2014年度研究プロジェクト

若い人が持つ熱情や無鉄砲さ。
それこそが社会の財産である
山崎亮氏

山崎氏が率いるstudio-Lの最終的な目標は、「自分たちの仕事が社会的に必要なくなること」。つまり、コミュニティデザイナーがいなくても、人々が自らの力で人生を切り開く社会の実現だ。それが、山崎氏の切なる願いである。

生産年齢人口が減り、税収が減り、もう国や自治体が今までのような至れり尽くせりの公共事業をできなくなるのは自明です。ハード面でもソフト面でも。現況だけを見れば、確かに大変な話です。だからこそ、地域の課題は、できる限り地域で解決していかなければ、もう仕方がないのです。

そもそも、100 年ほど遡れば人口は5000万人弱だったわけで、我々は、急激に人口が増えたある種特異な時代を生きているのです。それが、元の状態に戻ろうとしていると。かつての日本は、集落単位で皆が力を合わせて生活を営んでいたわけですよね。道をつくり、家の修復もし、冠婚葬祭、よろずの事を協力し合ってきたのです。それが人口急増でお金が回るようになると、行政や専門家に頼めば何でも解決できるような時代になり、いつの間にか、道路を清掃するにも役場に電話して「掃除せい」みたいな話になっている。

これは、ごく限られた時代だけのこと。もう一度、人々がコミュニティの力を見直し、自分たちの面倒を自分たちで見ていくマネジメントを実現しなければ、国が破綻してしまいます。「至れり尽くせりを続けて」と陳情し続けても、先はありません。

社会に対する強い思いと使命感を持つ山崎氏だが、彼にも「何をやればいいかわからない」時期はあった。自身の模索時代があるからこそ、今は、若き後輩たちに強いメッセージを送ることができる。「理想は高く語っていいし、生意気なことも言えばいい」と。

阪神・淡路大震災のあと、あまりの無力感からオーストラリアにある大学に留学したのですが、これは一つ、転機になりました。日本の建築はレベルが高いので、正直、学問的には新たな発見があったわけではないけれど、自律的に学び、そこから世の中に貢献しようと考えている多くの学生たちと交流するなか、生きることへの興味、面白さを感じたのです。

それまで、好きなデザイン以外はろくすっぽ勉強せず、実に適当な学生だったのがガラリと変わった。何かに突き進むとか、将来を熱く語ることが、何だかダサいという風潮もあったし、僕はむしろ、冷めた感じを装っていたんですよ。素になれば、これだけ熱くしゃべっちゃう人間なのに(笑)、自分で蓋をしていた。それが、すっかり取り払われたということです。

熱くなるべきだと思いますね。若い人が否応なく持っている熱情だったり、何も顧みず走っちゃう無鉄砲さだったり、それこそが社会の希望であり、財産なのではないでしょうか。ものすごく大事な気がするんです。だから、年配の人に諌められるような生意気なことでも言えばいい。それは、語るに恥ずかしくない人生を送るためのエネルギーになります。だって、「お前、あんな偉そうなことを言ってて、今それなの?」みたいな様にはなりたくないでしょ(笑)。

誰でも、年を取ってくればどこか落ち着くし、冒険心や挑戦する気持ちが丸まってくるものです。きっと、本当に優秀な無鉄砲な人でないかぎり“生意気なおじいちゃん”になれないと思うので、目指すはそこです。僕も高い理想を掲げ、自分を鼓舞しながら人生を送りたいと考えているところです。

プロフィール
山崎亮 コミュニティデザイナー 株式会社studio-L 代表取締役

1973年愛知県生まれ。
大阪府立大学農学部卒業。大阪府立大学大学院(地域生態工学専攻)修了後、 SEN環境計画室勤務。2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトを多く手がける。現在、東北芸術工科大学教授(コミュニティデザイン学科長)、京都造形芸術大学教授(空間演出デザイン学科長)、慶應義塾大学特別招聘教授も務める。

TEXT=内田丘子 PHOTO=刑部友康

2015年02月20日