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研究レポート

刺激を受けたビジネス・スクール
芝生の上で描いた事業アイデア
 堀義人氏
HBSでの学生生活は、堀氏にとって刺激にあふれたものだった。実際の企業事例を題材に自らを経営者の立場に置き、戦略を立案するケースメソッド。優秀な学生の多くが起業を目指していること。キャンパスの芝生に寝転がっていた堀氏は、一つの事業アイデアに思い至る。

HBSはすごい。多数の優秀な卒業生を輩出し、経営に関する知を多く収集し、創造し、広めている。アメリカ経済、世界経済への貢献は非常に大きいと思いました。そして、こういうビジネス・スクールを日本に創れないだろうかと考えました。HBSのカリキュラムのエッセンスを、夜間と土日を使って短期間に、低価格で学ぶことができたら、どれだけ多くの経営人材を輩出できることか。そんなことを考えたら、ワクワクしてきたものです。

次世代の中心となる知識集約型産業での成功に必要な「ヒト」「カネ」「チエ」について分析を進めることで、日本にHBSのような経営大学院を創ろうという事業アイデアは、さらに肉付けされていきました。

まず「ヒト」。今後、複雑多様化する経営環境では、体系的な経営教育を受けていない経営者が成功するのは困難になります。私が起業した1990年代初めの頃、そうした教育を提供するビジネス・スクールは全米に数百ありましたが、日本には数校程度でした。ビジネス・スクールを設立し、企業のリーダーを育成する必要があると考えました。

次に「カネ」です。当時日本のベンチャー・キャピタル(VC)の数は、アメリカに遠く及びませんでした。とりわけ創業期や成長初期に投資し、経営支援まで手がけるアーリー・ステージ型VCは、日本にはほとんど存在しません。こうしたタイプのVCが、日本には必要でした。

最後に「チエ」です。企業経営に必要なのは「ヒト」「カネ」だけではありません。実行可能な戦略や計画に関するノウハウが求められ、そうした経営に関する知見を継続的に創造・発信する研究機関が必要ですが、日本では皆無に近かった。経営研究所を設立し、チエを発信する仕組みが必要だと考えました。

こうして「グロービスはヒト・カネ・チエのビジネスインフラを構築し、社会に創造と変革を促す」というビジョンが形づくられました。「ヒト」についてはグロービス経営大学院、「カネ」についてはグロービス・キャピタル・パートナーズ、チエについては「グロービスMBAシリーズ」の刊行などといった形で、実現していきました。

グロービスの起業に先立ち、私も祖父のように、起業家としての「吾人の任務」をまとめました。「起業家として、志をもつ多くの仲間とともに、創造と変革を行う。それを通じて、世の中をより住みよい社会に変えたい」と書き記したのです。私はお金ほしさやハングリー精神で起業を決意したわけではありません。あくまでも、社会に価値を創造する起業家になることが「吾人の任務」ではないかと気づいたから、この道を歩み始めたのです。

堀氏はリーダーの資質として、冒頭に挙げた「明確な志」のほか、「事業を実行する能力」そして「多くの人を巻き込む力」が必要だと説く。

新たなビジネスモデルを作り、それをもとにしてプロダクトやサービスを構築する。その中で必要なお金を調達しながら、戦略を描き、意思決定を下していく。これが「事業を実行する能力」です。「明確な志」が1つめだとすれば、それが2つめです。そして3つめは、多くの人を巻き込み、説得し、その人たちが一緒になって働いてくれるようにする力。大きくいうとこの3つが、リーダーに求められる資質でしょう。

2015年02月27日