2014年度研究プロジェクト

国会議員の人間的質の低下
敗戦直後と現在との対比
野田一夫氏
― ところで、戦後日本において最も問題とすべき職業集団と言えば何でしょうか。

野田 何と言っても政治家、とくに国会議員でしょう。現在の日本の国会議員は衆・参両議員とも選挙権を持つ全国民の直接選挙によって選ばれた人々で、その数も衆院は500人弱、参院は約その半分で、戦前の大日本帝国時代の二院制時代に比すれば、何より議員数が圧倒的に多い。その上戦前の天皇親政の大日本帝国時代と違って、国会の議決により国政を左右する大小各種の法律の立法権を与えられているわけですから、戦前の国会議員とは比較にならぬほど重要な職責を担っているわけです。
ですから、国会議員こそ“選良”と言う言葉にふさわしく、年齢と性別にかかわりなく、
日本人の中で最も見識がありかつ人格高潔な人物であるべきです。ところで、どうでしょう? 現在、そういう判断基準で選挙民によって選出された国会議員は、何人いるでしょうか? そして、その数は民主選挙が始まった敗戦直後より増加しているでしょうか?

― 誰でも首を横に振るでしょう。職業の性格上、国会議員こそ全員が、それぞれ選挙区の人々にとって社会リーダーと呼ばれるにふさわしい人物であるべきですが・・・。政治家の人間的資質の低下は、どこの民主主義国にも共通した社会現象なのでしょうか。

野田 程度の差は国によって大きいはずですが、日本の国会議員の質的低下度合いが民主主義各国の中ではマシの方だとは、日本の成人の大部分は思っていないでしょうね。何しろ僕は個人事務所を赤坂に置いてからすでに半世紀、その間隣の永田町界隈の方々の情報は、良いにつけ悪いにつけ筒抜けに聞こえてきますからね(笑)。ともかく、デモクラシーの語源は古代ギリシャ語で「貴族ないし知識人の支配」を意味するaristokratiaに対し「人民の支配」を意味するdemokratiaで、最終的には衆愚政治と同義語と化したと言われていますから、本来的に「要注意の政治体制」だったということを忘れてはなりません。

しかし、古代ギリシャ滅亡後約2000年、18世紀末から19世紀にかけて、デモクラシーは力強く復活しました。アメリカ大陸の英国植民地の人民は本国との戦いを制して民主国家としての独立を宣言し、フランスでは「自由、平等、友愛」の目標を掲げた人民の団結力が絶対君主を打倒し、ともに近代デモクラシーが西欧諸国はもとより日本を含む世界の多くの国々の基本的政治形態となる先駆的役割を果たしたのです。
しかも、すでにその頃英国内に進行し始めていた産業革命は19世紀に入るや目覚しい成果を達成しつつ、相呼応して拡がった自由主義経済思想と一体化して、驚くほど短期間に北西ヨーロッパの諸国と新興国・米国を世界の経済先進地域に押し上げて行きました。しかし他方、20世紀の世界を再度にわたって震かんさせた大戦の震源地はともにヨーロッパでしたし、とくに第二次大戦後の敗北後のドイツがその文面においては史上最高と言われる民主憲法=ワイマール憲法を制定して国家再興を期しながら、あのナチスがその後合法的にドイツを徹底した全体主義国家に改変するのにはほぼ10年で事足りたという歴史的事実も、われわれ敗戦後の日本人は片時も忘れてはなりませんね。

2015年02月05日