2014年度研究プロジェクト

褒めて育てる
柳沢幸雄氏
― 日本には自主的に何かを見つけて取り組むという人材は育っていないように思われますが。

柳沢 少ないでしょうね。それは日本では子どもがそういうふうに育てられてないから。例えば、子どもが何か悪さをしたとする。親や先生は「これをやっちゃだめでしょう」と叱る。すると子どもはもう絶対にそれをやらなくなる。

でも親たちはそれをしてはいけないと命令するだけなので、子どもはそれはやらないけれど、次に何をやるべきかわからない。子どもは一生懸命考え、何か新しいことをやる。でもまた同じように怒られると、子どもは途方に暮れますよね。これを繰り返していくと最終的に怒られないための最善の方法は何もしないことだと学ぶ。こうやって指示・命令されたことしかできない人間が量産されるわけです。

こういう人間と反対の人間を育成するためには、これと反対のことをすればいい。つまり、怒るんじゃなくて褒めればいいわけです。その原点は「這えば立て、立てば歩めの親心」、あの至福の時です。動物界の中でも常時二足歩行が完璧にできるのは人間だけ。人間の赤ちゃんは生まれてからわずか2年で二足歩行ができるようになっちゃう。それは親が全面的に褒めるから。

実をいうと赤ちゃんの這い這いなんてあんな危ないことはない。部屋の中には口に入れちゃまずいものがたくさんあるし、何かに頭をぶつけたり、高いところから落ちたりといろいろなリスクがあるから。這い這いができるようになると今度はヨチヨチ歩き。これも危ないよね。特に公園や外を歩けるようになると、道路に飛び出しちゃうかもしれない。親は目が離せなくなっちゃう。

だけど親は「だめ」、とは絶対に言わない。なぜかというと、親には子どもが生まれたばかりの記憶がまだ明確に残っているから。それと比較してみると、子どもの成長を実感できる。最初は首もすわらなかったよね、それがだんだんこうやって動けるようになる、それは嬉しい。だから、子どもの過去と比較して成長をした点を無条件に褒めることができる。そうやって親が喜色満面でいるから、子どもはやっていいんだなと思う。だからあれだけ難しい二足歩行がみんなできるようになる。

子どもは親が笑顔になることを一生懸命する。なぜかというと、その時期は子どもは無能力者だから、親が命の保証をしてくれないと死んじゃうわけ。だから、親が喜ぶことは必ずやる。子どものどのような行動に対して親が喜ぶか、何を褒めるかによって、子どもは行動を決定すると同時に、価値観も学ぶ。親が望ましいと思っていることを、子どもができたときに喜んであげると、子どもは自然とそっちへ移動してくる。だから、褒めることが大事なんです。

2015年02月19日