地元に溶け込むためにシェアハウスに入居し、まったく関係のない集まりにも顔を出し続けた

―いちばんのやりがいはどういうところですか。

地元の事業者のなかには東京に売る販路を持っていない方も多くて、そういう販路を持つことは「夢のまた夢」みたいな人が、ネットを通じて東京に売れたりするとやっぱりうれしいです。感謝の言葉をダイレクトにもらえますし、たとえば、「カキ持ってってよ」とか、「お米持っていきな」ということも結構あって、そういうこともうれしいですよね。

―今の仕事で難しいと思うのはどういうところですか。

やっぱりよそ者なので、なかなか受け入れてもらえない場合もあります。販売の補助の案内に行っても、「東京から来た」というだけで、相手にしてもらえなかったこともありました。 特に石巻はボランティアが延べ140万人も出たり入ったりしていて、それに慣れている人もいれば、そういうのに疲れてしまっている人もいます。そういう難しさは現実にあります。

―新しく仕事の進め方や知識などで学んだことはありますか。

根回しの大切さでしょうか。石巻の人たちは知り合い同士の確率が高いんです。だから、ネットワークがある程度見えてくると、この仕事だったらまずこの人のところに行かなきゃというようなことがわかってきました。恐らくこれは、規模の小さな市区町村に行くほど当てはまることだと思います。これは東京にいたときはない感覚でした。ある程度時間をかけて見ないと見えてこないものなので、そこが最初は難しかったです。慣れるまでに1年ぐらいは必要ではないかと思います。

―これまでの経験で活きていることはありますか。

東京の人脈は活用しています。それを活用していくのが1つミッションだと思うので、たとえば販路開拓にしても、関東の友人を通じて飲食店を紹介してもらったり、あとは、石巻のものの販売会を東京でやったりします。

私を通じて石巻の現状を見てもらうきっかけにもなるので、私自身が石巻と東京を行ったり来たりすることも必要で、それ自体が価値だとも思っています。

転職された当初に工夫したことがあれば教えてください。

地元にいかに溶け込めるか、自分自身が根を張れるかというのがポイントだと思い、私はシェアハウスに入りました。もともと、知り合いはいましたが、きちんと地に足が着いた関係を築かなければと考えて、それだったらシェアハウスに入居して、そこからネットワークを広げていこうと思いました。私は石巻に来てから結婚したのですが、彼女ともそこで知り合いました。

移住前から石巻の人に、「まずは地に足を着けて、きちんと関係をつくってからいろいろやれ、いきなり来てぽんと派手なことをすると絶対受け入れられない」と言われていました。だから、それを肝に銘じながら、最初の半年間は、少しずつ顔を売っていくことを地道にやりました。石巻には、今もNPOや活動団体が多くいるので、夜にそういう人たちが集まる情報交換の場にも片っ端から行きました。まったく自分の関係ない、たとえば福祉や敎育、ウェブ関係の集まりにも顔を出しました。そのおかげでかなり顔は広がって、そこから自然と自分の仕事に結び付いたりしています。

Iターンをした満足度はいかがですか。

満足度は本当に高いですね。来てよかったなと思っていますし、東京にいた頃には感じられなかったような満足感があります。根底には自分のやりたいことが今できているというのがあります。生活面に関しても、仲のよい人が増えて、よくしてくれる人もたくさんできました。たとえば、いきなり、隣のおばちゃんの家に電話して「今日ご飯ないから行っていい?」と言うと、「ああ、いいよ」と刺し身を出してくれて、酒を出してくれて、みたいな関係ができています。よく自己実現と移住をリンクさせるというような話を聞きますが、自己実現は私のなかではできています。


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