まず、過去のやり方を徹底的に勉強した。
最初から「民間では」と言ったら絶対受け入れられない


―新しい職場に適応できた要因は何だと思いますか。

転職した職場がたまたま理解のある人が多かったからだと思います。当時の同僚や上司の係長も、民間企業の経験者の受け入れが始まったばっかりで、何を言うかわからないエイリアンみたいなやつが来たと思っていたと思います。でも、いろいろ気を遣って、スムーズになじむように受け入れてもらって、そこは感謝の気持ちでいっぱいです。そこで全然合わなかったら、もしかしたら辞めていたかもしれません。最初はすごく緊張していたので、「ラッキーだったな。ありがたかったな」と思います。

―転職された当初に悩まれたことがあったら教えてください。

道庁と民間の仕事の進め方の違いはとても意識しました。「民間では」とか「民間、民間」とあまり言うと、絶対に受け入れてもらえないと思いました。だから、民間のいいところを活かしつつ、道庁のいいところを勉強して、そのバランスをどう自分のなかで取っていくかを考えました。

ですから、どんなことでも、自分が担当している仕事の過去のやり方を徹底的に勉強したうえで、そこから提案していかないと、事情も知らずに、「このやり方は効率が悪いです」とか、「民間企業ではこれは非常識です」と最初から言ったら、受け入れられなかったでしょう。一方で、転職してきたときに、「新卒採用と変わらないね」と言われると、経験者枠をつくってもらった意味がなくなるので、自分の中でそのバランスは意識しました。悩んだわけではないですが、意識しなければいけないと思いました。

―転職直後はどのような仕事を経験するのがよいと考えますか。

最初に、これまでの仕事で身についた自分の強みを伸ばすことがいいのか、これまでの仕事では経験のない部分である自分の弱みをボトムアップしていくのがいいのか、意見が分かれるところですよね。たとえば、道庁らしい仕事、厳格なルールがある補助金を審査して支払う内部管理の仕事とか、まったく経験したことのない、自分にとっての弱みの部分と、転職前にやっていたスキル、強みを活かす仕事があると思います。

私の場合は、自動車と食品の違いはありましたが、マーケティングという軸でスキルアップする機会をもらい、強みを先に伸ばしてもらったと思っています。
私は、そのあと釧路に異動して、内部管理の仕事をさせてもらったのですが、その仕事もやってよかったと実感しています。そうしないと、バランスの取れたスキルが身につきません。
私は、最初は、それまでの経験に近い仕事で、役に立っていると感じられましたが、この分野ばかりでは駄目だというのも見えてきて、経験のない仕事も勉強しなければという気持ちになれたので、この順番でよかったと思います。

―現在、仕事をするうえでいちばん意識していることは何ですか。

お客様のところに行くことです。前職で、市場調査のグループインタビューなどを経験させていただいたことが、今、役に立っています。

前職では、お客様にニーズ調査で訪問したいとお願いしても、断られることもありましたが、公務員の立場になると、事業のニーズ調査で「聞きに行きたい」と依頼して断られることはほとんどありません。それはすごくありがたいことです。現場との接点をつくりやすいというのが、われわれの仕事の大きな特徴だと思うので、そこを活かしていくことが大事だと思っています。お客様が言っていることは説得力があるから、現場に出る機会をつくることは何よりも大事なんだと、ここ10年ぐらいずっと意識しています。

Iターンをした満足度はいかがですか。

私自身はよかったですね。後悔はまったくしてないです。
仕事の面では、新しい仕事を道庁でいろいろやらせていただいたということと、北海道に来て結婚もして、家庭の基盤も築くことができました。

プライベートでやりたいと思うことは、北海道旅行をしたいですね。大阪の人が大阪を観光しないように、北海道の人も、道内観光はあまりしなくて、家族も道外に出たがります。私は「道東にキャンプに行きたい」と思うのですが、子どもは東京に行きたいみたいで。でも、外に目を向けることはいいことなので、自分がそうしたように、子どもたちもそういうふうになっていくのかなと思っています。

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