「働き始めたその後」の支援が重要だ

前回(第2回)のコラムでは、女性が再び働きたいと思い始める就業希望期から、実際に再就業する就業期までの移行ポイントで生じる問題を掘り下げた。さまざまな不安から女性の就業希望が不安定であることや、求職活動後に就業意欲を失うことにより、なかなか就業期に移行しないことを示した。

今回のコラムでは、おもに再就業後の「就業期」に着目し、そこでどのような問題が生じているのか見ていく。具体的には、図表1に示した第2、第3の移行ポイントに注目する。

図表1 ブランクからのキャリア再開発に問題が生じる3つの移行ポイント

 

第1の移行ポイント:働きたいと思いながら仕事に就いていない「就業希望期」から、実際に働き始める「就業期」への移行
第2の移行ポイント:就業期から、本当にやりたい仕事でのキャリア形成への移行
第3の移行ポイント:就業希望期から、直接、本当にやりたい仕事でのキャリア形成への移行

 

「生き生き」も「成長実感」もない再就業者が約半数

就業期に入った女性が直面する問題の1つが、今の仕事に不満を抱えながら、次の仕事を試すなどの行動をとれない「停滞」だ。
仕事への満足/不満足を測る指標にはさまざまなものがあるが、ここでは、再就業をした女性の仕事満足を、(1) 現在の仕事に関わる満足としての「生き生きと働くことができていた」と、(2)将来の仕事に関わる満足としての「仕事を通じて『成長している』という実感を持っていた」の二軸で考えてみたい。再就業者にとって、生き生きと働けるかどうかは、現在の仕事に満足感を持てるかどうかと深い関係を持つと考えられる。一方、子どもが大きくなったらより本格的に働きたいと希望する女性が多いことを踏まえれば、将来に向けて、仕事を通じた成長を実感できることも大きな意味を持つと考えられる。

しかし、この2つの面で満足感を得ながら働いている再就業者は少ない。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」を用いて、3年以上の離職期間を経て再就業したばかりの女性(新規再就業者)のその後の状況を見てみよう(図表2)。ちなみにここでは、配偶者と子供のいる社会人経験のある女性で、再就業してから12カ月以内の女性を対象としている。

新規再就業者のうち、生き生きと働くことが出来ていた(以下、生き生き働く)、仕事を通じた成長を実感していた(以下、成長実感)の双方にあてはまる人は4人に1人(26%)であった。一方、生き生き働く、成長実感のいずれかのみに該当する人はそれぞれ約1割(ともに12%)であった(※1) 。これに対し、生き生き働く、成長実感のいずれにもあてはまらない人は約半数(50%)に上った。

図表2 生き生き働く×成長実感で見た新規再就業者の分布

 

(注)2015年12月時点で現職の前に3年以上の離職期間があり、再就業後12カ月以内の49歳以下の既卒女性が対象。「生き生きと働くことができていた」という問いに対し、「あてはまる」または「どちらかというとあてはまる」と回答した人を「生き生き働く」ありとし、「どちらともいえない」「どちらかというとあてはまらない」「あてはまらない」と回答した人を「生き生き働く」なしと整理した。また、「仕事を通じて『成長している』という実感を持っていた」という設問に対し、「あてはまる」または「どちらかというとあてはまる」と回答した人を「成長実感」ありとし、「どちらともいえない」「どちらかというとあてはまらない」「あてはまらない」と回答した人を「成長実感」なしと整理した。

(出所)リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」

 

不満を抱えながら今の仕事に止まる人が多い

女性が再就業をする場合、特に最初は、正社員などの企業の長期的なメンバーではなく、特定の職務を遂行することを前提に企業と雇用契約を結んで働くパート、アルバイト、派遣社員などの雇用形態であることが多い。このことは、仕事に対する不満や他にやってみたい仕事を意識した時に、組織のしがらみ少なく、転職などを通じて次の仕事を試しやすいという強みでもある。実際、新規再就業者のうち生き生き働く、成長実感のいずれにもあてはまらない人の約4割は2年後までに1回以上転職していた(※2)。
その一方で、生き生き働く、成長実感のいずれにもあてはまらない女性のうち、約6割は2年後も現職にとどまっていた。再就業後の期間が長くなるとその後に転職しなくなる傾向があるため(※3) 、最初の2年で転職しなかった女性の多くは、その後も今の職場に止まりやすいと言える。

