| Home > SPECIAL THEME > 「成長の危機」Webサイト特別編 前編 2005年9月 |
| 「成長の危機」Webサイト特別編 前編 | |
リクルートワークス研究所 |
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「予期せぬ出来事を積極的、肯定的にとらえる」−−米スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が提唱するハプンスタンス・アプローチは、組織と個人の「成長の危機」克服にも大きな示唆を与えてくれる。このWebサイト特別編では、まず前編として慶応義塾大学SFC研究所キャリアリソースラボラトリーのシンポジウム「ハプンスタンス・アプローチの最新動向」(6月28日、慶応義塾大学三田キャンパスで開催)における、クランボルツ教授の講演をレポートする。続いて後編では、ハプンスタンス・アプローチの生きた事例として、沖縄で事業を展開する個性派社長お2人の物語と、高橋俊介・慶大大学院教授によるまとめ(Wrap−Up)をお送りする。
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| - 目次 - |
| 前編 提唱者クランボルツ教授の講演レポート |
| 後編 個性派社長2人のハプンスタンスin沖縄 (1) 竹田誠さん(マコト・オリジナル・グッズ社長) (2) 三上伸司さん(ブルーム社長) (3) 高橋俊介先生のWrap-Up |
予期せぬ出来事を前向きに受け止める |
![]() クランボルツ教授自身の経験を例に、ハプンスタンス・アプローチが紹介された。大学の心理学部教授というキャリアを歩むことになったのは、いくつものハプンスタンス(予期しない、偶然の出来事)の結果だという。すべての始まりは子供のころ、偶然テニスに出会ったことだ。テニスを続け、大学ではテニス部に入った。するとテニス部のコーチはたまたま心理学の教授だった。専攻選択にあたって、コーチのアドバイスを求めたところ、心理学を勧められ、専攻することになった。偶然の出会いとそれに続く決断によって、今あるところに導かれてきたのだ。 クランボルツ教授の場合がそうであったように、「予期せぬ出来事が人生やキャリアに果たす役割は大きい。ならば、積極的かつ肯定的にそうした出来事をとらえよう」と考えるのがハプンスタンス・アプローチの考え方だ。また、「予期せぬ出来事というのも、実際は、何らかの行動によってもたらされるのであり、運だけに左右される偶然の出来事ではない」。これもクランボルツ教授の持論だ。それ故、ハプンスタンス・アプローチでは、計画外の出来事が起きるような、変化を呼び込むような「行動」を起こすことの重要性を強調する。そして、行動を起こすときは一歩ずつ、確実に進むことも大切だとされる。 |
趣味のパンづくりが開業につながる |
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クランボルツ教授は、著書『Luck Is No Accident』のなかで変化を呼び込む行動例を紹介している。たとえば、ある自転車修理工が取った行動だ。彼は毎日、仕事から戻ると疲れているからと眠りに落ちるまでテレビを見る生活を続けていた。彼は妻からの強い勧めで、テレビを見るのを止めて、趣味のパンやクッキーを作り始めた。その後、十分な準備期間を経てパン屋を開店させた。次に彼はスーパーやホテルを訪ね歩いて、無料でサンプルのパンを配るという取った行動をとった。これが取引先の開拓とビジネスの拡大につながった。 クランボルツ教授は、この成功例を「長年の習慣を破り、新しいことを始めるのは簡単ではないが、それを克服して一歩を踏み出せた。後に本業となるパン作りも最初は趣味として始めたこともよかった」と評している。こんな例もある。ある大手百貨店の幹部社員は店舗経営に携わっていたが、本当はコンピューター関係の仕事を望んでいた。経験がないため転職は無理だと思っていたところ、婚約者から「あなたの会社のコンピューター部門で仕事をさせてもらったら」と提案され、会社に相談してみると、希望していたコンピューター部門の仕事が得られた。また、ウォーターゲート事件をスクープしたジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏も若き日に変化を呼び込む行動を起こしていた。経験の浅さを理由にワシントンポスト紙に就職できずにいたウッドワード氏は、ライバル紙で経験を積みながら、毎週、ポスト紙の編集長に電話攻勢をかけて採用を勝ち取ったのだ。 このように、ハプンスタンス・アプローチとは、人生に起こるたくさんの予期せぬ出来事を上手に利用して、自分にとって好ましいものに変えていこうという考え方だ。ハプンスタンス・アプローチは、計画することを否定するものではない。しかし、特にキャリアに関しては長期的な目標設定をしても実現しないことが多いから、今できることを確実にこなすことを優先していく。そして、物事が計画通りでなくなったときには、いつでも計画を変更する柔軟性を持つべきだとしている。「一度に人生すべてを計画しようとしてもうまくいきません。それぞれの道程から生まれるチャンスを見極めて、常に広く選択肢を設けておく必要があります」(クランボルツ教授)。 |
キャリア目標を掲げる必要はない |
