2014年度研究プロジェクト

人物教育の希薄化がリーダー枯渇の一要因
朝比奈一郎氏
― 幅広い視野と行動力、両方を兼ね備えた社会リーダーは非常に少ないということですね。なお悪いことに、以前と比べて、そういう社会リーダーが世の中になかなか輩出されにくくなっているのではないか、というのがわれわれの問題意識です。その理由は何だと思いますか。

朝比奈 一つには人物教育が希薄になってきたからではないでしょうか。この塾をつくるにあたり、それこそ幕末の松下村塾から始まって、さまざまな塾なり教育機関なりのカリキュラムを調べてみたのですが、いずれも偉人の伝記をよく読ませていました。まさに人物教育です。そういう人の伝記を読むことで、自分もこういう人になりたいというロールモデルができるわけです。
もう一つ、時代の影響もあるでしょう。幕末維新や先の戦争直後はこのままでは国が亡びるという危機感が日本中にありましたから、それをどうにかしなければという志を持ったリーダーが数多く現れました。平時にはなかなか卓越したリーダーは現れにくいものです。
われわれの塾が立ち上がったのはちょうど東日本大震災の年、しかもその直後の4月でした。そんな非常時に人が集まるのか、不安もあったのですが、蓋をあけてみたら意外と応募が多く、しかもかなりユニークな人たちが集まりました。これも時代の影響でしょう。

― 社会や国を何とかしたいと思い、塾の門を叩く人がいる。でもそう思わない人もいる。その違いはどこから来ると思いますか。

朝比奈 志を抱いてうちに来る人間には二つのタイプがいます。一つは「こうしたほうが面白い」というワクワク感から行動する人で、天才型です。圧倒的に数が少ない。
もう一つは何らかの怒りがある人です。私憤、公憤といってもいい。それをバネにして行動する人のほうが多いと思います。怒りの中身は、貧困や家族環境といった自らの出生に対する苛立ち、もういい歳なのに、このままの人生を送っていいのかといった焦り、日本の国益が他国によって損なわれていることへの憂慮といった具合に、千差万別です。
いや、怒りというより、豊かな感情と言ったほうが正確かもしれません。それを持っている人は現状に満足せず、自分はこれを目指すべきではないか、世の中はこう変わるべきじゃないか、という問題意識を持つようになるのではないでしょうか。われわれも塾生を選抜する際、そうした感情の多寡を見ています。

2015年01月29日