ジョブ・アサインメントモデルの全貌(3) 達成支援

ステージC 達成支援
本コラムでは、前回に引き続きジョブ・アサインメントモデルの詳細について解説していく。図1のように、ジョブ・アサインメントモデルは「目標設定」「職務分担」「達成支援」「仕上げ・検証」の4つのステージからなる。第2回のコラムではステージAの目標設定を、第3回はステージBの職務分担を解説した。職務分担のステージを終えると、マネジャーから部下に職務が任されており、部下によって担当する職務が開始されている状態になる。今回解説する第3のステージ「達成支援」の内容は、この、部下による職務遂行が始まってからのマネジャーの行動に関するものである。

図1) ジョブ・アサインメントモデル~ステージC 達成支援~

第3のステージ、達成支援とは、「職務の進捗を管理して、目標達成を支援する」ことである。初回のコラムで触れたとおり、ジョブ・アサインメントは、狭義には、どの部下にどの職務を割り当てるか、という意味であるが、本研究においては、それだけをもってジョブ・アサインメントとはしていない。いかにうまく部下に職務を割り当てても、それでジョブ・アサインメントが完了するわけではない。部下を信頼して職務の遂行を任せつつも、部下それぞれの職務の進捗状況を把握し、必要に応じて適切な支援活動を行い、想定するゴールに確実に到達できることを支援するのが、ステージCの目的である。ここで、主体的に職務を進捗するのはあくまで部下であり、マネジャーは部下の職務が完遂されることを支援する存在であることを意識してほしい。

達成支援のステージは、2つのステップからなる。職務が計画通りに進捗しているか情報収集を行い、良い状態を維持するという「モニタリング」のステップと、部下や職務が望まない状態であるときは、介入して本来あるべき状態に回復させる「介入」のステップだ。さらに、それぞれのステップにおける重要なポイントを4つずつ抽出している。

ここから先は、2つのステップとそのポイントについて詳しく見ていこう。

 

ステップ5 モニタリング
達成支援のステージの、第1のステップが「モニタリング」である。モニタリングの定義と、このステップにおける重要なポイントについては図2を参照していただきたい。部下が高い意欲で職務に取り組んでおり、それぞれの職務が計画通りに進捗されている状態を保つことがこのステップの目的である。

図2) ジョブ・アサインメントモデル~ステップ5 モニタリング~

部下に職務を任せた後は、職務の進捗状況については感知せず放置状態になってはいないだろうか。あるいは、部下の職務の進め方の一挙手一投足にまで口出しするようなマイクロマネジメントを行ってはいないだろうか。
放置状態になってしまっては、部下に適切なアドバイスもできず、トラブルやミスを未然に防ぐことも困難になる。また、過度のマイクロマネジメントは、部下の意欲をたちまちのうちに削いでしまうだろう。
このような状況に陥らずに、良い状態をキープするためには日々の職務のモニタリングが不可欠と言える。それでは、モニタリングのステップでポイントになる、「進捗把握」「見守り」「リアルタイムフィードバック」「課題の予見」の4つを順に見ていこう。

ポイント1 進捗把握:様々な方法を通じて、進捗状況を把握する
最初のポイントは「進捗把握」である。これはモニタリングの基礎となるポイントで、いくつかの方法を通じて部下に任せた職務の進捗状況を把握することを示している。
部下が職務を順調に進めていくためには、マネジャーが適切なタイミングで最適な支援を実施する必要がある。いつ、どのような支援をするべきかを見極めるためにも、マネジャーはそれぞれの職務の進捗状況や、部下の健康面や精神面などの状態を正確にとらえておく必要がある。
職務の進捗状況を把握するための方法は、部下の特徴や、職場の環境によって変えていくべきである。例えば、普段から積極的に職務の報告や相談をしてくる部下なら、それらのコミュニケーションを通じて職務の状況を把握すればよい。一方で、マネジャーへのホウレンソウが不得意であったり、頻繁なコミュニケーションを取りづらい条件下にある部下に対しては、ある程度マネジャーが主導する形で状況を確認するための時間を意識的に作っていく必要があるだろう。このように、部下の特徴に応じて進捗把握の方法は変わってくる。
あわせて、職場環境に応じて、進捗把握の方法を複数持っておくことが望ましい。近年は、オフィスのフリーアドレス化やテレワークが推進され、部下の仕事の様子が物理的には見えないことも珍しくなくなりつつある。このような場合には、チャットツールなどのテクノロジーを利用して頻繁に気兼ねなくコミュニケーションを取ることや、部下同士のチャットのやりとりを観察することなどを通じて状況を把握するのもひとつの方法だ。

