2014年度研究プロジェクト

学校の特徴は人材タイプの違いを生み出しているか
「学校行事や集団を強く意識する環境で育ったリーダー」と「個性や学業、本分に重きを置く環境で育ったリーダー」とでは何が違ってくるか。こうした問いについて考えたとき、素朴な仮説として、まず次のようなものが導かれるように思う。すなわち、人材のタイプをいわゆる「体育会系(=指示・規範を重視するタイプ、チームプレーを好むタイプ)」と「文化系(=理屈を重視するタイプ、個人プレーを好むタイプ)」の2つに大きく分けた場合、前者は体育会系人材として、後者は文化系人材として成長しているのではないか、というものだ。そして日本社会のこれまでの経験も重ね合わせれば、体育会系人材として成長した者の方が、キャリアの順調な滑り出しを果たしているのではないかという予想をたてることもできよう。「上下関係を理解し、チームで動くことに長けている」ことは、就職において、いまなお高く評価されているからだ。

ところが、データを分析すると、現実はそれほど単純ではないことがみえてくる。卒業生調査では、自らのタイプを「体育会系」だと認識しているか、「文化系」だと認識しているか、上記括弧内と同じ註を添えつつ選んでもらった。その回答分布を示したものが、図1になる。開成卒と灘卒とのあいだに認識の差がないことが一目瞭然だろう。確認される差はわずか数%。統計的有意差も認められず、開成卒リーダーであろうと、灘卒リーダーであろうと、5割弱が体育会系であり、逆に5割強が文化系だという分布になっている。

図1 人材タイプの自己評価
図1 人材タイプの自己評価

そして、就職活動に関する状況を示したものが、図2になる。そもそも人材タイプに差がないということが判明した時点で、就職時における評価をめぐる仮説も崩れるわけだが、そのうえで一応の確認を試みれば、実態として両校のあいだに注目されるような差をみることはできなかった。リーダー全体の分布から読み取れる5%ほどの差も有意なものではなく、しかも企業勤務者に限定すれば、その差もほとんど解消されてしまう。開成卒リーダーであろうと、灘卒リーダーであろうと、企業勤務者の7割弱が苦労せずに第一志望に就職、1割強が苦労して第一志望に就職、2割が第一志望に就職できず、別の道を選んだという分布になっている。

図2 就職活動の状況
図2 就職活動の状況

差が出るのは「大学時代の勉強」と「キャリア中期の評価」
超進学校出身のリーダーともなると、校風からそれほど影響を受けないのか。そのように判断することもできる結果だが、「学校行事=体育会系、個性=文化系」といった発想が短絡にすぎただけなのかもしれない。そこで調査データを丁寧に読み直すと、開成卒と灘卒の相違点は、別の部分で確認されることが明らかになる。

そのひとつが、大学時代の勉強における差異だ(図3)。(1)専攻した分野の勉強に「意欲的だった」と回答した者の比率、(2)大学時代に専門書を「よく読んだ」と回答した者の比率、(3)学習の成果ともいえる大学時代の知識量に「自信があった」と回答した者の比率、という3つの観点から確認したものだが、結果からは、概して開成卒リーダーの方が真面目に専攻の学習に取り組んでいたことがわかるだろう。なお、この傾向は専攻分野別にみても変わらない。

図3 大学時代の学習状況
図3 大学時代の学習状況
2015年04月28日