![]() 来場者には企業のキャリアデザイン担当者やキャリアカウンセラーが多かったこともあり、次にハプンスタンス・アプローチの立場に立ったキャリアカウンセリングにテーマは移った。クランボルツ教授は、人々にキャリア選択を迫るような従来型のカウンセリングはあまり有効ではないと考える。「まず職業目標を持たなければやる気がわかないというのは、未来の配偶者が分からないとデートできないと言っているようなものだ」と話し、会場に向かって「18歳のときに思い描いた通りのキャリアを歩んでいる人は手を挙げて」と問い掛けたが、手を挙げた人はほとんどいなかった。 この結果も踏まえて「キャリアは計画通りにはいかないものだから、特に人生の早い段階で理想的な職業を見極めようとすることは、困難であり意味がないこと」と強調した。これまで優柔不断であると見なされてきたキャリア目標を決められない人を、ハプンスタンス・アプローチでは"オープンマインド"だと肯定的にとらえる。ハプンスタンス・アプローチ流キャリアカウンセリングでは、複雑で予測不可能な将来に対する賢明な対応として、あえて決めないことを認める。そのうえで、想定外のキャリアチャンスをつくり出すために、行動を起こすことが大切だとする。「とにかく行動すること。そこからすべてが始まる」と、行動することの重要性に繰り返し触れた。 |
解決法を押し付けずカウンセリングを |
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またクランボルツ教授は「カウンセラーがすべきことは、相談者の話をよく聞いて、自発的な行動を促すこと。彼らがより幸せに仕事ができるように、幸せな人生を過ごせるように手助けすることだ」と語り、相談者が「自発的に」キャリア上の問題に取り組むように促すことと、よき聞き手であることが重要であると説いた。 講演後、以下のような質疑応答が交わされた。ハプンスタンス・アプローチの、キャリアカウンセリングへの生かし方という観点に立った質問が多く寄せられた。 |
質問 |
キャリアの岐路で2つの選択肢があったとして、そのどちらも同じような価値と将来性があるように見えて選択に迷うとき、ハプンスタンス・アプローチをどのように使ったらよいのか。 |
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教授 |
MBA取得後に投資銀行と広告会社から等しく魅力的な入社の誘いを受けて選択に迷い、仕方なくコイントスで結論を出したという例がある。この人物は結果的にコイントスの結果とは別の道を選んだのだが、ここで重要なことは、選択することよりも行動することだ。選択を強制することで考えがまとまりやすくなる。もっとも、ほとんどの場合、十分なリサーチによって結論を出せると思う。 |
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質問 |
ニートのように行動を起こすことを恐れている人々には、どうアドバイスしたらよいのでしょうか。 |
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教授 |
![]() 既存のシステムの中で完全にやる気を失ってしまっているニートなどには、慎重に対応するべきだ。一度の拒絶や失敗が、彼らのやる気をさらになくしてしまう恐れがある。行動は達成可能な小さなことにした方がよい。電話をかけるなど簡単なことから始めるようにアドバイスをして、彼らが達成できるようそばにいて手助けすることも忘れないでほしい。 |
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質問 |
キャリアカウンセリングでハプンスタンス理論を使うとき、最も有効な質問は。 |
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教授 |
「こんな仕事の誘いがあったらよいのに」と思うことについて語らせる。 次に、「その夢のような話が実現する確率を上げるためにはどうしたらよいと思うか」と質問する。その答えに沿った行動をすれば、もう変化は始まっている。ひとつの行動が別の行動へとつながっていき、キャリアにも変化が訪れる。 |
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質問 |
想定外の出来事に対してオープンマインドであるために、キャリアカウンセラーができる働き掛けとは。 |
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教授 |
カウンセラー個人の経験を語るか、あるいは相談者自身の経験について語らせるとよい。自分自身の経験を物語にする中で、相談者はこれまで既にオープンマインドで変化に対応してきたことに気が付く。 |
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(文:向江 睦 編集:五嶋 正風) |
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プロフィール ジョン・クランボルツ
米スタンフォード大学心理学・教育学教授
ミネソタ大学博士号(カウンセリングと教育心理学)取得。ミシガン州立大学助教授、スタンフォード大学助教授を経て、1966年より現職。カウンセリング心理学の専門家であり、キャリアカウンセリング理論のリーダー的存在。著書に『Luck Is No Accident: Making the Most of Happenstance in Your Life and Career』(共著、Impact Publishers 2004年)がある。 |
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| 前編 提唱者クランボルツ教授の講演レポート |
| 後編 個性派社長2人のハプンスタンスin沖縄 (1) 竹田誠さん(マコト・オリジナル・グッズ社長) (2) 三上伸司さん(ブルーム社長) (3) 高橋俊介先生のWrap-Up |
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※「成長の危機」はWorks本誌でも連載中です。このWebサイト特別編と併せてご覧ください。 第1回 環境・組織・個人に何がおこっているのか 第2回 顧客接点に生まれたプロフェッショナル |
| (2005年9月14日掲載) |
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