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私たちは、やりたいことができないとき、「時間がないから」という言い訳をよくする。もちろん仕事の場合、期日は個人の自由には設定できないため、必然的に「時間がない」状態になることが多い。
では将来の夢の場合はどうだろうか。家族の存在や金銭的な問題など夢の実現を妨げる要因はいくつかあるが、基本的には夢をかなえる期日は、自由に設定できるはずだ。それなのに、将来の夢に対しても、「時間がない」ことを理由に踏み出せない人が多くいる。長く時間を取ることさえできれば、実現が困難な夢もかなうかもしれないのに、なぜ計画を実行に移せないのだろうか。
時間に比例して将来の選択肢が狭まることは、日々の大学生とのキャリアカウンセリングでも実感する。大学生の相談内容を期日で分類すると以下の表になる。
| 目標の期日 | 学年 | 相談内容 | 目標の具体性 | アクションプランの数 |
|---|---|---|---|---|
| 1年以上先 | 1・2年生 | 将来の夢のために、 今の力をどう伸ばすか |
抽象的 | 無限 自由自在 |
| 数カ月以内 | 3・4年生 | 就職活動や大学院進学 | 具体的 | 少ない |
期日が1年以上先の相談は大学1・2年生に多い。例えば「夏休みをどう過ごせばいい?」という相談だ。夏休みは目前に迫っていても、その最終目的は「就職活動」や「大学院進学」など、1年以上先が実現の期日になる。この場合、まずその目的、すなわち将来の夢を聴き、言葉にすることから始める。例えば「海外を飛び回る仕事がしたい」なら、夏休みの計画は、「語学力の習得」「海外で活躍する仕事を調べる」などの具体例が見えてくる。オープンクエスチョンを用いながら、大学生自身による目標やアクションプランの設定を促し、最後に「いつまでに何をする」を決めさせるプロセスとなる。間近に迫った夏休みであっても、そこで学ぶことを生かす機会はずっと先であり、実現のためのプランは無限で自由自在となる。
一方、期日が数カ月以内に迫った相談は、大学3・4年生からが多い。代表例は就職活動に関する相談だ。「エントリーシートの締め切りが今週末」「最終面接が来週」など切迫したものや、「何がしたいか分からない」「どの企業にエントリーすればいいのか分からない」など、準備不足で就職活動自体に踏み切れないための相談が多い。
前者の場合、志望企業が求めている力を、「コミュニケーション能力」だとしよう。エントリーシートや面接では、その力を備えていることをアピールしなければならない。既にその力を学生時代に十分身に付けていると自覚しているなら、その力を身に付けることにつながったエピソードを題材に、的確に伝えることだけを考えればよい。
だがコミュニケーション能力に自信がない場合は、過去の経験から、その力が身に付いたと思われるエピソードを引っ張り出す作業をすることになる。このように切迫した状況では、その時点で備えている能力に見合った企業を選ばざるを得なくなる。時間さえあれば、志望する企業が求める力を身に付けるアクションプランを考え、じっくり時間をかけて伸ばすこともできたかもしれないのに。
準備不足である後者の場合も同様だ。この場合はとにかく少しでも興味のある企業にエントリーし、会社説明会に足を運んでみる方法をすすめている。時間があるならインターンシップやアルバイトなど就業体験をしてみたり、さまざまな社会人に仕事の話を聞いてみたりして、自らのキャリアを熟考した方がよかっただろう。
だがデッドラインが迫っている場合は、そのときからでも出席できる会社説明会に行くしかないし、その中から志望企業を選ばざるを得なくなる。つまり、将来の夢は、期日までの残り時間に比例して、自由度が低くなり、どんどん小さくなってしまうのだ。
ではどうすれば、将来の夢に向けて長期間努力をし続けることが可能になるのだろうか。第1回で述べた友人、知人に夢を宣言する「コミットメント」や、第2回で触れた同じ志を持つ友人をつくる「ピア・プレッシャー」の活用も有効だが、今回紹介したい方法は「スモールステップ」だ。
スモールステップとは、目標に至る過程を、1日・1週間・1カ月など、できるだけ小さなステップに分け、締め切りを明確にして実行していくことだ。キャリアカウンセリングでも成果を挙げることが多い方法であり、社会人がキャリアプランを前進させるための確実な手段だといえる。
前述した「海外を飛び回る仕事がしたい」という夢であれば、キャリアカウンセリングでは、まず「どんな仕事があるのかな? 」と聞くことになる。学生は思い付くまま「添乗員、バイヤー、商社の社員、海外駐在員」など、いろいろ答えてくる。次に「その中で、最も興味がある仕事は何かな? 」と問い掛け、それが「商社の社員」なら、「1カ月後に会うまでに、どんな仕事か調べてみようよ」と約束するのだ。すると学生は必ず調べてくる。調べた上でも「商社の社員」の仕事に魅力を感じているなら、次は「実際に商社で働く人に会ってみるには、どうしたらいいかな? 」という問い掛けになる。逆に思っていた仕事とは違ったのなら、「では今度はどの仕事を調べようか」となる。いずれにせよ1カ月前よりは、確実に夢に近づくことになる。
将来の夢が見えていない場合は、夢の手掛かりを得る方法を考えることになる。私がキャリアカウンセリングでよく使い、効果があるのは「社会人と何人話そうか? 」というものだ。ルールは、家族や親戚はもちろん、教授でも、サークルやアルバイトの先輩や上司でも、行きつけの美容院でもカフェのマスターでもいい。仕事に関する講演会があればそれもカウントする(テレビ番組は除く)。
いろいろな社会人の仕事の話を聞いて、感想をまとめるという作業だ。「1カ月に何人会える?」と問い掛ければ、学生は大体6〜10人くらいの数字を挙げてくる。目標数字に至らなくても、社会人から直接話を聞くことで確実に仕事のイメージがわき、学生は夢を少しずつ具体化していく。
ここでは大学生のキャリアカウンセリングを例に挙げたが、社会人が自らのキャリアプランを実行するときにも使える手法だろう。上司に相談する、気になる会社にアポを取って訪問してみる、人材紹介会社に登録するなど、具体的に実行するプランを練るだけだ。こうした行動はキャリアカウンセラーに頼らずともできる。決めたプランを配偶者や友人、恋人に伝えればいい。それが面倒なら、手帳のToDoリストやブログ、mixiの日記などで宣言(コミットメント)してしまえばいい。GTD(Getting Things Done)を活用してもいいだろう。そうすればいきなり目標に至ることはなくても、逆に全く行動が伴わないことも少なくなるはずだ。少し進むだけで「見通しが立つ」こともあるのだ。
長く助走を取った方がより遠くに飛べる。より大きな夢がかなう。だからこそ、少しずつでも前に進む癖をつけ、確実に夢に近づいていこう。
(文:見舘好隆)
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