MENU
研究レポート

伝記を通じ偉人の若い頃を追体験させる
朝比奈一郎氏
― ある程度、年齢を重ねた後、感情量を増やすべく、教育を施すことは可能でしょうか。

朝比奈 可能だと思います。うちでもやっていますが、その方法の一つが伝記を読ませることです。

― どんな人の伝記でしょうか。

朝比奈 日本人が4名、日本人以外が3名です。日本人以外からいくと、まず西洋の代表的な政治家、ユリウス・カエサル、同じく東洋の孫文です。もう1人は同時代人であるアップルの創業者、スティーブ・ジョブズです。日本は幕末維新期の坂本龍馬と渋沢栄一、戦中戦後期の松下幸之助と盛田昭夫を選びました。

塾で講義する時には、それぞれが功成り名を遂げるまでを追うのではなく、まだ偉くない若い頃に光を当てます。たとえば渋沢栄一の場合ですと、500社以上の設立に関わった資本主義の父、という側面はあまり取り上げません。取り上げるのは革命家としての側面です。
彼は埼玉の豪農の家に生まれ、当時の世相だった尊王攘夷論に共鳴し、横浜の外国人居留地の焼き討ち計画を立て、あわや決行というところまで行くわけです。いま考えると愚かなことですが、当時の時代背景を解説しながら、彼がどんな思いでそこまで発想したかを当時の彼自身に感情移入させて追体験してもらう。私が一方的に話すのではなく、いくつかの決断の場面を取り出し、皆でそれに関する議論もしてもらいます。塾生には、この授業は予習は要らない、ここで学んだことを専ら復習してくれ、つまり今後の人生で生かしてくれ、と言っています。

― そうやって偉人の人生を疑似体験させることで、感情を育んでいるのですね。本ではなく、直接経験を積ませることも感情を豊かにさせるのに役立つのではないでしょうか。

朝比奈 もちろんです。被災地にボランティアで行ったり、貧しい国に行ったりして、今までとは違う現実を突きつけられることで、感情を刺激されることも大いにあるでしょう。われわれの講義の中で、ある事実に触れ、「そんなこと、今まで知りませんでした!」「あの仕組みはこうなっていたんだ!」という形で、突然、怒りが湧いて出る場合もあるでしょう。実際に塾生同士で決起し、NPO法人「地域から国を変える会」や一般社団法人「日本と世界をつなぐ会」などが生まれています。

2015年01月29日