ポイント2 見守り:原則として、口出しせずに見守る
2つ目のポイントは「見守り」である。モニタリングの段階において、マネジャーに求められる基本的なスタンスは、大幅な進捗の遅れや方向のずれが生じない限りは、部下の職務の進め方に対して口出ししないことだ。進捗把握を真面目にやると、スケジュールの遅れや些細なミスが目につき、どうしても口を出したくなるものだ。しかし、部下の立場からすれば、職務を任せられたにもかかわらずいちいち上司が干渉してきては、意欲が減退してしまうことは自明であるし、上司の行動に矛盾を感じてしまうだろう。一度職務を任せるという意思決定をしたからには、基本的な姿勢として、部下を信じて見守ることが重要である。
見守りをうまく実行するのは忍耐を要するが、これはマネジャー自身の成長のためにも欠かせない。見守りができるようになれば、マネジャーは自身の業務に集中することができるようになる。マネジャーがマネジャーとしてやるべきことに集中することで、自分自身のレベルを上げていくことが可能になるだろう。

ポイント3 リアルタイムフィードバック:リアルタイムでのポジティブなフィードバックにより、部下の高い意欲を継続させる
3つ目のポイントは「リアルタイムフィードバック」である。これは、部下の職務の進捗が順調であるときや評価できるような行動をしたときに、「その場で」褒める、ねぎらう、などのポジティブなフィードバックを行うことで、部下の意欲を向上させるものである。部下からすれば、自分の行動が褒められれば当然自信につながるものだし、上司は自分の仕事振りをちゃんと見てくれていると感じるだろう。リアルタイムフィードバックを行うことは、決して部下を放置しているわけではなく、心を配っているという部下へ向けたメッセージでもある。

ポイント4 課題の予見:職務の進捗状況や部下の状態から、起こりうる問題を想定しておく
4つ目のポイントは「課題の予見」である。ある時点で部下の職務の進捗状況に問題がないとしても、その後に直面する可能性がある課題がないかどうかを予想しておくことをいう。すでに解説したように、原則としてマネジャーは部下の行動を見守ることに終始すべきだが、問題の発生を未然に防ぐことや問題が起きたときの対応までしなくていいということでは、もちろんない。いざ問題が発生してから対応策を検討するのでは、被害が大きくなることもありうるし、また、最終的に職務が完遂されない恐れも発生する。進捗把握や見守りを実施するなかで、起こりうる問題の芽を早期に発見することが重要である。
この後、「介入」のステップを解説するが、課題の予見を実施していれば、介入のステップの各ポイントをよりスムーズに実行することが可能になる。

 

ステップ6 介入
達成支援のステージにおいて、モニタリングの次のステップが「介入」である。理想的には、モニタリングのステップで解説した各ポイントの実行を通じて、「介入」することなく職務が完遂し、部下が成長することが望ましいわけだが、ビジネスにおいてアクシデントや事故はつきものである。部下の状態や、職務の進捗がかんばしくない状態になった場合は、マネジャーによる「介入」によって本来あるべき状態への回復を急ぐ必要がある。このステップの定義と重要なポイントは図3にまとめたとおりである。

図3) ジョブ・アサインメントモデル~ステップ6 介入~

介入のステップにおいてポイントとなる「軌道修正」「側面支援」「育成的支援」「引き取り」の4つについて、その内容を順に解説する。繰り返しになるが、これら4つはすべて職務の進捗状況や部下が望まない状態である場合に実行していくポイントだ。ジョブ・アサインメントモデルの他のステップで紹介したポイントと違い、必ずしも常に実施するものではない点、さらに、モニタリングのステップで紹介したそれぞれのポイントを実行していることが前提である点に留意してほしい。

