2014年度研究プロジェクト

第2回 どれほどの開成・灘卒業生が「リーダー」になっているか

リーダーシップ論における「不動の二次元」
リーダーシップとは何であり、どのようにしたら身につけることができるのか。この問いをめぐっては、これまで多くの人が関心を寄せてきた。研究者も然り。経営学、社会心理学、社会学、政治学といった領域の研究者が、リーダーシップの本質を解き明かそうと、精力的に検討を積み重ねてきた。

その大きな成果のひとつに、「リーダーシップという複雑な現象は、課題関連行動と人間関連行動の二次元で捉えることができる」という知見がある。課題関連行動とは、仕事の枠組みを示して指示を出すことであり、人間関連行動とは、メンバーへの配慮を尽くすこと。「P(パフォーマンス)とM(メンテナンス)」(三隅二不二氏)と呼んだり、「タスク面と社会‐情緒面」(R.ベールズ氏)、あるいは「構造づくりと配慮」(R.スタッジル氏)と呼んだり、研究者によってネーミングは多様ではあるものの、二次元でリーダーシップを捉えようとし、両者に長けている者がもっとも効果的にリーダーシップを発揮していると考える点に関して、研究者たちの見解は共通している。

リーダーシップ論は現在も進化し続けている研究領域である。しかしながらこの領域の第一人者である金井壽宏氏によれば、最新の理論においてさえ、基盤に見え隠れするのは以上の二次元だという(金井壽宏『リーダーシップ入門』日経文庫,2005年)。たとえば、1980年代以降、リーダーシップ論の一潮流をなすようになった変革型リーダーシップ論では、ビジョンを描き、ネットワークを編み出すことがリーダーに必要だと説く。激変する社会経済を背景に、求められる要素も変化しているわけだが、たしかに課題関連行動と人間関連行動という二次元が揺らいでいるわけではない。課題関連行動と人間関連行動の両方に優れている者をひとまず「リーダー」と呼ぶことに、大きな問題はないだろう。

開成・灘卒業生のリーダー比率は4割
連載コラムの第2回目では、以上の議論を前提にしながら、「リーダー」として働く開成・灘卒業生がどれほどいるのか。どのような領域で働く者に集中してみられるのかといったことをみていくことにしたい。ただその前に、ひとつ解決しておかなければならない課題がある。二次元を測定する質問項目をどう設定するかという問題だ。

いうまでもなくリーダー行動の測定尺度についても、すでに多くの研究者が作成を試みている(有名なものとしては、オハイオ州立大学の研究者が開発したリーダー行動記述質問票LBDQなどが挙げられる)。今回の卒業生調査では、これら先行事例に学びながら、そしてなにより金井壽宏氏によるいまひとつの指摘を参照しながら、調査票の紙幅の都合もあって、次に示す簡易な質問項目を設定することにした。

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参照した金井氏の指摘というのは、リーダー育成の実践家である野田智義氏とともに強く訴える「リーダーシップとマネジメントは違う」という主張である(野田智義・金井壽宏『リーダーシップの旅―見えないものを見る』光文社新書,2007年)。権限で人を動かすマネジメントと、影響力の一形態としてのリーダーシップは異なる。上から下りてきた目標を与えられた手順で部下を使いながら達成するのが優れたマネージャー。見えないものを見て、変革への対処を目標に、ときには組織を壊してまでも突き進むのがリーダー。そしてリーダーの周りには、その一徹さゆえに、喜んでついてくる仲間や部下が出てくるという。

2015年03月03日