2014年度研究プロジェクト

柳沢幸雄氏

柳沢幸雄氏 開成中学校・高等学校 校長

1871(明治4)年に創立された開成中学校・高等学校は東京大学入学者数33年連続トップの実績をもつ私学男子校御三家の筆頭格。知性・自由・質実剛健を重んじている同校では学校行事や部活動の運営もすべて生徒に任せるなど、生徒の自主性を育んでいる。その校長である柳沢幸雄氏は教育に関する書籍を多数上梓するなど、社会に向けての情報発信も積極的に行っている。社会リーダーに必要とされる資質や育成方法を語ってもらった。

リーダーとは、言葉によって人を動かすことができる人

― 我々は「社会リーダー」という言葉に「新たな社会価値を創造し、人々の未来を豊かにすることを、自らの使命と自覚している人」という意味を託しています。柳沢校長が考える「リーダー」とはどのような人物でしょうか。

柳沢 今おっしゃったその定義で一つ違和感があるんです。「自らの使命と自覚している人」、こんなに肩肘張らなくてもいいじゃないか、と。つまり自分が持っている力を社会の中でちゃんと生かしていく、ということだけでいいんじゃないかなと。もっともっと気楽にやってもいいのではないかという気がするんです。

私の定義でリーダーっていうのは何かといったら「言葉によって人を動かすことができる人」。どんな小さな集団であってもチームのメンバーに取り組むことの目的と目指すべきゴールを言葉で説明して、みんなが「それいいね、じゃあやろうよ」、というような状況になれば、それはもう明らかなリーダーであると。

この能力は日本社会においては非常に重要だと思うんです。日本の社会では古来より、「明確にものを言わない」ということが美徳とされているからです。いわゆる「腹芸」「以心伝心」「沈黙は金」というやつです。

大抵の日本人は会話するとき「相手はきっと自分の気持ちをわかってくれているんだろうな」という前提に立っているから、大事なことでも言いづらいことは明言したがりません。

確かに「みなまで言わなくてもわかってくれる」という世界はとても居心地がいいんですよ。わかり合える、強い絆で結ばれている、とても居心地のいい集団ですよね。ところが、この「美徳」が通用するのは世界70数億人の中の1億2000万人だけ、世界人口の中でわずか2%以下、つまり日本人の間だけなんです。

いや、もしかすると1億2000万人の中でも通用していないかもしれない。自分ひとりが通じていると思っているだけ、お互いわかっているような気になっているだけなのかもしれない。同じ日本人でも世代や社会的背景が違えば伝わっていないと考える方が自然だと思うな。

だからそこから脱却するためにも言葉でちゃんと人に説明できる、人を引っぱることができるということが重要なのだということを、私は日本の場合は特に強く言った方がいいと思う。言葉に出さないとわからない。

2015年02月19日