2014年度研究プロジェクト

石川治江レールの引かれていない未開の地にこそ、
楽しみと喜びがある

本人が語っているように、石川氏は未開の地を好む。先陣に立って切り開きながら、そこで仕事をつくることを楽しんでいる。そして、彼女が福祉の世界に飛び込むきっかけとなった「怒り」、これもまた変わらぬ大きな原動力として存在し続けている。

飽きっぽい私がこんなに長く続けている大本には、やはり怒りがあると思いますが、変容はしてきています。少しキザに言えば、怒りや疑問を解決する戦略が考えられるようになったということです。最初のエレベーター設置運動では、厚労省のフロアに座り込んで「エレベーターつけろ!」と拳を上げる直接的な要求運動をしていたわけですが、それが仕組み化というか、システムを構築する機能運動に変化してきた。戦略を持って勝ち取っていこうと。こちらのカードと相手のカードを出し合い、「何ができるか」を探っていく。顕著なものとしては、介護保険制度をつくる時がそうでしたね。

今、広めようとしている認知症予防プログラム「だんだんダンス」もそう。認知症って、1対1のケアがなかなか成り立たなくて、どうしても家族を巻き込んでしまう。認知症の親を抱えて勤めを辞めざるをえない、さらには「施設に入れるお金もない」で、これは家族だけでなく日本経済にも影響を与える深刻な問題なわけですよ。それで「よし、認知症予防をやるぞ」と始めたのが、脳を活性化するダンス。私、思いついたらどんどんやりたくなる(笑)。企業も触手を動かしてきているし、これは大きな動きになると思います。

ほかにもいろんなことをやっているので、とにかく忙しい(笑)。でも、ボランティアにしてもNPOにしても、花火をズドン、ズドンと上げる人がいないと、組織ってもたないんですよ。みんなが疲れて、モチベーションが下がりますから。「理事長が、また何か始めるぞ」――それが私の役割だと思っています。実際、アイデアはどんどんわいてくるし、知恵を出してやってみたら単純に面白い。金のないところに知恵があるんです。

人生ってYの字じゃないですか。複数の選択肢があってどっちかの道を選ばなくてはならない。その岐路に立った時、私が自分に課していることは「しんどいほうを選ぶ」、そのうえで「レールが敷かれていて、つまらなそうな匂いがしたら動かない」。結局のところ、私は、誰も行ったことのない道が好きなんですよ(笑)。

石川治江
特定非営利活動法人ケア・センターやわらぎ 代表理事
社会福祉法人にんじんの会 理事長

プロフィール
1947年東京都生まれ。
外資系組織で秘書を務めた後、喫茶店、居酒屋、手紡ぎ工房などを経営する傍ら、障がい者との出会いから介護・福祉分野に問題意識を持ち、78年に生活支援ボランティア組織を発足させる。その後、87年に非営利の民間福祉団体としてケア・センターやわらぎを設立。日本初の24時間365日の在宅福祉サービスを打ち出す。2000年、NPO法人化。現在、同団体代表理事、社会福祉法人にんじんの会理事長、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授、21世紀社会デザイン研究学会副会長、一般社団法人ダイアログ・イン・ザ・ダーク理事。

TEXT=内田丘子 PHOTO=刑部友康

2015年04月17日