research「テクノロジーで人事はどう変わるか?」~grooves 池見幸浩氏(前編)~

「テクノロジーで人事はどう変わるか?」~grooves 池見幸浩氏(前編)~

テクノロジーやデータによって、私たちの働き方は、そして人事はどのように変わっていくのでしょうか。この領域の第一人者であるgrooves代表取締役 池見幸浩氏に聞きました。前編は、テクノロジーやデータがもたらす「働き方の変化」についてです。

テクノロジーは、より人間らしく働くためにある


-10年後を見通したとき、テクノロジーの進歩によって、働き方はどう変わりますか?

2029年には人工知能が一人の人間の能力を超えるといわれています。そうなると、一般的にいわれているのは、全ての仕事が細分化され、ロボットがやることを人間がやるのか、ロボットがやるのかという時代になったときに、どうしても、人間が1つの歯車にならざるを得ないマーケットになるという言説があります。しかし、私は、そうではない、より人間らしく前向きな世界になるのではないかと思っています。むしろそういう世界を創ることが、人事部門や人材サービス業界の責任であるし、テクノロジーの本来の価値ではないかと。

テクノロジーが進歩することによって、AIやロボットに任せられる仕事は増えるでしょう。そうなれば、人の自由な時間はより増えて、一層クリエイティブな業務に集中できるようになったり、自己研鑚に割くことができる時間が増えたりします。その結果、人材のパフォーマンスはさらに高まるのではないでしょうか。

テクノロジーと人は競争するのではなく、「共創」する


-人とテクノロジー、データとの関係はどうなっていくのでしょうか?

人工知能やデータ解析技術というものは、人間の能力を拡張することを支援するためのものになるでしょう。ある種、人間の一部になるのではないかと。人工知能というより、拡張知能という表現の方がしっくりくるかもしれません。テクノロジーと人間とが共にクリエイティブに新しいものを創っていく世界になるのではないかと考えています。

一部の仕事では、もちろんテクノロジーV.S.人間という構図になる部分はあるでしょう。しかし、多くの仕事においては、人とテクノロジーの共創を前提とした業務設計がなされていくはずです。人間の能力を最大化するために、人工知能が機能する、そんな職場になるのだと思います。ある種、とても人間に寄り添った業務設計、ワークスタイルが実現する社会になるといえるでしょう。

Face to Faceのコミュニケーションが、働く上でより重要になる


-働く人同士の関係は変わっていくのでしょうか?

様々なデータの分析・活用が進むことによって、社会のいろいろな側面で、マッチングの精度が上がってくるはずです。「働く」という観点でいうと、人と仕事のマッチング、人と人のマッチングはより高精度に自動化されるようになるでしょう。加えて、テクノロジーの進歩によって、今まで以上に距離的・時間的な制約から解放されるはずです。そうなると、みんながもっとフレキシブルに働ける社会になると思います。

ただし、そうなるからこそ、逆に「対面」がより重んじられる時代になってくるのではないでしょうか。リモートワークは確かに効率のいい働き方ですし、今、人気も高まっています。しかしながら、リモートワークだけでは、所属している会社が目指す未来であるとか、ビジョンだとかを能動的に理解して、働くモチベーションが高まらないこともあるのではと感じています。経営者と直に接して薫陶を受けるとか、「心」をすごく大切にする文化が企業に生まれてくるのではないでしょうか。

人事はテクノロジーに精通することが求められる


-働き方が変化すると、人事パーソンに求められるスキルは、どう変わるのでしょうか?

人事という職業が、最もITやロボティクスに精通している人のみが対応できる非常にハイレベルな職業にならざるを得ないと考えています。今後、企業においてAIやロボットの活用が進むと、人材を採用するのと同じように、どのAI、どのロボットを採用するがいいのかを、人事が判断しなければいけない局面も出てくるでしょう。こういった役割を果たすためには、ロボットのスペックであるとか、セキュリティ対応等について、社内のだれよりも精通している必要がある。いずれ、エンジニア出身の人事パーソンが生まれたり、人事パーソンがIT、ロボティクスに精通したりというようになってくるのではないでしょうか。

テクノロジーと人事が融合していくという点でいうと、もう一つ考えていることがあります。それは人事に特化したエンジニアが生まれてくるということです。たとえばGoogleなどでは、人事部門の中にエンジニアがいて、そのエンジニアが人事業務の改善をしたり、従業員を顧客と捉えて、ユーザーインタビューや顧客満足度調査を行い、その結果に基づいて社内ツールを改善したりしています。人事に限らず、今後は管理部門において、エンジニアが活躍する分野は増えてくるでしょう。そうなると、私はアドミニストレーション・エンジニアと呼んでいるのですが、管理部門に特化したエンジニアいう職域が拓けてくるかもしれません。

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