10年後の宿泊業は深刻な人手不足に陥る

厚生労働省の「一般職業紹介状況」によれば、2017 年1月時点の有効求人倍率は1.36 倍だった。これに対し、旅館スタッフを含む「接客・給仕の職業」の有効求人倍率は3.77 倍。言い換えれば、3.77人分の求人に対し、1 人の求職者しかいないというわけだ。
宿泊業、特に旅館関係者と話をすると、「とにかく人が採れない」と聞かされることが多い。その結果、十分な従業員数を確保できずに、やむなく規模の縮小や廃業に追い込まれる旅館は決して少なくないだろう。

宿泊業の関係者を悩ませている人手不足は、今後、さらに深刻になる。背景にあるのは、従業員の高齢化である。総務省の「平成24 年就業構造基本調査」を基に、全産業と宿泊業の就業構成を比較してみると、宿泊業における従業員の高齢化が他産業に比べて進んでいることがわかる(図2)。特に注目したいのが、60 歳以上の就業割合だ。全産業の労働者のうち、60 歳以上が占める割合は19.7%。これに対し、宿泊業では9 ポイント近く高い28.6%だった。宿泊業の現場では、総労働時間が長く、かつ長期的なキャリアを描いて働くことができないため、特に30 代、40 代の割合が低い。

厳しい労働環境がいびつな年齢構成を生んでしまっている。今後、60 代以上の労働者が大量退職すると、数万人単位で労働力が不足する危険性もあるだろう。

働き方改革によって業務効率化を進めて生産性を高める

労働者の高齢化が進む宿泊業では、近い将来、さらなる人手不足に陥ると懸念されている。一方、インバウンドを中心に観光需要は旺盛だ。
こうした中で持続的な経営を実現するためには、生産性の大幅アップが不可欠だと言える。限られた人員で顧客に高い価値を提供していく効率的なオペレーションができなければ、宿泊業は立ち行かなくなる。そこで求められるのが、ITの積極的導入や、仕事の進め方・運営体制の見直しといった抜本的な改革だ。

しかし現在の宿泊業界では、IT を利用して業務効率を高めようとする動きは鈍い。中小企業庁の「2013 年版中小企業白書」によると、宿泊業・飲食サービス業で自社ホームページを開設している企業の割合は、他産業に比べて高水準だ(図3)。ところが、IT 化によって業務効率化を目指す企業の割合は低い(図4)。また、仕事の進め方や運営体制などを変え、従業員の負荷を軽くする取り組みも遅れている。十分な集客が見込まれない場合には、定休日を導入したり、料理を提供しない「素泊まり」を取り入れたりするなどの工夫が考えられるが、そうした施策を講じているのは、ごく一部に限られている。
逆に言えば、宿泊業にはIT システムの導入や、仕事の進め方・サービス運営体制の見直しといった働き方改革によって業務スピードを高められる余地がふんだんに残されていると言える。

2017年04月21日