2014年度研究プロジェクト

起業家精神に火を灯す活動を宮城治男氏
続けていく

ETIC.の主たる活動は、20代、30代を対象にした長期実践型のインターンシップで、若者が「社会をつくる現場」に挑むチャンスを提供してきた。それらプログラムはベンチャーだけでなく、ソーシャルビジネスや地域活性、そして東北の震災復興現場へと拡大され、20年間で、参加者総数は約7000名となった。

最初に始めたアントレプレナー・インターンシップ・プログラムでいえば、2700人以上が参加し、卒業生150 人が起業。ほかにも様々な起業支援のプログラムなどから、社会問題の解決に先陣を切る社会起業家や、震災復興リーダーが毎年50名以上生まれ、挑戦を始めています。

我々は20年間、「社会を少しでもよくしたい」という若者を、変革や創造の現場にひたすらつなげてきましたが、社会変化のスピードを考えれば、まだまだ足りていません。ゴールはないかもしれないけれど、今後も、いろんな場所で起業家精神に火を灯す活動を続けていくことが使命だと考えています。

私たちが考えるアントレプレナーシップとは、かたちとして独立する、起業するということに限りません。形成したいのは、社会の課題やニーズに対して当事者意識を持ち、新たなビジネスや仕組みなどの価値創造に挑む「マインド」です。ビジネスパーソンであっても行政の職員であっても、起業家精神のもとに能動的な生き方を選択する――そういう人材が増えれば、課題が自律的に解決されていく社会、地域が実現すると思うのです。

宮城氏が語ってきたように、物質的に豊かになった社会は一方で複雑化し、もう「幸せになる道」を社会が教えてくれるわけではない。自分で見つける力が求められている。教育者としての視点も持つ宮城氏は、今なお続く従来型の教育に警鐘を鳴らす。

欧米に追いつけ追い越せとか、戦後の復興のなかで、とにかく走り続けないと「食えない」ということを前提につくられた教育シテスム。その規格大量生産的なシステムは、もはや機能しない時代です。豊かな時代を生きている人たちは、「別にそこまで頑張らなくてもいい」と思っている。なのに、相変わらず物質的な豊かさを求める教育がメインです。最も大切な、何のために働くのか、どう生きるのかを、学校教育のなかで伝えていかなければいけないと思いますね。

ただ一方で、放っておいても子供たちのほうが進化してしまう気もするのです。インターネットが、社会の変化をアシストする意味において重要な機能を果たしているし、大人が考えている以上に、子供たちは早く気づき、自分で道を見いだしていくのではないかと。

これからは、個人に選択を委ね、それを認めていくアプローチが大切になってきます。そして、それぞれが自由に意思決定して、行動し、ポジティブに未来をつくる人たちが増えれば、素敵じゃないですか。その結果、最大のスピードで進化が起こり、その総和で「よい社会」が創られる。結局のところ、私は、そういう人の本来持つ力が花開く場面に出くわすことが好きなんですよ。その感覚が、今の仕事に辿り着かせてくれたのでしょうね、きっと。

宮城治男
NPO法人ETIC. 代表理事

プロフィール
1972年徳島県生まれ。93年、早稲田大学在学中に、学生起業家の全国ネットワーク「ETIC.学生アントレプレナー連絡会議」を創設。2000年にNPO法人化、代表理事に就任。01年ETIC.ソーシャルベンチャーセンターを設立し、社会起業家育成のための支援をスタート。02年より日本初のソーシャルベンチャー向けビジネスプランコンテスト「STYLE」を開催するなど、社会起業家の育成、輩出にも取り組む。04年からは、地域における人材育成支援のチャレンジ・コミュニティ・プロジェクトを開始、50地域に展開を広げる11年、世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。

TEXT=内田丘子 PHOTO=刑部友康

2015年03月27日