2014年度研究プロジェクト

川添高志医療の現場と経営を学び、
起業準備を整えていく

その後、川添氏は慶應義塾大学看護医療学部に進学。医学や薬学など、数ある医療ジャンルの中から同学部を選んだのは、これからの時代、「看護」が主流になると考えたからだ。在学中、看護学生として数多くの現場を見て回り、また、医療と経営の関係を学ぶために、川添氏は積極的にアクションを起こしていく。

病気にかかっている人や障がいのある人たちを支える仕事のメインは、看護だと思ったんです。看護は何かを“取り除く”というより、例えるなら、コップの中に少ししか入っていない水を押し上げていくためのサポートをするというか。つまり自然治癒力を高めていくお手伝い。病弱だった僕自身、食事やスポーツを通じて体のコンディションを良くしてきたという実感があるので、自然治癒力や予防医学の大切さを広めるような仕事がしたかったのです。

時代性もあります。超高齢社会を迎え、社会保障の財源は危機的な状況なわけで、延命治療の見直しや予防医学の重要性が説かれています。ヘルスケア業界で言われている、「キュアからケアへのパラダイムシフトの時代」。そんな世の中の動向と自分の考えが重なって、これからの医療は看護中心になっていくだろうと、ストンと腑に落ちたのです。

授業を通じて、病院や老人ホーム、健康保険組合などといった様々な現場に行き、医師や利用者たちの生の声を聞けたことは有意でした。大学4年間で200日くらい行ったでしょうか。一番重要なのは現場を知ることなので、この経験は、医療ビジネスをするうえで相当なアドバンテージになりましたね。

ただ、看護医療学部の先生方は、医師や看護師であって経営者ではないから、病院経営にかかわる話や知識は教えてもらえません。僕は、そこに対する焦りがあったので、ほかの学部にゲストスピーカーとして訪れる起業家の講演を聞きに行ったり、看護師として起業している方と人間関係をつくったりと、個別の動きはけっこうしていました。

在学中、川添氏はカリキュラムの一環で行われたアメリカの医療機関の視察に参加した。現在、ケアプロで展開している事業モデルに出合ったのは、この時だ。大型スーパーの片隅で、客が簡易な医療サービスを受けている光景を目にしたことで、「これを日本でやろう!」と事業の骨格が固まったのである。

アメリカで行われていたのは“Minute Clinic”というもので、文字どおり数分のクリニック。医療行為もできる看護師資格を持つ人が、ワクチンの接種や薬の処方など、日常における治療を短時間かつ安価に提供するサービスです。メニューには、気軽に受けられる健康診断もある。アメリカでは医療費がすごく高いでしょう。「病院に行くほどではないが、ちょっと診てもらいたい」というニーズを捉えた事業で、業態としても確立されています。

すごいな、便利だなと感じました。日本とは医療制度が違うとわかっていても、こういう医療サービスができない日本は遅れているという悔しさがあった。視察でたまたま知った事業モデルですが、何とか日本に持ち込みたい――そう思ったのです。

アメリカの医療機関では病院経営についても勉強しましたが、帰国してから、僕は実践を学びたくて、医療に特化したコンサルティング会社でインターンを始めました。まだ社員10人ほどのベンチャー企業だったので、会社のすべてを見ることができた。計画立案から営業、リクルーティング、資金繰り……まさに経営のイロハです。大学4年からは、名刺を持たせてもらって週5日ペースで働き、プロフェッショナルな仕事を体験できたことは、最高の修業になりました。

2015年05月01日