 

再就業後に働く意欲を失うという問題

就業期の2つ目の問題は、再就業した後に、働く意欲を失う人がいることだ。2015年12月時点で新規再就業者だった人の1年後の状況を確認すると、離職し、就業希望を失っている人が6%いた。離職期間のある女性が就業希望を持ってから実際に仕事に就くまでに様々なハードルがあることは、前回のコラムで述べた通りである(「キャリア再開発の問題は「3つの移行ポイント」で生じている」)。しかし再就業さえすれば後は安定的に働き続けるというほど状況は単純ではなく、働くことそのものを諦めてしまう人が一定数存在している。

就業希望をなくしているのは、どのような人なのだろうか。図表3は、「生き生きと働くことができていた」「仕事を通じて『成長している』という実感を持っていた」という設問への回答別に、翌年の就業意欲喪失者の割合を示したものだ。これによると、「生き生きと働くことができていた」への回答結果によるはっきりとした差は確認できない。その半面、「仕事を通じて『成長している』という実感を持っていた」への回答では、成長を実感できないほど就業意欲喪失者の割合が高い傾向がみられた。
再就業者の場合、ブランクがあることで自分は労働市場で評価されないといった不安を持つことが多い。再就業後の仕事で成長を実感できない場合には、この先やりがいのある仕事に就く展望が持てず、働く希望を失いやすくなっている可能性がある。

 

図表3 「生き生き働く」「成長実感」への回答別に見た1年後(2016年12月)の就業意欲喪失者の割合

 

(注)2015年12月時点で現職の前に3年以上の離職期間があり、再就業後12カ月以内の49歳以下の既卒女性が対象。「あてはまる」は「あてはまる」または「どちらかというとあてはまる」の合計。「あてはまらない」は「どちらかというとあてはまらない」「あてはまらない」の合計。

(出所)リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」

3つ目は、やりたい仕事を見出しても、その仕事に就くことが簡単ではないというものだ。長期のブランクを経て再就業する人の中には、再就業後にいくつか仕事を試すなかで、本当にやりたい仕事を見出している人がいる(※4)。ただし、やりたい(=今はやっていない)仕事だからこそ、知識や経験が足りない場合が大多数であり、その仕事に就くことは簡単ではない。
実際に、当事者へのインタビューでは、本当にやりたい仕事を見出した女性の場合、学位や国家資格を取得する、やったことのない仕事や苦手意識のある仕事に挑戦する、転職するなどのステップを刻むケースが多かった。またその際には、それまでの慣れた職場を離れたり、知識や経験を積んできた仕事という枠を自ら外したり、学びに必要な時間や費用を捻出するという投資を行うケースも少なくなかった。
しかし、これらの挑戦や投資は望ましい結果をもたらすとは限らない。そのため、現実にはなかなか具体的な行動を取れない人や、半ば諦めてしまうケースがあると考えられる。

 

見通しの持てなさが、自律的なキャリア再開発の難度を上げている

なぜ、生き生きと働けず成長実感がない仕事で停滞したり、再就業後に就業希望を失ったりするのか。背景には、再就業者にとってキャリアのガイドとなるものが極めて少ないという事情がある。

例えば、仕事経験がまったくない新入社員について考えてみよう。この場合、組織主導で徐々に仕事の範囲が広げられたり、難易度が上がったりするなかで、出来ることが増えていく。さらに上司によるフィードバックを通じて軌道修正が行われたり、仕事への関わり方を学んだりする機会も多い。その後も、異動などを通じて、良くも悪くも組織主導でキャリアが形成されていく。

前述したように、再就業者が最初に就く仕事は、特定の職務を遂行することを前提としたパート・アルバイト等の仕事であることが多い。そのため、仕事の範囲が自動的に広がることは想定しづらく、上司のフィードバックも現在の職務の範囲内に収まることが多いと想定される。そのため、自分で次のステップを決めていく必要があるが、ロールモデルは見つかりにくい(※5) 。つまり、仕組みとしても、参考にできるロールモデルとしても、再就業者のキャリアを支えるものが、社会にほとんど存在しないのである。その結果、仕事を探索する行動が取り難く、不満を持ちながら今の職場に停滞したり、先々のキャリアの展望が持てずに就業希望を失ったりしていると考えられる。

