2014年度研究プロジェクト

西條剛央氏多くの人たちが
物事の本質に気づき始めている

14年9月、「ふんばろう東日本支援プロジェクト」は発展的解消を遂げ、新たな体制に移行した。代表として走ってきた西條氏も一区切りがつき、現在は“本業”である研究を深める日々だ。

僕は今、世の中に起きる理不尽の9割は、組織で起きていると考えています。原発にしても、何も人間一人ひとりが真っ黒なわけじゃなくて、肝心な部分が曖昧になっている組織の問題だと思うんですよ。何にでも、どこにでも通用する共通の本質を見いだす構造構成主義は、そういった組織の理不尽、社会の理不尽をなくすための理路を持っています。「ふんばろう」は、構造構成主義を応用した一つの新しい組織モデルとして世界に示せたと思うし、今後は構造構成主義を組織行動に応用した「本質行動学」をさらに深めて、世界に広めていきたいと考えているところです。

そして、リーダーシップで言えば、いろんなタイプがあるわけで、決して固定的なものではないと思うんですね。リーダーシップとはチームを目的達成に導くためのスキルです。そのため、状況と目的によって「有効なリーダーシップ」は変わってきます。そして状況の真ん中にはリーダーシップをとる自分がいるわけです。結局は、その人自身が持つ特性をどう生かすか、自分をどう磨いていくかという話になってきます。ただ、社会リーダーに限定していえば、どんな理由であれ、社会をよりよくしたいという情熱は共通して持っているのかもしれません。

かつて、右肩上がりの時代は「お金を儲けることがいいんだ」という価値観が支配的だったけれど、リーマンショックや震災とかがあって、どうも経済的なことに軸足を置いても幸せになれるわけじゃないと、そこに今、多くの人が気づき始めたように感じています。本質に近づいているというか。僕は団塊ジュニアなのですが、少なくとも僕らの世代より下の世代で「仕事さえしていればいい、お金さえ儲けられればいい」なんて人はいなくて、家庭やプライベートも大事というのがスタンダードになっています。お金も大事だけどできれば世の中もよくしたいよね、そんな感覚も普通になってきたような気がします。

今回の震災支援で大活躍した人には、僕らの世代がすごく多いように感じています。僕自身、震災が起きたときちょうど35歳前後でしたから、社会的にそれなりの力を持ちながらも、偉くなりすぎてないため自由もきくというポジションだというのもあるでしょう。でもそれだけじゃない。団塊ジュニアは、いつも厳しい競争環境下で鍛えられてきて、能力は高いけど、団塊の世代のような「ごり押し」をするのはかっこわるいと思って、すぐ上の世代に配慮するところもありました。でも今、「そんな遠慮している場合じゃない」とリミッターが外れたのではないかと考えています。もともと鍛え抜かれてきた人たちだから、培ってきた力を思う存分発揮し始めた、ということなのかなと。
僕もその世代の一人として、社会に育ててもらって、運良く社会的に影響力を持てるポジションにいるわけですから、これからもやるべきことをやっていこうと思っています。

西條剛央
早稲田大学大学院 客員准教授

プロフィール
1974 年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院で博士号(人間科学)取得。「構造構成主義」という独自のメタ理論を創唱。この理論を用いて「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を創設し、ボランティア未経験ながら日本最大級のボランティア・プロジェクトへと成長させた。

TEXT=内田丘子 PHOTO=刑部友康

2015年04月03日