ポイント1 軌道修正:部下の行動の方向性が本来の道筋から逸れている場合は、軌道を修正する
第1のポイントは、「軌道修正」である。部下の職務の進捗状況が、明らかに期待する道筋から逸脱している場合は、軌道を修正する。軌道修正で重要となるのは、実施するタイミングだ。見守りの原則にのっとって、状況を観察しつつも、このままの方向性で進んでしまっては後々の修正に労力がかかりすぎてしまうと判断したタイミングで実施しなければならない。
軌道修正の実施にあたっては、一方的にならず部下の立場を考慮し、部下の納得感を確認することを心がける必要がある。部下がその職務に主体的に取り組んでいることが前提だが、部下なりに検討した方法や考えを認めつつ軌道修正の方向性や方法を提案することが重要である。モニタリングのステップで解説した進捗把握と見守りを踏まえたうえで丁寧なコミュニケーションで軌道修正を行えば、部下の意欲が減退するようなことにはならないが、ここで部下の努力や労力を否定するようなやり方をしてしまうと、部下との信頼関係には深刻な傷が残ることにもなりうる。

ポイント2 側面支援:部下が課題に直面しているときは、原因を突き止めて、それを取り除くための支援をする
第2のポイントは「側面支援」である。職務の進捗の方向性は問題ないのだが、壁にぶつかって前進できないような状況になっている場合、原因を明らかにして壁を突破できるようにサポートすることを意味する。特に、部下にそれまで経験したことがない職務を任せている場合は、どこかで壁にぶつかる可能性は高くなる。もちろん、経験がないなかでも部下自身に試行錯誤させることも重要だが、あまりに時間がかかってしまう場合、部下がまったく打開策を見いだせず困っている場合などには、部下には見えていない原因やより効率的な方法を助言していくことが求められる。

ポイント3 育成的支援:ひとり立ちしていない部下が困難に陥った場合は、引き続き職務を任せつつも、自身や先輩を使ったサポートをする
第3のポイントは、「育成的支援」である。これは前述の側面支援とも重なる部分があるが、特に職務経験が浅い部下へのサポートを想定している。若手や他の部署から異動してきたばかりの部下は、当然ながら経験不足のため職務を進めるなかで壁にぶつかることも多い。このような状況になることを所与のものとして計画に組み込んでおき、マネジャー自身や経験豊富な先輩が支援をとり行うことも、あらかじめ想定しておきたい。
育成的支援では、職務の遂行中にマネジャーや先輩の支援を借りたとしても、部下が任された職務を最後までやり遂げる経験を積むことを重視すべきである。また、育成的支援を行うにあたっては、事前に自身の時間を確保することや、先輩社員に課題が発生した場合には協力してもらうよう打診しておくことが大切だ。

ポイント4 引き取り:部下だけでは解決が難しい深刻なトラブルが起きた場合には、マネジャーが責任を持って問題を解決する
最後のポイントが「引き取り」である。部下自身では解決が難しい困難や深刻なトラブルに直面した場合は、マネジャーがすみやかに前面に出て対処することも必要になる。引き取りは、あくまでモニタリングのステップで紹介した各ポイントや軌道修正・側面支援を行ったうえでの最後のポイントであることに注意してほしい。ちょっとしたことでも「やはり任せられない」と職務を取り上げてしまっていては部下の意欲の減退や成長の鈍化は避けられない。また、マネジャー自身の業務レベルの向上を考えた場合にも、「自分が引き取って解決する」という方法に安易に頼ることは望ましくない。また、引き取りばかりしていると、マネジャー自身の業務量が過大になるという点も見過ごすべきではない。

 

以上がジョブ・アサインメントモデルの第3ステージである達成支援の内容である。モニタリングと介入のステップにより、部下の状態や職務の進捗状況を把握し、状況に応じて適切な支援活動を行い、期間中に、チームとしての目標達成行動が滞りなく推進する状態を、常に保つことが可能になる。

さて、ジョブ・アサインメントモデルの解説もいよいよ最後のステージを残すのみとなった。職務の最終段階や、職務の完了後には何を行うべきだろうか。
次回のコラムでは、ジョブ・アサインメントの最後のステージである「仕上げ・検証」について解説する。

2018年01月30日