 

最初から本当にやりたい仕事を目指すことは、近道か

このように再就業後に問題が生じやすく、本当にやりたい仕事にたどり着きにくいのであれば、再就業の前の段階で本当にやりたい仕事を探し、その仕事に就くことを目指す第3のルートを選択すべきなのだろうか。
結論から先に述べるなら、第3のルートは遠回りとなるリスクがある。近年の多くのキャリア理論が指摘するように、不確実性が高まる現代の労働市場では、社会的なニーズのある仕事も、仕事に求められる個人の能力も急速に変化する。そのため、やりたいことをあらかじめ決めて、それに向かって計画的にキャリアを形成するモデルは現実にフィットしなくなっている。実際、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」より、2015年12月時点で3年以上の離職期間があり、就業希望があるにも関わらず求職活動を行わない女性にその理由を複数回答で尋ねた結果をみると、約2割(17%)が「やりたい仕事が分からない」ことを挙げている (※6)。

とりわけ、長期の離職期間を経て再就業する場合は、頭で描く希望と現実のギャップが大きくなりやすい。仕事を通じて適性を確認したり、その適性がどの仕事で活かせるのかを見出したりといった、現実の仕事とのすり合わせを行っていないので、事務職などの仕事内容をイメージしやすい職種に限定して仕事を探す結果、採用されにくかったり、就職に役立つと想定した資格の取得に時間を費やしたりといった問題も生じやすい。このように、最初から本当にやりたい仕事を目指す第3の移行ポイントにも、キャリアの再開発を妨げる問題が存在している。

 

再就業後の停滞やドロップアウトを防ぐ支援も必要だ

第2回のコラムでは、女性のキャリア再開発支援は、いかに再就業へのハードルを低くするのか、それと同時に、いかに自分で働く未来を切り拓いていける感覚を持てるようにするのか、という2つの課題を克服するものでなければならないこと、そのための大きな方向として、「再就業まで」を支える施策を見直し、再就業後の期間を(1)「試行期」と(2)「キャリア実現期」に分けて考えることを提唱した。
ただし、今回のコラムで見たように、女性が「再就業した後」にも多くの問題があり、試行期があれば、再就業後の問題が解決されるとは言えない。試行期の女性が停滞したりドロップアウトしたりしないためのサポートも必要である。

それでは試行期の歩みはどのように支えたらよいのか。次回のコラムでは、キャリアを再開発している女性の経験などに触れながら、そのヒントを探りたい。

図表4 離職期間のある女性への復職支援

 

(※1)以下、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」を用いた数字はすべて、ウェイトバック済みの値である。
(※2)新規再就業者のうち「生き生き働く」なし×「成長実感」なしの人の2年後の転職率は43%、それ以外の転職率は37%であった。
(※3)2015年12月の時点で勤続年数が2年を超えている再就業者で、「生き生き働く」なし×「成長実感」なしの人のその後の状況を見ると、2年後の転職率は19%であった。
(※4)リクルートワークス研究所の研究プロジェクト「ブランクからのキャリア再開発」で行っているインタビューでは、当初は1日数時間の仕事から始め、現在は自分が本当にやりたい仕事に就いている、そうした仕事を見出している人が少なくない。ここでの記述は、インタビュー調査に基づいている。ただし、再就業をする女性全体のデータを概観すれば、その段階にある女性は多くないと推察される。
(※5)近年、長期のブランクを経て、企業の管理部門や広報部門などで働く女性の事例がメディアなどで取り上げられる傾向もみられる。ただし、現時点では大企業の総合職経験者などの女性の事例が中心である。
(※6)49歳までの配偶者と子どもがいる、離職期間が3年以上の女性で2015年12月時点に就業希望があるが、過去1年間にまったく求職活動を行っていない女性。ただし、サンプルが52と少ないために、ここで示した割合は注意して見る必要がある。

2018年12月07日