2014年度研究プロジェクト

小沼大地日本が抱える多様な社会課題を
解決していくために

聞けば「なるほど」と膝を打つプログラムだが、いかんせん前例がない。企業に留職の意義を理解してもらうまでには苦労もあった。12年、最初に同プログラムを導入した企業はパナソニックだが、小沼氏らはそれまでに100社以上もの企業を訪問したという。この時も、応援してくれたのはコンパスポイントの仲間たちだった。

創業してからは、企業で働くコンパスポイントの仲間たちが、「うちの会社にも提案してみなよ」とキーパーソンを次々と紹介してくれました。そういうサポートがなければ、多くの企業に僕らのビジョンを伝えることはできなかったし、何度も聞かされた「前例がないからできません」という言葉に心が折れていたかも……。パナソニックで熱い想いを持つ社員の方に出会え、同社の理解のもと留職第1号が実現した時は嬉しかったですねぇ。それまで連戦連敗でしたが、“前例”ができると、あとはアプローチしやすくなるものです。

営業をしながら改めて気づいたのは、企業のほとんどが「社会の発展のために寄与する」という理念を持っていること。ベースはあるんですよ。それと留職プログラムの目指すベクトルが合致したからこそ、導入する企業が順調に増えてきたのだと思います。

ただ重要なのは、導入社数などの実績より、留職を経験する個人や組織とビジョンを共有できるかどうか。僕らは営利を追求しているわけではないので、社会的なインパクトにつながらなければ価値を発揮できません。だから、うちが出来上がったプログラムを一方的に提供するのではなく、双方が共通認識に立ち、一緒にプログラムをつくりあげていくことを大切にしています。「ほかの会社もやっているし」的な“熱の薄まり”が最大のリスクだと思っているので、これまでどおり、強く熱い関係性は維持していきたいのです。

留職する主な対象国は、インドネシア、ベトナム、カンボジア、インドなどで、現在、クロスフィールズは約10カ国でネットワークを構築している。重んじているのは、派遣先となるNPO、NGOの選定にも十分な調査をかけ、その留職者に本当に合致する団体を案内することだ。

僕らと直接ネットワークを結ぶ派遣先もありますが、基本的には、現地にいるキーパーソンたちと連携を取り、留職者が活躍できる“ぴったりの場”を探し出すというスタイルです。成果を挙げるには、留職者の想いが重要な要素になりますが、それは受け入れ側も同じ。淡々と活動しているような団体だと、人に影響を与えられないし、留職者に圧倒的な原体験を提供できませんから。なので、うちは必ず事前に現地に赴き、自分たちで確かめてから団体をご紹介するようにしています。調査に行った職員が、感化されるようなレベルで活動に取り組んでいる団体かどうか。職員が帰ってきて、めちゃくちゃ感動して話をするようならOKです(笑)。リーダーシップ育成に向けた鍛練と、現地への貢献。これらの成果達成度は受け入れ団体との協働にかかっているので、非常に重視している点です。なので、一つひとつがハンドメイドなんですよ。

今は大企業が主ですが、将来的には中小企業や行政なども対象にした仕組みもつくっていきたいと考えています。国内への留職も含めて、その幅と数を増やしていく。例えば、厚生労働省の人が育児系のNPOで働くとか、行政職員が社会の現場に出て、リアルに課題解決に挑む。そして情熱が媒介となって企業、行政、NPOが良きパートナーになれれば、日本が抱える多様な社会課題を解決していける。そう信じているし、それこそが、僕らの掲げるビジョンなのです。

2015年04月10日