトソンワイアットなどを経て、ピープルファクターコンサルティングを設立。主な著書に『スローキャリア』『人材マネジメント論』『キャリアショック』『組織改革』など。
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 前編 提唱者クランボルツ教授の講演レポート
 後編 個性派社長2人のハプンスタンスin沖縄
 (1) 竹田誠さん(マコト・オリジナル・グッズ社長)
 (2) 三上伸司さん(ブルーム社長)
 (3) 高橋俊介先生のWrap-Up
※「成長の危機」はWorks本誌でも連載中です。このWebサイト特別編と併せてご覧ください。
第1回 環境・組織・個人に何がおこっているのか
第2回 顧客接点に生まれたプロフェッショナル
(2005年9月21日掲載)

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