2014年度研究プロジェクト

北城恪太郎氏

北城恪太郎氏
経済同友会 終身幹事 日本アイ・ビー・エム株式会社 相談役

日本アイ・ビー・エムを率いてきた名うての実業家・北城恪太郎氏は、長年にわたり、ベンチャー企業のサポートに尽力していることでも名が高い。2012年、同社会長職を退いてからは、「日本のイノベーションの担い手を育てる」「社会の変化、仕事の面白さを子どもたちに伝える」ことに全力を傾けると決め、日々精力的に活動している。次代を拓くリーダー育成に、今、大切なことは何か。ベンチャー支援と教育の改革現場にも立つ北城氏の言葉は、具体的で示唆に富む。

現状の日本社会は起業の受け皿が弱い

- 北城さんは、様々な場面で「新たな事業を生み出す起業家やベンチャー経営者が、日本にもっと出てこなければならない」とおっしゃっています。

北城 そもそも、企業は何のために存在するか。その話からすると、社会のため、人々の生活を豊かにするためです。より便利に、安心に、そして環境に配慮した企業活動を通じて社会に貢献する。それが本来の姿です。
その企業活動によって日本は成熟した社会になり、私たちは豊かな生活を送っているわけですが、これを維持していくためには、企業は常に挑戦し、新事業をつくり出さなければなりません。その際、大きな技術革新や新たな価値創造を一気に押し進められるのが、保守的ではないベンチャー企業です。加えて、そこには“働く場所”が生まれる。私は、職場をつくることは極めて重要だと考えているので、それもあり、ずっとベンチャー企業を応援しているのです。

- 日本のビジネス環境は「ベンチャーが育ちにくい」と言われてきましたが、現況はどうでしょう。一方で、社会の課題に気づき、自ら解決しようと立ち上がる社会起業家も出てきていますが。

北城 課題先進国ですからね。企業活動だけでは行き届かない問題が山積しています。貧困連鎖や、社会的弱者への思いやりなど、本来行政が取り組むべき問題でしょうが、この厳しい財政下では、もはや行政だけに依存できない状況です。そういう問題に焦点を当て、例えばNPOのように、事業として解決に臨む動きが出てきていることも尊いことです。ベンチャーにしてもNPOにしても、挑戦するという意味においては同じで、皆素晴らしい。ただ問題は、創業やスタートアップ期のリスクが高いということ。つまり、現状の日本社会は起業を支援する仕組みが弱いのが実態です。

「エンジェル税制」のような支援策を拡充すべき
北城恪太郎氏
- 創業、つまり挑戦するにあたってのハードルをもっと下げるべきだと。

北城 そうです。端的にはお金の問題。志はあってもお金がなければ、創業の際に資金集めをしなければなりませんが、銀行は実績のないところには融資しないし、あるいは担保を求める。もし失敗すれば、家や土地を失うかもしれない。若い人たちは、ある程度豊かな生活をしてきたわけだから、自分や家族の暮らしを投げ打ってでも創業に挑戦するような人はなかなか出てきません。
ですから、資金調達を支援する仕組みを整える必要があると思います。その代表的なものとして、実は、創業やスタートアップ期に力になる「エンジェル税制」という制度があるのですが、残念ながらあまり知られていません。

- 経済産業省の主導で創設された制度ですよね。

北城 ええ。創業間もないベンチャー企業に対して、個人投資家(エンジェル)が資本金を拠出すると、出したお金は寄付金と同様に扱われ、課税所得から差し引けるという優遇税制です。所得税の最高税率は約40%ですから、例えば100 万円投資すると、所得の高い人なら約40万円税金が安くなる。素晴らしい税制です。2008年の大幅な制度拡充にあたっては、私も経産省を応援し、エンジェル投資が上向きにはなったものの、まだ全然認知が足りていません。実際、経営者に聞いてみても、知らない人がほとんどですから。
NPO法人でも特に公益性の高いものなら、同様にお金を出した個人に対する税額控除や所得控除があります。こういう制度が広く社会に認知され、さらに適用基準ももっと緩く拡大していけば、様々な事業活動が持続可能になるはずです。私は声を大にしながら、あちこちでPRして歩いているんですよ(笑)。

2015年02月12日