2014年度研究プロジェクト

米良はるか能動的にトライすれば、何かが与えられる。
誰もがそう思える社会が作りたい

米良氏自身も若くして「READYFOR」の統括責任者となり、「先の見えないまま必死で前に進むことで飛躍的に成長できた」と振り返る。「READYFOR」設立時はビジネスの実務的なことは何もわからず、契約書の作り方やプロジェクトの進行管理から営業の方法、マネジメントまで一つひとつ自分で勉強して身につけていった。

いろいろなことにチャレンジできるというより、チャレンジせざるを得ない状況でした(笑)。企業に入ると、ある程度は上司から仕事が与えられますが、私の場合は上司もいないので、「何をやるか」というところから考えざるをえない。今だから言えますが、最初の2年間くらいはつらかったです。やることなすことわからないことばかりで、てんてこ舞いで。それに、「READYFOR」を始めたときは私も大学院生でしたし、「やりたい!」という思いだけで動いていましたが、事業となると売り上げ責任も伴います。当然ながら、経営の視点が必要で、事業を大きくしていくことと自分の理想が合致しているように思えなくて、自分がどこに向かって進んでいいのかわからず、苦しんだ時期もあります。

孤独も感じましたが、常に利用者だけに向き合って仕事ができたのは、幸いでした。大きな組織にいると、利用者数が増えなくても、つい目先の稟議書作成に意識が奪われるというようなこともあるかもしれません。でも、私の場合は自分ですべてをやっているので、利用者数が増えなければ、自分のやり方が間違っていたということ。何かをやると利用者からすぐに反応があって、反応が良ければそのまま進むし、良くなければ検証して次の策を打つ。ひたすらそのプロセスを繰り返すことで、自分が何をやりたいのか、何をやるべきなのかが具体的に見えるようになり、経営者としての判断の精度も上がっていったように思います。

「READYFOR」立ち上げ時は事務所もなく、東京大学の一室を借りて松尾先生の研究室の人たちと4人ほどでサイトを作るという体制でした。2014年7月にはオーマから独立し、株式会社化しました。経営トップとして大切にしているのは、「何かを始めようとする人たちをみんなが応援する社会を作りたい」という設立理念への強いコミットメント。組織のどの業務もベースにはこの理念がなければいけないと思っているので、本当なら私自身がすべての業務を理解していたいという思いも根本にあります。ただ、私自身ができることには限界があることにも早い時点で気づきました。私にはできないことをできる人を採用して、一緒にやっていくというスタンスで組織を作ってきました。

立ち上げ後しばらくあらゆる業務をひとりでやった経験は、結果的にですが、組織をマネジメントする上でも糧になっています。基本的には全部自分でやりたがるタイプなので、やるだけやってできないと気づくと、逆にそのポジションにふさわしいのはどういう能力を持っている人材なのかがわかるんです。その能力を持った人を見つけることにかけてはすごく真剣にやりますし、これはという人がいたら、巻き込むための努力は精一杯やりますよ。

その巻き込み方は相手によってさまざまですが、組織のトップとしてやるべきことは大きくふたつだと考えています。ひとつは、「READYFOR」がその人にとってほかのどの選択肢よりも成長できたり、ハッピーになれる場所であることをきちんと伝えること。ベンチャーで働くのは冒険心が必要かもしれないけれど、「ここで働くなら、面白そう」と感じてほしい。そのためには会社も成長させなければいけないし、もっとたくさんの仲間が「READYFOR」でいろいろな人生を歩んでいけるように私は価値を提供し続けなければいけないなと思っています。

もうひとつは、私自身が物事をやり切る姿を見せること。ビジネスをやっているといいときも悪いときもあります。大変なときでも「この人は踏ん張り続けて、やり続ける人なんだろうな」と思われるかどうかというのはトップがリーダーシップを発揮するための大きな要素なんじゃないかなと考えていて。どんなときも、トップはあきらめずに前に進み続けなければと思っています。

起業どころか、自分に何かが作れるとも思っていなかった私がこうやって「READYFOR」をやっているのは、たくさんの人たちに出会ってインスパイアされてきたから。「READYFOR」立ち上げ2年目にダボス会議に参加させていただいたときも、ちょうど先が見えなくて自信を失いかけていた時期でしたが、ビル・ゲイツ氏をはじめ大きな価値を生み出している巨人たちを間近で見て、励まされました。自分よりも優秀な人たちは世の中にいっぱいいるのに、なぜ私がこの年齢でここに呼ばれたのかと考えると、答えとなる要素は期待値と運しかないはずなんですね。それならば、ここにいる人たちのように社会に価値を与えられる人間にならないと、期待していただいた人に失礼だと使命感のようなものを感じて。なんだか、都合のいい解釈ですけど(笑)。

私自身がどう作られたかというと、やはり環境、どんな人たちに出会ってきたかということだと思います。ただ、その環境を手に入れるためには、やはり今いるところから一歩踏み出すことが大事だと思っていて。環境が与えられることをただ待っていても、ほとんどの場合、誰も提供してくれません。ただし、常に能動的に向き合って何かをトライする人には、何かがきっと与えられる。「READYFOR」は、私が自分の体験を通して信じられるようになった「自分で動こうとする人には、必ず応援してくれる人が現れる」ということを、誰もが当たり前のように感じられる社会を作るためのプラットフォームにしていきたいのです。

米良はるか
株式会社READYFOR 代表取締役

プロフィール
1987年東京都生まれ。
2010年慶應義塾大学経済学部卒業。2012年同大学院メディアデザイン研究科修了。大学院在学中に米国・スタンフォード大学に留学。帰国後、2011年3月にWebベンチャー・オーマ株式会社の一事業として日本初のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を設立。2014年7月に株式会社化し、NPOやクリエイターに対してネット上での資金調達を可能にする仕組みを提供している。2012年には世界経済フォーラムグローバルシェイパーズ2011に選出され、日本人として最年少でダボス会議に出席。St.Gallen Symposium Leaders of Tomorrow、内閣府国・行政のあり方懇談会委員など国内外の数多くの会議に参加。

TEXT=泉彩子 PHOTO=刑部友康

2015年04月24日