2014年度研究プロジェクト

教育改革、ベンチャー支援はリーダー育成の両輪
北城恪太郎氏
- 著書の中でも「社会のニーズを教育現場がわかっていない」と書かれていますね。

北 日本の教育は、経済活動を軽視しているように思えてなりません。先生方のほとんどは企業勤めの経験がないので、会社で働くとは具体的にどういうことなのか、社会や経済活動がどう変化しているのか、実感を持って教えるのは難しい話です。私が教壇に立つようになったのは、教育現場にも経営者が参加する必要があると思ったからです。
一方で、受験偏重の価値観のなかで、子どもたちが自信を持てないでいること、これには大きな危機感を持っています。

- 具体的にはどういうことでしょう?

北城 日本青少年研究所などがまとめたデータのなかに、高校生の自尊感情に関する日米中韓4カ国の調査がありますが、「自分は優秀だと思うか」の問いに「そう思う」はわずか4%、「まあまあそう思う」と合わせても約15%と、日本の高校生の自尊心は極端に低い。アメリカのそれは9割近いのです。何もアメリカの生徒たちが特別優秀なわけではないから、いかに日本は、教育の現場で子どもたちに自信を与えられていないか、ということです。偏差値が高いことだけをもって「優秀」とするから、自信の尺度がほかに持てないのです。自信がなければ意欲も出ない。子どもたちにもっと多様な価値観を示して、褒めて育てる土壌を形成しなければいけません。

- 確かに、教育現場においても、そういう問題意識を持つ先生がいらっしゃいます。

北城 ご承知のように、一つの取り組みとして地域住民が運営に積極的に関わるコミュニティ・スクールがあります。今、全国に2000校弱あります。保護者や地域の人、多様な大人たちが教育の場に入るいい仕組みで、推進したほうがいいと思います。
さらにもっとオープンにして、経済人や文化人、スポーツ選手なんかも巻き込んで。銀行員が金融のことを話したり、あるいは製造業で働く人が商品開発について話したり、子どもたちにすればリアルで面白いじゃないですか。キャリア教育にもつながります。
様々な大人たちの姿から社会を知り、選択肢を得て、そこから何かに挑戦しようという気概が生まれれば、社会リーダーがもっと出てくるでしょう。だから、私にとってベンチャー企業支援や教育改革は、次代を担う人材育成において比肩するものなのです。あれもこれもと忙しくて仕方ないんですけど(笑)、それが私のライフワークだと思っているので。

プロフィール
北城恪太郎
経済同友会 終身幹事
日本アイ・ビー・エム株式会社 相談役

1944年生まれ。慶應義塾中学、高校卒。67年慶應義塾大学工学部卒業後、日本アイ・ビー・エム株式会社入社。72年カリフォルニア大学大学院(バークレー校)修士課程修了。93年代表取締役社長に就任。2012年より現職。07年より経済同友会終身幹事、10年より国際基督教大学理事長。

TEXT=内田丘子 PHOTO=刑部友康

2015年02月12日