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英国 Vol.01イクバア・イクジイにも育休を? 保育費高騰で、祖父母にしわ寄せ

英国では、孫の世話を担う祖父母が増加している。働きながら、孫育てをする祖父母――イクバア・イクジイ――も多く、働く祖父母にフレンドリーな施策を求める声が挙がっている。

孫育てをする祖父母が増加

英国では孫の育児を担う祖父母(イクバア・イクジイ)が増加している。グランドペアレンツ・プラス、セーブ・ザ・チルドレン等の共同調査(2014年)によれば、孫の育児を理由に、勤務時間を短縮したり、有給休暇を取得したり、ひいては仕事を辞めた経験のある祖父母は190万人に上る。とはいえその内訳は、祖父が45万人、祖母が145万人で、孫の面倒を見るために都合をつけるのは圧倒的に「おばあちゃんの役目」のようだ。

祖父母のサポートの上に成り立つ、仕事と育児の両立

なぜ、孫の世話をするイクバア・イクジイが増加しているのだろうか。

英国では、女性の就業者数が増加しており、その数は2014年1~3月期には過去最高の1410万人に達し、就業率は前年同期比1%上昇の67.7%となった。にもかかわらず、子どもを持つ母親が働き続けるために必要な保育園やベビーシッターなどにかかる保育費は近年大幅に値上がりしている。平均世帯収入に占める保育費は26.6%で、OECD加盟国ではスイスに次いで高い。このため、育児支援を祖父母に頼らざるをえない親が増えている。実際、孫の育児をサポートする祖父母(働いていない者を含む)の4割(約230万人)は、子どもが仕事を続けるために孫の面倒を見ているといい、子どもが保育費を支払う余裕がないために代わりに育児をしているという祖父母は2割近く(100万人)に上る。

小売り業のコットン・トレーダーズが2014年5月に発表した調査によると、就学児童のおよそ5人に1人が「夏休みをおじいちゃん・おばあちゃんと過ごす」と答えている。これらの子どもたちが祖父母と過ごしたのは、6週間の夏休みのうち平均1.5週間だという。また、休暇旅行に出かける親の3割が、子どもの世話を手伝ってもらうために、「おじいちゃん・おばあちゃんと一緒に旅行する」と答えている。

祖父母による支援は時間と労力だけにとどまらない。祖父母の3割近くが孫のために年間500ポンド(約9万円)以上援助しており、年間1000ポンド以上援助する者も1割を超える。英国の“おじいちゃん・おばあちゃん銀行”の2013年の支出は総額80億ポンド(約1.4兆円)に達した。

働きながら、育児に介護? クラブサンドイッチ世代の背負うもの

英国では高齢者の就業率もここ10数年で大きく上昇している。50~64歳の就業率は62.0%から67.4%に、65歳以上の就業率は4.9%から9.5%に上昇した(いずれも2001年と2013年の比較)。この背景には、生活費の上昇や年金受給開始年齢の引き上げがある。英国の年金受給開始年齢は長年、男性65歳、女性60歳であったのが、女性は2010年から引き上げが始まり、2018年までに65歳になる。また、男女とも2030年代半ばまでに68歳に、2040年代後半には69歳に引き上げられる見込みである(実際は、受給開始年齢の引き上げの時期は度々繰り上げられている)。

現在、孫のいる高齢労働者の就業率は3割程度だが、このような事情から、今後は働き続ける祖父母が増えると考えられる。

また、祖父母世代には、自身の親が存命であり、親・子ども・孫の世話をする「クラブサンドイッチ世代」と呼ばれる者も少なくない。この世代はともすれば、働きながら、孫の育児も自身の親の介護も背負う可能性もある。

働く祖父母にフレンドリーな施策を求める声も

こうしたことから、働く祖父母にも育児関連の権利を適用すべきとの声が挙がっている。

前述のグランドペアレンツ・プラス、セーブ・ザ・チルドレン等の共同調査によると、孫の育児をサポートする祖父母の64%が「病気の孫の世話を理由とする育児休暇を取得する権利」に、56%が「孫の育児を理由とする育児休暇を取得する権利」に賛同している。

時短勤務や在宅勤務等の柔軟な働き方については、英国では2014年6月に、「柔軟な働き方を申請する権利」がほぼすべての被用者(在籍期間が26週間以上の者)に適用されるようになった。それまで、同権利は子を持つ親と介護者のみに限定されていたが、祖父母であっても、孫の育児等を理由に柔軟な働き方を申請することが法的に認められるようになった。

だが、育児休暇をはじめとする育児関連施策の取得対象となるのは、親の責任を有する従業員だけだ(ちなみにドイツでは、孫の病気を理由に従業員が休暇を取得しても有給扱いとされる)。現在の英国の育児休暇(“Parental Leave”。直訳すると「親休暇」)は、子ども1人につき、子どもが5歳(障害手当を受給する子どもの場合は18歳)になるまでの間に無給の18週間の休暇を付与するものだが、対象はおおむね子どもの親に限定される。イクバア・イクジイの社会的・経済的貢献が多大であることを踏まえると、育児関連施策の対象者の範囲をより柔軟に設定してもよいのではなかろうか。働く祖父母にフレンドリーな施策は母親の就業促進にもつながるだろう。

 

グローバルセンター 長岡久美子