2014年度研究プロジェクト

リーダー誕生の大きな素因になるのは自主性
和田孫博氏

- その自主性はまさに、社会リーダーが生まれる一つの重要なファクターになると考えています。

和田 人はバラバラに社会生活を営むものではないので、どのような組織、集団においても、必ずリーダーというものが生まれる。例えば、災害が起きた時にボランティアが集まれば、そこに官が関わったとしても、ボランティアのなかで自然とリーダーが出てくるわけです。任用ではなく、このように必要に応じて自然発生的に生まれるかたちが本来で、その時、大きな素因になるのが自主性です。
換言すれば「自由」ということにもなるのですが、私たちが非常に重んじている環境です。こちらから何かを意図して生徒を育てるのではなく、自主性を育むための時間的余裕、社会を疑似体験できるような場を与えることが大切なのです。そういう環境下にあると、それなりの能力がある人がちゃんとリーダーに就く。だからうちでは、クラブ活動においてもキャプテンの選出は生徒たち自身が考えてやっているし、生徒会からも毎年新しい企画が持ち込まれてくるのです。

- 自由な環境が、いわば苗床になっているのですね。それぞれの状況において「これをやろうじゃないか」と手を挙げる人材、つまり自然発生的リーダーが多く生まれることが大切になってきたと。

和田 冒頭でお話ししたように、組織に任命されたリーダーが、パフォーマンスを上げていくということがもう難しい時代ですから。まぁもともと、うちのような学校の出身者には、大企業や権力の中枢でリーダーシップをとっている人が少ないんですけどね。組織に収まらないケースが多い。得意分野での力や個性を発揮すれば取り上げてくれるという、わりに緩い組織でのほうが生き生きとしているようです。

自由な発想や個性を受け入れる環境づくりを和田孫博氏

- そういった人材に共通する資質、灘校のカラーというのは、どのようなものでしょう。

和田 自由な発想力はかなりあると思いますし、それを認める環境がある。授業で例を挙げると、数学のある問題を解く時に、先生が用意する解き方だけではつまらないと、違うやり方で解を求める生徒がいたりするんですよ。なかなか先生泣かせではあるのですが(笑)、面白いといえば面白い。本校では、そういうことが弾かれず、生徒たちは「うわー」と注目するし、先生も「ほお、なるほど」といった具合になるわけです。だから、管理教育をしていないから、そのぶん管理色が強い社会では収まりきらないのでしょう。そういう人材がリーダーになっていくのか、異端児になっていくのか、それはわかりませんが。

- でも、何か新しい力や感性が生まれてきそうです。

和田 私の同級生に中島らもさんがいたのですが、今思えば、彼の創作的才能はすごかったですよ。当時から、絶えずヘンな替え歌を作っていましたから。卒業してから多彩な才能を開花させて、小説を書き、演劇をやりと……リーダーと呼べるかどうかは別にして、自分で生きていく能力に長けていたことは確かです。当校の出身者には、こういう類の人材が少なくありません。

- あえて、そういう人材に社会リーダーになってほしいという前提に立つと、そこに必要なのは資質なのか、単にきっかけなのか、どう思われますか?

和田 やはり、早くからしたいことがある、興味を惹かれるものがあるということが一番大きいのではないでしょうか。途中挫折があっても、好きなことならば続けられるし、人に対しての説得力もある。「毎日大変やなぁ」と思うような職人仕事でも、少しでもいいものをつくろうとずっと頑張っている人は、その世界ではリーダーなんです。「あまり面白くない」と思っている間は向上心も出てこないでしょう。自分は何をしたいのか、何に向いているのかを早く見極めること。加えて、それを保護者や先生ではなく「自分で道を選んだ」と言えるようにしてあげることが、極めて重要だと思います。

2015年02月19日