2014年度研究プロジェクト

社会的なインパクト、宮城治男氏
価値の創出を第一義に

活動規模が大きくなるのに、時間はかからなかった。従前に例のない活動ということでメディアに取り上げられ、行政からも支援を得られるようになった。例えば95年、経済産業省と協働で開催した全国横断セミナーや、起業家精神を啓蒙するイベントでは、延べ5000名以上の学生を動員している。

数年のうちにすごく忙しくなって、気がついたら、自分の就活時期は終わっていました(笑)。仲間たちとサークルのようにやっていたので、いずれ代替わりがあって、活動は引き継がれていくと考えていたのですが……。もともと起業家を目指しているとか、「自分でやりたい人たち」の集まりなので、これも気づけば、バトンを渡す相手がいなかった。なら、このままやるかと。役割として、お節介な私の性に合っていると思ったのです。

その時の自分が持っていた可能性と力を掛け合わせれば、企業に就職するより、また塾経営を続けるより、このポジションにいたほうが社会に与えるインパクトは大きい。そんな手応えも得ていました。

というのは、自分たちの利益を追求するのではなく、社会へのインパクトを最大化することを前提に動けば、意外に世の中のほうが動く、つまりレバレッジが効くということを知ったからです。当時はNPOという言葉もなかったけれど、志を立て、ニュートラルな姿勢で働きかければ、お金も人脈もない20代の若造にだって起業家たちは無償で協力してくれるし、メディアや行政も支援してくれる。NPO的なスタンスで仕事をする面白みに気づいてしまったのです。何を得られるかはわからないけれど、最大のインパクトを追求した先には、最大の可能性があるだろう。そんな感覚で選んだのが、この道です。

事務局機能の拡大に伴って名称をETIC.に統一し、2000年には、NPO法人の認証を取得。かつての学生団体は“社会の器”として機能し始めた。ただ、宮城氏は形態にこだわっているわけではない。常に意識にあるのは、「世の中に最大のインパクトを生み出す手法は何か」であり、それが現在、NPOというかたちと合致しているのである。

我々がやっていることは、人材の育成ではなくアシストです。だから、ビジネス社会に存在するような様々な思惑を限りなくゼロにした状態でいたいのです。例えば、ベンチャーキャピタルが企業に投資をすれば、当然、一定期間で成果を求め、利益回収したいじゃないですか。そうなると、向き合う企業や起業家にバイアスがかかる。それは望むかたちではありません。思惑ゼロと仕事を両立させるのは難しいですが、NPOなら、スポンサーの利益より、社会的なインパクトや価値の創出、人が最大に成長することを第一義とするスタンスを貫きやすいのです。

むしろ我々は、起業家側に立つべきだと考えています。促成栽培的に事業を育てる必要はないし、もし、メディアや投資家が過度な期待をして、不必要な加速を求める場面が訪れたら、そこから守らなければいけない。

何の思惑も持たず、ニュートラルに、ありのままの姿で向き合うということ。だからこそ、意欲ある若者たちも耳を傾けてくれるのです。我々を支援してくれる起業家のなかには、目先の利益にかまけてダークサイドに落ちそうになった時、「ETIC.に来ると自分に立ち返ることができる」と言う人もいます。「あなたのままでいい、本来やりたいことをやればいい」と向き合える関係って、実はそう多くないですからね。いわく言い難い信頼感というか、本当の意味での影響力は、そういうところから生まれるかもしれないと思うんですよ。

2015年03月27日