2014年度研究プロジェクト

小沼大地国際協力とビジネスをつなぐ事業を模索し、
生まれた「留職」プログラム

そんな情熱をまとって帰国した小沼氏だったが、先に就職していた大学時代の仲間に再会した時、大きな違和感を覚えることになる。かつて高い志を語っていた友人たちが、すっかり“大人”になっていて、目の輝きを失っていたからだ。「もったいない。これでいいのだろうか」。憂慮した小沼氏は、想いを発信する場として、有志らと「コンパスポイント」という勉強会を立ち上げる。

協力隊から帰って部活仲間と飲み会をした時、僕は興奮覚めやらぬ状態だから、当然、シリアで得た経験や夢を語るわけです。「社会人、熱く生きよう!」みたいな。すると、けっこう引かれてしまいまして(笑)。でも、なかには「お前が言っていることは正しい。忘れかけていた」と言ってくれる人間もいて、そこから定期的に集まるようになったのです。

最初は飲み会レベルでしたけど、しだいに想いを同じくするメンバーが増え、社会起業家などのゲストを呼んで話を聞くとか、勉強会らしくなっていきました。すると、いろんな問い合わせや情報が入るようになった。つまり、ニーズがあったんですよ。日本の社会人は病んでいる、情熱を持って働けていないことを自覚する人たちが確実にいる。それがわかっただけでも大きかったですね。僕が一人でただ発信していても「何だ、それ」という話だったでしょうが、勉強会という活動の場があったことで発信力は増し、仲間集めにつながった。起業に向けての大きな素地になりました。

並行して、小沼氏はマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に入社し、3年間という期限付きで“修業”した。当時頭にあった「国際協力とビジネスをつなぐ」というビジョンを実現するスキルを身につけるためだ。ここで小沼氏は、のちに展開する事業「留職」の芽を育んでいる。

コンサルティング業の本質は、課題解決じゃないですか。必死で働くなか、日本企業が抱えるいろんな課題に触れられたことは本当に勉強になったし、何より、マッキンゼーで働く人たちからは「課題と正対する」姿勢を学びました。それと、海外研修でアメリカに行く機会があったのですが、その時に、僕は合間をぬっては様々なNPOを訪問したんです。これも、営利と非営利のフィールドをつなぐ事業を模索するのに非常に有効でした。当時のノートには、留職につながるビジネスプランがいくつか書き記されています。

3年後、自ら決めていた期限どおりに思い切ってマッキンゼーを辞め、共同創業者である松島由佳とクロスフィールズを立ち上げました。先ほど話した勉強会・コンパスポイントの活動で親交を深めた彼女は、同じ問題意識を持ちながら事業を考えていました。仲間たちと何度も何度も議論を重ね、練り上げたのがクロスフィールズのコンセプトでした。

留職は、企業で働く若手が新興国の非営利団体に赴任し、彼ら、彼女らが持つスキルやリソースでもって、現地の人々と共に社会課題の解決に挑むというものです。目の輝きを失いつつある日本のビジネスパーソンに、ドイツ人経営コンサルタントがシリアで経験したような圧倒的な原体験を提供したい。そして、その活動は企業にとっては新しいアプローチでの国際貢献にもなる。さらには、社員たちが現地でリアルなニーズを捉えることで、新興国の市場開拓、つまり新たなビジネスチャンスを生む可能性もあります。留職は個人のみならず、企業、現地社会の三方がwin-win になれるプログラムだと思っています。

2015年04月10日