2014年度研究プロジェクト

ビジネスでの成功の次は、
「日本のかたち自体を変えたい」
堀義人氏
1992年、渋谷の小さな貸し教室で始まったビジネス・スクールは、現在は在校生1300人を超す日本最大の経営大学院に。グロービス・キャピタル・パートナーズはファンド運用額累計500億円、投資社数累計約120社というVCへ成長した。ビジネスで成功を収めた堀氏は、新たなステージに進んでいく。

グロービス経営大学院をアジアナンバーワンの大学院にすることを目標に掲げています。これは実現のめどが立ってきたと感じています。ただし、時間がかかります。大学院の評価は卒業生の活躍で決まりますから、時間の短縮はできません。大学経営のためのチームは出来上がっているので彼らに任せておけば、私の能力は3、4割くらいを割けば大丈夫であることが見えてきました。

そうなってくると、自分のなすべきことは「ヒト・カネ・チエのビジネスインフラを構築する」、それだけでいいのだろうかと思うようになりました。一方で世の中を見ると、バブル経済の崩壊まではジャパン・アズ・ナンバーワンといわれていたのが、日本はずっと右肩下がりが続いています。

一生懸命、社会を創造、変革するといい、ビジネスとして人材や産業の育成に取り組んできたが、それだけでは間に合わない。日本のかたち自体を変えなければならないと思い始めました。どのようにしたらそれが実現できるのか、考え続けましたが、私は起業家なのだから、まずできることから始めようと思うようになりました。第1に、同じ志をもつ政治家の応援を始めました。今も、党派に関係なく、10人くらいの方々を応援し、選挙のたびに応援演説をするなどしています。第2に、自分が考えていることを、積極的に発信するようにしました。通常、ビジネスパーソンは政治的な発言は控えるべきだといわれますが、そんなのは関係ない。第3には世界での日本のプレゼンスを高めるため、国際的な場に、なるべくたくさん参加するように努めました。ダボス会議やフォーブスのグローバルCEOカンファレンスなどでスピーカーを引き受けたのです。

ダボス会議に参加しているうちに気づいたのは、「これからの社会を変えていくのは、この会議のような、多様なステークホルダーが集まるプラットホームだ」ということでした。政治家、ビジネスパーソン、学者、NPOの人、アーティストやスポーツ選手、そしてメディア。立場を超えたリーダーたちが学びあい、議論する場として2009年に始めたのが、「G1サミット」です。「G1サミット」で各界のリーダーと議論を重ねるなかで、日本が進むべきビジョンを、政策提言などで示していこうと考えるようになり、それを形にしたのが「100の行動」です。

こうしてビジネスの枠を超えた社会変革への取り組みを始めた堀氏。行動を起こしてみてわかってきたのは、社会を変えていくためには、3つの要素が必要だということだ。

世の中を変えていくためには、3つの要素が必要だと思います。1つめは、ビジョンや思想です。歴史上の革命や維新を見ると、たとえば明治維新は、尊皇攘夷運動から始まっています。フランス革命でいえばルソーをはじめとする啓蒙思想、ロシア革命ならレーニン、マルクスらの社会主義思想などが例に挙げられるでしょう。2つめは、変革を推進するリーダーたちのネットワークです。そして3つめは、ビジョンや思想を伝播していく力です。私が取り組んでいる活動でいえば、1つめのビジョンや思想の部分が、「100の行動」に該当します。2つめのリーダーのネットワークに当たるのが、「G1サミット」です。3番目については「100の行動」や「G1サミット」の内容を、メディアなどを通じての発信に努めています。

堀義人
グロービス経営大学院学長
グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー

プロフィール
1962年茨城県生まれ。
京都大学工学部を卒業し、住友商事株式会社に入社。ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。92年、株式会社グロービス設立。96年、グロービス・キャピタル、99年、エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。現在、経済同友会幹事等を務める。08年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設し、13年4月に一般社団法人G1サミットの代表理事に就任。11年3月大震災後には復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、代表理事を務める。

TEXT=五嶋正風 PHOTO=刑部友康

2015年02月27日